ふりをしてるだけ? 脱線トランプに日本ができること

カテゴリ:話題

  • 「非核化と安全保障は表裏一体」で早くも齟齬が
  •  『アメリカは上手くやっている。安心してくれ!』
  • 日本の役割はトランプの脱線を元に戻すこと

非核化と安全の保障は表裏一体

北朝鮮に完全な非核化を受け入れさせることは、金正恩委員長に核がなくても安全は確保できると確信させることだ。
この認識を欠いた交渉はいくら重ねてもどこにもたどり着けない。それが北朝鮮の非核化交渉をウォッチする際の基本だ。

7月6、7両日に平壌で行われた米朝協議は、その意味で先行きを憂慮せざるを得ないものだった。

理由は協議後に発表された北朝鮮外務省報道官の談話に端的に示されている。曰く「アメリカ側は一方的に非核化要求だけを持ち出した。」

もしアメリカ側のアプローチがその通りだったとすれば、北朝鮮側が警戒心を強めるのは当然だ。トランプ大統領はシンガポールでの首脳共同宣言で明らかにした通り、「北朝鮮に安全の保障を与えることを約束した」。それが単なる口約束なのか、本気度はどうなのか、北朝鮮はそれを確認しながら同じようなペースでしか非核化は進めない。非核化と安全の保障は表裏の関係だからだ。

北朝鮮側は8月の米韓合同軍事演習の中止発表を確認し、それなりの準備もして、ポンペオ国務長官を平壌に迎えた。朝鮮戦争の終結宣言について具体的に話し合うことも期待してのことだが、アメリカ側は応じなかった。トランプ大統領が意欲を見せていたシンガポールでの終結宣言の署名に至らなかったことへのしっぺ返しかもしれない。であったとしても、北朝鮮側は『安全の保障の約束』に早速、黄信号が点滅したと受け止めたに違いない。

「アメリカは上手くやっている。安心してくれ!」

対照的なポンペオ国務長官のコメントの意味することは何なのか?

「北朝鮮は完全な非核化を再び約束した」「協議を通じて多くの点で進展した」「複数の作業部会の設置で合意した」など、交渉の前進を強調。「完全非核化まで制裁を維持する」として北朝鮮側の一層の譲歩と行動を求めている。
つまり、トランプ政権が売りたいイメージは;
歴史的な首脳合意の後、フォローアップはしっかり行っており順調だ。アメリカの強い立場にゆるみはなく、折れるのは北朝鮮の方だ。安心してくれ!といったものだと思われる。

そこに「安全の保障」を具体的に進めることによって「完全な非核化」も着実に動かす‥という意欲は伝わってこない。もちろん、交渉戦術あるいはメディア対策として「安全の保障」については表だって言及しないことにしている可能性も考えられるのだが、どうしても中間選挙を見据えて上手くやっている印象づくりを意図しているように思えてならない。ふりをしているだけ‥とも言える。

日本の役割はトランプの脱線をもとに戻すこと

望み通りに交渉が進む保証が何もないのであれば、その時々の状況を都合良く利用するだけ。それがシンガポール首脳会談の“政治ショー”化の理由でもあったが、今後も残りの任期や政治スケジュールを意識して同じことが繰り返されかねない。

それでは北朝鮮の完全な非核化は望めない。

金委員長が最終的にトランプ大統領と会談した理由は、歴代の大統領とは違いトランプ氏は、北朝鮮が非核化にともなって求めているのが経済支援ではなく安全保障だと理解したからだという。そこでこそ“素晴らしい取引”の可能性を認めたというわけだ。

そうであれば、トランプ政権にふりをするのは止めてもらって、北の非核化と安全の保障に同時に着実に取り組むよう働きかけること。それが北朝鮮の完全な非核化のために日本政府ができることではないか。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)

関連記事:【風間晋のニュース斜め読み】すべての記事はこちら

トランプの頭の中の他の記事