昆虫不足が原因!?頻発するクマの出現と猛暑の意外な関係

カテゴリ:国内

  • 秋田県の“住宅街”でクマが頻繁に目撃される
  • 近年の異常気象で山の環境に変化、動物の生態系に異変が起きている
  • 紅葉の見頃がクリスマス前後に?

秋田県秋田市。
報道プライムサンデー取材班は、秋田市の職員と一緒にある場所に向かっていた。

山道を歩き続けると、やがてその場所へとたどり着いた。
木々が生い茂る中、そこにあったのはリンゴが中に置かれた鉄のカゴ。これは「クマを捕獲するための仕掛け」だ。

去年5月、秋田県の仙北市で撮影された映像では、仕掛けられたカゴの中でクマが暴れている。胸にある白い模様が印象的なツキノワグマだ。

実は最近、クマの目撃情報が相次いでいるため山の中に仕掛けを置いてクマを捕獲しているのだ。
しかし、クマの目撃情報は秋田だけでない。日本各地でここ数年急増している。
群馬、広島、滋賀、北海道、去年は東京・青梅市でも民家にクマが侵入し食料をあさるなど各地で相次いでいる。

中でも秋田は「クマの目撃情報」が今年7月時点ですでに146件と突出していて、警戒が続いているのだ。
しかし、驚いたのは「目撃されるその数」だけではない。目撃される“場所”もだ。

クマが“住宅街”に出現する

クマの目撃場所として役所の担当者が指さした場所はいずれも住宅街だった。その一つに向かってみると、そこは秋田駅からわずか2.5キロ。

目撃情報のあった街の住民は「山に接したところに家がある。そこに現れた」と、クマが住宅街の間近まで迫った様子を語っていた。

郊外の住宅街でよく見かける裏山や森…こうした場所での目撃情報が多いという。

去年8月、同じく秋田県内で撮影された映像でも、夜間クマが民家横の小屋に侵入しようとしている様子が記録されている。

こうした事態を防ぐために秋田市役所では今年4月から鳥獣被害対策実施隊を設置、対策に力をいれている。市役所を取材している最中にも電話が鳴り、スタッフが聞くと、担当者は「クマが出たと、畑にクマが出た」と、急ぎ現場に向かう。

市役所から車で20分の場所にある民家の横の畑に、クマが現れたというのだ。現場には地元の猟友会のメンバーと市の担当者も到着していた。畑はクマに荒らされ、あちこちにその爪痕が残されていた。

猟友会のメンバーは「トウモロコシ食った跡。きれいに食べるんですよね。人間よりうまいよ」とクマの習性を教えてくれた。

この辺りは裏手が山となってはいるものの、民家が数軒立ち並ぶ、人の気配も多いエリアだ。

住人は「昔はめったにここまでは来なかったけど最近になってからもの凄い頻繁になった。自分の家から20メートルのところに出ると駆除は仕方ない。共生は理想だけど無理」と頭を悩ませる。

しかし、なぜ頻繁にクマが人の住む場所に顔を出すようになったのだろうか?そこで秋田市の中でもクマが多く生息している事で知られる山間の集落に向かった。

「人とクマの境界線がなくなった」

秋田市の上新城・小又地区。このエリアに住む人々は山中に山菜を摘みに行ったり、猟を行うなど、クマと長く密接に関わってきた。そんな人たちもクマの変化を敏感に感じていた。

住民は「人とクマの境界線が無くなったな」と話す。

以前は、クマが山の中から出てくることはなかったというが、最近では当たり前のように家の周辺や畑に現れるという。クマの行動範囲に明らかな異変が起きていた。

取材を続けていると「クマが住む山に詳しい」という住民の男性に出会った。その男性は「熊っこなんてしょっちょう会ってるよ。1日に3回会ったこともある」と話すと、私たちをクマの住む山の中に案内してくれた。
林道を進むこと20分。するとクマが住宅街に現れる理由を示す場所があった。

「クルミの実が生っていない」

「ほれ、クルミの木あるべ。でもまったくクルミが生ってない、これが本当に実がない。クマがエサがとれないってこと、だからエサを求めて山の下に降りてくる」と話す男性。

本来ならこの時期にたくさん生っているはずのクルミの実が温暖化による異常気象のせいか生っていなかった。クマのエサとなるはずのクルミの実不足。
猛暑、そして大雨、異例のルートを進む台風…今年、日本列島を襲った異常気象。生態系の専門家は近年の異常気象で山の環境に変化、動物の生態系に異変が起きていることが、クマが住宅地に出現する一つの原因だと語る。

日本熊森協会相談役の主原憲司氏も「温暖化で昆虫が減っているんです。ツキノワグマは昆虫を食べる。そのためクマが下に降りていると考えられます」と分析する。

人の生活圏を脅かすクマの出現の背景にあった温暖化。日本列島を襲う異常気象がこうした形でも人の生活を脅かしていた。

紅葉の見ごろがクリスマス前後に?異常気象に人間も対応が必要

こうした気候の変動は動物だけの問題ではない。私たち人間にも重くのしかかってきている。

寺川奈津美 気象予報士:
7月31日火曜からの一週間、西日本から関東を中心にまた暑くなります。35度前後の猛暑日が続く可能性があります。気象庁は高温に関する異常天候早期警戒情報を発表して、注意を呼び掛けています。湿度も高く、熱中症に注意が必要です。
日本の平均気温はこの100年で1.19度上がっていて、東京は100年で平均気温が3度ほど上昇しています。日本の四季もこのままいけばガラッと変わってしまうかも知れません。
数十年後には桜が咲く時期は早まり、梅雨は短いですが豪雨となって、夏は酷暑、40度が当たり前で長くなり、紅葉も遅れてクリスマス前後に見ごろとなるかも知れないという予測が出ています。

佐々木恭子:
この夏の猛暑で熱中症になる方が過去最高になるなど、異常気象による問題が出てきています。

左:鴨下一郎 元環境大臣 右:寺川奈津美 気象予報士

立川志らく:
学校のエアコン、小学校とか、東京は100%の設置率なのに千葉は0%とか、県によってバラバラという話を聞きました。昔と違うからすべて100%にするように動かないと。
高校野球なんかも“甲子園ありき”だけれども美学を守りすぎるのではなくナイターにするとかドームでやるとか、美学にすがっている場合じゃないような気がしますけどね

鴨下一郎 元環境大臣:
気候が極端化していますから、この状況を我々は受け止めなくちゃいけない。従来やれてきたことがこれからできなくなってくるということを見直してライフスタイルを変えていかなくちゃいけない。

左:立川志らく 右:牛山素行 教授

牛山素行 静岡大学防災総合センター教授:
自然というのは厳しく恐ろしいということを私たちは思い出したほうがいい。
自然災害に対する認識自体は、皆さん意識が高いんですけど、洪水が起きる可能性がある地域で調査をすると意外にも危険意識が低い。我々は過去のことを忘れてしまうんで、大げさな言い方ですけど気候変動の速度よりも人がものを忘れていく速度の方がはるかに速いと思うんですよ。



温暖化・異常気象に伴う予想外の災害。
もはや“当然起こるもの”として、私たちも備えておかなければいけない時代となっている。

(「報道プライムサンデー」7月29日放送分)

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