“ちょい悪オヤジ”も要因!?「大人になり切れないおっさん」が生まれる5つの理由

FNN.jp編集部
カテゴリ:暮らし

  • ライフコースの延長が"大人を自覚する時期"を遅らせている
  • 戦後の「若者文化」が支持される文化的な背景も
  • 親子の距離感…「精神的分離」も大事

明確な基準があるわけではないが、それでも多くの人が「このくらいの年齢なら、こうあるべき」といった年齢に応じたイメージを持っている。

しかし、必ずしもこれらのイメージに当てはまる大人ばかりではなく、時に白い目で見られてしまう人もいる。

自分自身についても「子どもの頃に見ていた大人」と「その年齢になった自分」とのギャップを感じている人もいるはずだ。

よくいえば「少年の心を持った大人」、悪くいえば「大人になりきれないおっさん」。

どうしてこのような大人たちが生まれてしまうのか。『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?』(イースト・プレス)や『「若作りうつ」社会』(講談社)などの著者を持つ、精神科医の熊代 亨さんに話を聞いた。

「大人になり切れない」2つの社会的要因

熊代さんがまず話してくれたのは、「社会的な要因」。おもに2つあるという。

「ひとつ目は、『ライフコースの全体的な延長が大人を自覚する時期を遅らせるように働いたこと』です。

特に都心部では大学院に進む人も多く、学歴が長くなったことによって、社会に出るまでの時間もかかるようになりました。また、就職した後もすでに転職を視野に入れているなどキャリアが固まる時間が戦後以来ずっと長くなり続けています」(熊代さん、以下同)

たしかに、社会に出ることは大人への第一歩。そもそも“大人のスタート地点”に立つ時期が遅れることで、大人になることを自覚する時期も遅くなってしまうというわけだ。

では、2つ目の要因は?

「意外と無視できないのが、『見た目で年を取った印象を与えないためのテクノロジーが発達したこと』です。長生きでき、肌の潤いを保つなどアンチエイジングの技術も進歩し、みんなに浸透しました。

その結果、たとえば同じ40代でも、昭和に比べ『おじさんっぽい』、『おばさんっぽい』人が少なくなった印象です。どこまでが子どもで、どこからが大人なのかという線引きが、テクノロジー的にも曖昧になりやすくなったという点は、見逃せません」

数年前にも「美魔女」「ちょい悪オヤジ」なんて言葉が流行ったが、実際の年齢よりも見た目が若いことが良しとされることもあった。

しかし、それが「年齢相応」というところからかけ離れてしまうことを増長してしまったのかもしれない。

「若者がアイコン」になる文化的な要因も

その他、熊代さんは、「大人になり切れないおっさん」が増えたのは、「文化的な要因もある」と話す。

「地域の年齢的なヒエラルキーやお祭りなどの伝統儀礼、儀式を支持してきた戦前の大人文化を、団塊世代以降は否定し、しがらみがないコミュニティ形成が主になりました。戦後民主主義的な価値観もそうですし、ビートルズのような舶来の若者文化を良いものとして支持していくようになったのです。

かといって、団塊世代の人たちが戦前の大人文化に代わる何かを示したかというと、疑問が残ります。以前の文化を否定しておきながら、新たな文化やロールモデルを確立しないままになってしまった印象です」

熊代さんは、その時代に支持されたアイコンからも、理想の大人像が確立されていない状況が読み取れると続ける。

たとえば、「若大将」の愛称で知られる加山雄三さんは、大人になった今でも「若大将」のまま。「大人の加山雄三がかっこいい」よりも、年齢の割に「若々しい」ということに注目が集まりがちだ。またアイドルもそう。

アイドルはいずれも「大人のアイコン」ではなく、「若者のアイコン」として親しまれている。

熊代さんは「戦後マスメディアが提供してきたロールモデルは、若者ばかり」と話すが、言われてみればその通りだろう。

子どもらしい子ども時代を過ごすことが大切

ここまで、「大人になり切れないおっさん」が生まれる社会的・文化的な要因をそれぞれ聞いてきたが、家庭などもっと小規模で個別の要因はないものだろうか?

「小さい頃に年齢相応の心理的課題をこなしてこなかった人は、その分あとで付けが回ってきます。わかりやすい例では、親が何をするにも『こうしなさい』と要求し、子どもらしい子ども時代を送れなかった人です」

ということは、親が縛るのではなく、自分の好きなように行動できていたらいいということ…?

「子どものうちは好きなことをさせておけばいいということでもありません。好きなように積極的に遊ばせることは大事だけど、やっちゃいけないことはやっちゃいけない。

自由だけだと我慢を知らない大人になるし、我慢ばかりさせていると自分が楽しめることを知らないまま大人になってしまいます。このバランスが非常に難しいです」

このほか、「親と子の精神的分離」も大事と、熊代さんは続ける。

「戦後、核家族化が進み、お母さんは専業主婦でお父さんは仕事という家庭が多かったですよね。当時はまだお母さんに仕事のアイデンティティーがなかった時代。意識が子どもに集中して、お母さんはいつまでもお母さんだし、子どもはいつまでも子どものまま年を取るようになりました。そうすると、子どもは『いつまでもお母さんに育ててもらう子ども』から抜け出せなくなり、いわゆるマザコンになったり、大人になる意識が遅延したり、大人になり切れない状況が出来上がりました。

その点、現代は共働きが増え、お母さんの意識が“子どもだけ”ではなくなりました。そのため、親も子どももお互いに依存しすぎるといった状況になりにくく、以前のような母子分離の難しさは、今後減っていくのではないでしょうか? つまり、母子分離がスムーズにいけば、『いつまでもお母さんに育ててもらう子ども』であるという意識のまま大人になる可能性は低くなるということです」

このように、社会的な要因だけでなく家庭環境や親子関係なども「大人になり切れないおっさん」を生むきっかけになっている。もしかしたら自分も「大人になり切れていないおっさん」と周囲に思われている可能性だってあるし、「大人になり切れない子ども」に育ててしまっているかもしれない。熊代さんがいうこれらの要因や特徴を自分に当てはめて、今一度、自分自身のことを振り返ってみてもよさそうだ。

取材・文=明日陽樹/考務店
取材協力=熊代 亨
https://p-shirokuma.hatenadiary.com/

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