医学部入学だけじゃ医者になれない! 「医師国家試験」に落ちて迷走する学生も!!

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  • 毎年10%は医師になれない
  • 多浪すると、ますます受からない…
  • 10年後を睨み、コントロールされる合格者数

医師になるための絶対条件

私立大学支援事業を巡る汚職事件で、文科省元幹部らが起訴されました。
エリート官僚が危ない橋を渡ってまで手を出してしまった、息子の東京医大への「裏口入学」。
通常なら考えられないような事件ですが、その背景には、近年の加熱する医学部人気があるかもしれません。
少子高齢化時代にも安定した職業と思われるのか、「東大より医学部」志向が増加。私立大学医学部の競争率は20倍~50倍(!)も当たり前の状況で、偏差値も軒並み上昇しています。

しかし、忘れてならないのは、医学部に入学しただけでは、あるいは医学部を卒業しただけでは、医師にはなれないということ。
医学生が医師になるためには、「医師国家試験」に合格しなければなりません。
今年は1万10人が受験し、9024人が合格。合格率は90.1%でした。
高い合格率ではありますが、約10%の受験生が、医師としてスタートを切ることが出来なかったことになります。
「医学部に合格できたのに、国家試験も通らないの?」と思われるかもしれません。
しかし、「医師国家試験」は、合格率が高いとはいえ、それほど甘い試験ではありません。多くの医学生が、2年間かけて大量の勉強をしなければ合格できない試験なのです。

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東大生も合格率100%ではない

合格率がもっとも高いのは自治医科大学で99.2%。ついで横浜市立大学医学部97.7%、兵庫医科大学97.5%という結果でした。
入学時の偏差値が最も高い東大医学部は、90.0%。なんと、全国平均を下回っています。
毎年そうなのですが、大学の偏差値と、医師国家試験の合格率は必ずしも相関する訳ではありません。

その理由の1つは、特に私立医大では「医師国家試験」の合格率を引き上げるために、合格見込みの低そうな医学生は留年させて、国家試験を受験させないのです。
その結果、合格率が上がるという側面があります。
医学部の1学年の定員は100人程度ですが、中には20人前後を留年させる大学もあるようです。
大学にとっては、「医師国家試験」の合格率は大学の評価に直接関わることであり、また一定の合格率を維持できなければ、文部科学省からの補助金が削除されてしまうという現実もあります。

試験は超ハードな2日間!

では、実際の試験はどのように行われるのでしょうか。
毎年2月に行われる「医師国家試験」は、2日間にわたって実施されます。(昨年度までは3日間)
試験時間も長く、1日あたり7時間前後、試験が行われます。
出題数は400問。記述問題がなく全て選択問題ですが、量が非常に多く、精神的にも、体力的にも、大変にハードな試験になっています。
出題は、大きく分けて「臨床問題」と「一般問題」に分けることができ,それぞれの一部が「必修問題」として出題されるかたちです。
近年は、最新のガイドラインの内容が出題されたり、研修医レベルの臨床的な問題が出たりと、高度化しています。
必修問題は、「8割正解しないと不合格」という厳しい絶対基準が定められています。

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多浪の末、全く別の人生を歩むことも…

「医師国家試験」は、多くは新卒時に合格しますが、浪人も少なからず存在します。2浪、3浪を越えて、5浪以上してしまう学生もいます。
「医師国家試験」は何度落ちても受験できますが、一般的に多浪すると合格率は下がっていきます。
そんな「医師国家試験」浪人のための予備校もあります。
授業料は年間200万円超と安くはありませんが、『多浪よりは予備校』ということなのでしょう。
国家試験に合格しなければ、医学部を卒業しても医師にはなれません。イチから職業を選択しなければなりません。
実際、医師になるのをあきらめて、経営コンサルタントや、プロ家庭教師になった方もいます。

合格者数は10年後を睨んでコントロールされる

医学生の人生をも左右してしまう「医師国家試験」ですが、実は試験を主管する厚生労働省によって、合格者数は緻密にコントロールされています。
厚労省は、10年後に必要となる医師の数から逆算して、合格者数を算出していると思われます。
なぜ10年後なのでしょうか。
厚労省は、医師が一人前に働けるまでに約10年かかると考えているのです。
医師は、2年の研修医期間を皮切りに、臨床経験を積みつつ、各専門医資格等の取得が求められます。そうした過程を経て、医師として一人前に働けて、後輩の指導も出来るようになる・・・そのプロセスが約10年ということです。
ですから、「医師国家試験」の合格者数・合格率は毎年変動します。
結果的に、「医師国家試験」に全員が合格することはなく、毎年10%前後が不合格となってしまう訳です。

医学生の中には、入学後に「やっぱり自分には合ってない」とか「ハード過ぎる」とかで挫折するケースもあります。
それでは「国家試験」云々以前の問題です。
医学部を目指すなら、まずはしっかりとした目的意識を持つことが肝要でしょう。

松和会大泉学園クリニック
院長 草場 岳(医学博士)

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