【豪雨】川の氾濫に備えていた倉敷市の美術館に注目集まる。リスク管理法を聞いた

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  • 大原美術館のリスク管理法が注目されている
  • 美術品の収蔵庫を川の氾濫に備えて設計
  • 担当者「やるべきことを当たり前にやっているだけ」

西日本各地に甚大な被害を与えた記録的な大雨。

岡山県倉敷市の真備町では小田川の堤防が決壊したため、広い範囲が浸水。
岡山県災害対策本部によると真備町ではこれまでに約2400人を救助した。(9日8時現在)

こうした中、同じ倉敷市内の美観地区にある大原美術館のリスク管理法にツイッター上で注目が集まっている。

大原美術館は、1930年に創立され、モネの「睡蓮」などを展示している私立美術館だ。

大原美術館提供

この美術館に来館したことがあるツイッターユーザーが「大原美術館が川の氾濫に備えて美術品を保管している」という趣旨のツイートをし、このツイートが拡散。

大原美術館は川の氾濫に備え、どのようにして美術品を保管しているのか?
大原美術館の学芸課長、柳沢秀行さんに話を聞いた。

美術品の収蔵庫を川の氾濫に備えて設計

――ツイッターで注目されているリスク管理法はどのようなもの?

ツイッターで注目されているのは、2007年に着工し、2009年に完成した美術品の収蔵庫に関わる件です。

倉敷市のハザードマップを参考に、岡山県内の西部を流れる一級河川の高梁川が氾濫して、2メートルの冠水があった場合を想定して、設計しました。

この収蔵庫の建物は周辺の道路が冠水するなどの被害にあった場合、防水壁が上がるようになっていて、美術品を保管している部屋には水が入らないようになっています。


――2007年に収蔵庫を建てた理由は?

1930年に大原美術館が創立。
その後、敷地内に、1961年に陶器館、1963年に棟方志功室と芹沢銈介室、1970年に東洋館を開館。現在はこの3つを合わせて、工芸・東洋館と名乗っています。

また、それとは別に1961年には分館を開館。
現在は「本館」、「分館」、「工芸・東洋館」があります。

このようにして展示する作品が増える中、2007年に分館の中に収蔵庫を作りました。


――災害時の対応が考えられているのは収蔵庫だけ?

美術品を守るためには、普段から、温湿度、光、生物などケアすることは多いです。さらに地震や浸水など災害時での対応も考えなくてはなりません。

それに作品を守ることを考える場合、展示する場所にある局面と、収蔵庫にある局面とに分かれます。
当館は、3つの建物があり、それぞれの建物の構造も、並べている作品の材質や形状も異なります。
その点は、他館とは異なる事情を抱えているので、それぞれの建物、作品ごとに様々な場合のリスクを想定しています。

台風などで浸水が想定される時には、地下に展示している作品を、収蔵庫にしまうようなことも考えます。


――どういったタイミングで展示されている美術品を収蔵庫に移動している?

浸水が想定される場合などは、雨雲レーダーや近隣河川監視カメラをチェックし、これは危ないと判断した場合、収蔵庫にしまうようにしています。

やるべきことを当たり前にやっているだけ

――リスク管理法が注目されていること、どう受け止めている?

我々としてはやるべきことを当たり前にやっているだけです。

大原美術館だけがやっていることではなく、日本のスタンダードな美術館であれば、どこでもやっていることで、我々だけが特別なわけではありません。


――今回の豪雨で美術品への影響はあった?

ないです。
ただ、被害を受けた地域に住むスタッフもおり、メンタルのダメージは大きいです。

――今回の豪雨で営業に影響はあった?

7日は本館のみ、8日は本館と東洋・工芸館のみの営業となりました。

9日は元々休館日で、美術品の損傷などのチェックにあて、10日から通常営業を予定しております。

大原美術館のある美観地区は、同じ倉敷市でも被害の大きかった真備町とは離れているので、大きな被害の報告は上がっていないが、今回の取材でとくに印象的だったのが「やるべきことを当たり前にやっているだけ」という言葉だ。
淡々と話していたが、やるべきことを当たり前にやるのは意外と難しい。
それを実行に移すことこそが災害への備えにつながるのだろう。

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