任期100日の米下院議員選挙が注目される理由

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  • 同じ候補者が3ヶ月後に再び対決へ
  • 保守系地元紙が民主党候補者を支持する理由
  • 好調な経済と雇用がトランプの失策をカバー 

同じ候補者が3か月後に再び対決へ

8月7日(火)に投開票されるアメリカ連邦議会下院の特別選挙が全米の注目を集めている。
現職が任期満了を待たずに辞職してしまったため、特別選挙で選出された議員の任期は来年1月3日までの超短期間だ。にもかかわらず注目される理由は;
・選挙区がオハイオ州の州都コロンバスの郊外(オハイオ州第12区)であること。オハイオ州で共和党が勝つことはトランプ大統領の再選にとっても重要
・11月の中間選挙前の最後の国政選挙で、共和党と民主党のどちらに勢いがあるかを確認できる
・選挙情勢はどちらとも言えない『接戦』になっている
・特別選挙と同じ候補者が3ヶ月後に中間選挙で再対決する。本選挙が2回なのに対し予備選は1回しかやらないためだ。
などが挙げられる。

共和党候補者トロイ・バルダーソン氏のHPより

オハイオ州は、「この州を落としたら大統領にはなれない」と言われる米大統領選の重要州だ。トランプ氏は2016年の大統領選でオハイオ州などの『忘れられた』白人労働者層を味方につけ当選を果たした。2020年の再選を目指す選挙でもオハイオ州で勝つことは至上命題となる。その意味でトランプ大統領はオハイオ州で共和党の勝利を目指す。



共和党候補者のトロイ・バルダーソン氏について、トランプ大統領は7月21日にツイッターで全面的支持を表明した。バルダーソン氏もトランプ人気を当てにしてのことだろうがトランプ支持を掲げている。
が、党内での本来の立ち位置は“穏健派”と目され、同じく穏健派のオハイオ州知事でトランプ大嫌いのケーシック氏からの支持も受けている。一方で党内右派からは「軟弱で信用できない」と反発もある。トランプ大統領との距離感を巡る共和党の事情は単純ではないのだ。

保守系地元紙が民主党候補者を支持する理由

民主党候補ダニー・オコナー氏のHPより

アメリカでは新聞が特定候補者の支持表明をすることは珍しくないが、州都コロンバスの保守系有力紙『コロンバス・ディスパッチ』は、共和党候補ではなく民主党のダニー・オコナー候補の支持に踏み切った。その理由は、「トランプ支持者に投票することは推奨できない」からだという。

オハイオ州第12区という選挙区は、もともと共和党候補者が勝つために線引きされた選挙区で、過去35年間、共和党穏健派の議員を選出し続けてきた。正に共和党が勝って当たり前の選挙区なのだが、州の平均より高学歴・高所得の有権者が多く、穏健志向が認められる。だからだろう、2008年の大統領選ではオバマ氏がこの選挙区で勝っているし、トランプ支持も“ためらいがち”なものと見られている。

共和党候補トロイ・バルダーソンの応援演説をするマイク・ペンスアメリカ副大統領

そんな選挙区事情も関係してか、選挙情勢分析はこのところ『僅差で共和党』から『接戦』に変更された。ゴールが目に入ってきた時点で競り合っているだけに、民主党は「これはイケるかも」と判断し、追加の選挙活動資金や人員を投入。SNSやテレビ用のCMを増やし、戸別訪問も拡大している。一方の共和党は7月30日、ペンス副大統領が現地入りし、共和党候補者と肩を並べて支持を訴えた。共和党系の政治団体による応援活動もヒートアップし、議席を死守する構えだ。

好調な経済と雇用がトランプの失策をカバー

それもこれも、オハイオ州第12区の選挙結果が、3ヶ月後に迫ってきた中間選挙の情勢に大きく響いてくるからだ。
一時は全米が民主党のシンボル・カラーの“ブルー・ウェーブ”に飲み込まれるのではと言われていた民主党の勢いは本当のところどうなのか。特に、トランプ大統領が連邦最高裁の判事候補として保守派を指名したことを受け、民主党は絶対負けられないという危機感を強めている。8月7日の特別選挙で勝てば、11月もイケる!とますます勢いづくことになる。そうでなくても、もともと共和党の選挙区で追い詰めることができれば上出来だ。

共和党にとっては、トランプ・ファクターは選挙にプラスなのかマイナスなのかを見極める機会となる。大統領の支持率43%近辺は決して低い数字ではないし、トランプ減税が好調な経済を支えていることも明らかだ。反移民などナショナリスティックな政策が一部で根強く支持されているのも否定できない。
一方で、高関税の賦課による国内産業への悪影響、同盟国との深まる軋轢、対ロシア外交の不評などマイナス面も少なくない。これから財政赤字の急拡大~金利上昇の問題も強く意識されるようになるだろう。

一言で言ってしまえば、トランプ流のマイナス面はいろいろあるが、好調な経済と雇用によって有権者が容認しているのが実情だ。11月の中間選挙はまだ大丈夫かもしれないが、2020年の大統領選挙までに状況がどう変わっているかは誰にも分からない。
取りあえずは8月7日に民主党支持者がどれだけ投票所にやってくるかがポイントだ。特別選挙の投票率は中間選挙(40%程度)より低めなのが通例なので、動員に勝る側が勝利を収めることになる。
民主党の「反トランプ」パワーが問われている。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)