W杯2度制覇!フランスに学ぶ“強さ”の秘密

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  • W杯サッカー、20年ぶり2度目の優勝を果たしたフランスの強さには「理由」があった。
  • 豊富な資金力、国内リーグの活性化、フランス独自のプレースタイル・・・
  • 期待の新星“エムバペ”を生み出した背景にあるシステム

豊富な資金力で国内リーグを活性化

2018年ワールドカップロシア大会でフランスが優勝した。
20年ぶり、2回目の快挙だ。
その翌日には、パリのシャンゼリゼ通りでパレードが行われ、数十万人の国民が集まった。

パリ シャンゼリゼ 優勝パレード

フランスを勝利に導いたのは何だったのか。その勝因に焦点を当てたいと思う。
近年、フランスサッカーは世界の注目を浴びている。
その理由の一つが、国内リーグの活性化だ。去年、パリを本拠地とするパリ・サンジェルマン(PSG)が、2億2200万ユーロで、ブラジル出身のネイマール選手を獲得する一方、フランスリーグ出身の若手有望株、デンベレ選手がバルセロナへ電撃移籍するなど、フランスサッカー界は大いに盛り上がった。

テレビの放送権料も、2020年から2024年にかけて、異例の54%アップとなる11億ユーロで決まった。これは、イタリアやスペインリーグに並ぶ額だ。

放送権料がアップした結果、フランスのプロサッカーリーグ協会からクラブチームに配られる額は、年間4億5000万ユーロにものぼる。
こうした資金は、選手の獲得や育成などに使われることになる。
育成してきた選手を国内に留めることが最大の課題で、その手段としての資金力は欠かせないのである。

「支配」にこだわらない“独自”のプレースタイル

優勝を果たしたフランス代表チームは、前回のヨーロッパ大会でも準優勝するなど、当初から今大会の優勝候補と言われていた。

実は、フランスは、他の優勝候補とは異なるプレースタイルに挑んでいる。
これまでサッカー界で鍵となっていたのは、「ボール支配」だった。「ボール支配」とは、相手にボールを奪われないようにすることだ。

「ボール支配」が主流だった’98年フランス大会

前大会の優勝国ドイツは、平均で1試合あたり726のパスを確保。
これに比べて、フランスは405だった。予選突破後の平均では336と、ドイツの半分にも満たなかった。

ところが、今大会で何が起きたか。

ボールを支配するチームが、ことごとく敗退していったのだ。
各チームは戦術で対応し、「ボール支配」は通用しなくなった。
“戦術”とは、例えば、フランスチームが自分の陣地内で相手からボールを奪い、エムバペ選手のように、“足が速い”選手にパスを回して一気に攻め込む…いわゆる「カウンター」である。

こうした戦術において、「ボール支配」はもはや問題ではない。

決勝戦では、「ボール支配」においてはフランスを上回っていたクロアチアが負けた。 

98年のワールドカップで初優勝をしたフランスのキャプテンで、現在の代表監督ディディエ・デシャンは、イタリアで長年プレーをしていた。
この時に習得した、守りながら攻めるイタリアの名戦術「カテナチオ」(ゴールに鍵をかける、の意味)の文化を、フランスサッカーに取り入れた。
デシャン監督のサッカーが、今大会で花開いたのだ。

’98年大会で主将、ディディエ・デシャン監督

戦術に加えて、フランス代表には世界レベルの選手が勢ぞろいしている。
チャンピオンズリーグで優勝したレアルマドリードのセンターバックを務めるバラン選手や、去年イギリスのプレミアムリーグMVPを獲得したカンテ選手など、豪華なメンツがそろった。決勝では、国外リーグでプレーをしている選手は11人中10人。注目すべきは、唯一国内リーグ出身で選ばれたパリ・サン・ジェルマンのフォワード、キリアン・エムバペ選手だ。この選手はフランスの選手育成を象徴している選手だと考える。

キリアン エムバペ選手(左)

“屈辱”から学んだ選手育成計画

今大会の最優秀ユースに選ばれたキリアン・エムバペ。彼はカメルーン人の父と、アルジェリア人の母を持つ移民の第二世代である。
フランスは戦後、国の発展のために多くの移民を労働力として受け入れてきた。その第二世代が今、フランスサッカーを背負うスーパースターになろうとは誰が想像しただろうか?

戦後の1960年から1974年にかけて、フランス代表チームは、ワールドカップ4大会中、3度出場を逃した。屈辱的大敗をきっかけに、フランスサッカーは改革を始めた。サッカー国立養成所を設立し、選手の発掘と育成のためフランス全土にネットワークを広げた。

88年には、パリ近郊のクレールフォンテーヌに施設を移した。この養成所は、90年代には、世界一の養成所とも言われていた。

その成果は、98年の仏ワールドカップで現れ、フランスは初優勝を飾った。

その当時、フランスは黒人、白人 、アラブ人(フランス語でBlack,Blanc,Beur)のチームと呼ばれていた。多重文化が、チームの象徴だった。

今大会を制覇したフランスは、もう一つ誇れる数字を残している。

それはワールドカップに輩出している選手の数だ。
FIFAのルールによると、家族が多国籍である場合、どの国でプレーをするか選手が決められることになっている。
今大会では、全チームで736人の選手が登録対象となり、そのうち50人がフランス出身で、割合としては最も多かった。

 フランス出身が8人 セネガル代表

日本代表と戦ったセネガル代表チームの中で、フランスで生まれ育ったのは8人だ。

彼らはフランスのサッカー選手育成プログラムで成長した。その選手たちが自国で活躍をすることは、フランスの育成システムがいかに優れているかを物語っている。

それこそが、移民による多重文化が生み出した、フランスの強みなのである。

(執筆:FNNパリ支局 小林善 カメラマン)