発売前から話題「古生物図鑑」 絶滅した生き物を“等縮尺”で現代の風景に配置

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  • “等縮尺”で現代の風景に溶け込ませた古生物図鑑。比較対象が面白い
  • 担当者「サイズ感を楽しんでもらいたい」
  • よく見ると、くすっと笑える仕掛けもある

大きさが“ピン”とくる図鑑

7月21日に技術評論社から出版される一風変わった図鑑が、発売前にも関わらずTwitter上で話題になっている。

タイトルは『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』(3,200円 税別)。
古生物を現代の身近な風景に“等縮尺”で配置した図鑑だ。

すでに絶滅している古生物というのは、「全長1メートル」と言われてもいまいち大きさがピンとこないものだが、この図鑑では古生物を現代の風景に溶け込ませることで、大きさが直感的につかめるようになっている。

たとえば、長い殻を持つ全長11メートルの軟体動物「カメロケラス」の大きさを表現するためには、カメロケラスをロンドンの2階建てバスの上に縛り付けている。

一体なぜこのような一風変わった図鑑を作ろうと思ったのか?また、すでに絶滅している古生物の大きさをどうやって調べたのか?
この図鑑の著者でサイエンスライターの土屋健さんに話を聞いた。


「サイズ感」を楽しんでもらいたい

――なぜこのような一風変わった図鑑を作ろうと思った?

もともと私は、愛好家のみなさんに「古生物の黒い本」と呼んで頂いている、化石の写真やイラストを重視した一般向けの本(全10巻+図譜)を書いていました。
このシリーズでは、編集さんの発案で、各巻のカバーの裏に「実寸大で」登場古生物のイラストを配置するという“しかけ”をしていました。

“古生物の黒い本シリーズ”の完結が近づき、編集さんと「次のシリーズ」の話をしていたときに「古生物の黒い本のカバー裏が楽しい」という話になりました。

そこで、これの書籍化をという話になったのですが、生物のサイズは、ミリメートル級から、数十メートル級まで実に多様です。「実寸大」では無理がある。
そこで、「読者のみなさんが直感的にわかるような景色の中に等縮尺で配置してしまおう」ということになったのです。


――すでに絶滅している古生物の正確な大きさをどうやって調べた?

多くの種では、“古生物の黒い本シリーズ”のときに調べたデータを確認して使っています。
“古生物の黒い本シリーズ”では、学術論文や各種専門書、研究者への取材によって、情報をまとめました。

ただし、これは大切なことなのですが、「正確な大きさ」は多くの場合でわかりません。
そもそも頭のてっぺんから足の先まで、完璧に残った化石というのはなかなかありません。
そのため、古生物のサイズは基本的には「推測値」なのです。

もちろん個体差もあります。ですから、新発見や新解釈で、「大きさ」は簡単に変わります。
唯一無二の「正確な大きさ」ではないのです。

その意味では、本書においては、掲載の大きさが「正しい」と思われるのではなく、あくまでもエンターテイメントとして「サイズ感」を楽しんでもらえればと思います。


――「カメロケラス」の大きさを表現するため、カメロケラスをロンドンの2階建てバスの上に縛り付けるなど、大きさの比較対象となるモノに面白さを感じる。これはすべて土屋さんが考えた?

本書はチーム戦でした。編集さん、デザイナーさん、イラストレーターさん、そして私です。

まず、古生物の各種単体イラストが完成すると、それにサイズ情報を加えて、私から比較対象案をいくつかチームに提案します。
それに対して、各人がコメントや再提案を行って、それを私がまとめていくというやり方です。

「こうした方が楽しい」「わかりやすい」「デザイン的にOK」「本が単調にならないか」などの様々な面からチームで検討を重ねて比較対象を採用しています。

――比較対象となるモノを考えるとき、苦労したことは?

同等のサイズのものが複数種いまして、そうしたものの比較対象を考える時ですね。
単調にならないように、議論を重ねました。

お気に入りは「魚市場のアノマロカリス」

――土屋さんが一番気に入っている大きさの比較は?

この本の制作を始めた時に、「あ、楽しくなるな」と確信したのは、「魚市場のアノマロカリス」を見た時です。

アノマロカリスのサイズは、いわゆる図鑑では「全長1メートル」です。そこから考える と「ん? ちょっと小さいかなー」とも思ったのですが、スズキやマダイも図鑑では「全長1メートル」、サバは「全長50センチ」です。

市場の魚たちがそこまで大きいものではなかったとしても、アノマロカリスにも当然個体差があるわけですから、おおよその「サイズ感」としては、この配置はおそらく間違いではなく、むしろそこに“リアル”があるのだと思いました。

まあ、それ以前に「市場でアノマロカリスが売られている!」という光景が面白いと思いません?

――その他、この図鑑を作るうえで苦労したことは?

これは私の担当ではないのですが、なにしろ「現実の景色」に古生物を配置するので、違和感のない古生物のイラスト(CG)が必要で、それを違和感なく取り込ませることが大切です。

その意味で、イラストレーターのお二人(古生物単体担当と、景色合成担当)には、ご苦労をおかけしました。

一番好きな古生物は「ディプロカウルス」

――土屋さんが一番好きな古生物は?

アノマロカリスも大好きですが、ここではあえて、ディプロカウルスを挙げたいと思います。

頭部がブーメランのような形をした水棲動物ですが、このディプロカウルスを風呂場に配置したら、これが思いのほかしっくりきまして。家で飼いたくなりました。

――どのような点に注目して、この図鑑を読んでほしい?

本書は、ゆる~い本です。

先にも述べましたが、あくまでも「サイズ感」を楽しむもので「唯一無二の絶対的な資料」ではありません。
そこを踏まえた上で、ぜひ、本を手にとって前後のページ、つまり「同じ時代の生物たち」との比較も楽しんでください。

「魚市場のアノマロカリス」で「アノマロカリスって、意外とちっちゃい?」と思っていても、前後のページの生物と比較することで、「マジかよ!」という“時代のサイズ感”をお楽しみいただけると思います。

くすっと笑える仕掛けにも注目

読みどころ満載のこの図鑑。とくに注目すべきはどのようなところなのか?
この図鑑の出版社、「技術評論社」の大倉さんにも話を聞いた。

――どのような点に注目して、この図鑑を読んでほしい?

ちなみに、今回の図鑑には、ときどき、他のページの生物がゲスト出演しています。

たとえば、アノマロカリスの画像に「売約済み」とありますが、あれはネクトカリスという別の古生物です。

この古生物は、後ほど購入された方が「寿司」として提供してくれます。
この仕掛けは本文を含めて全くふれていません。分かった人だけがくすっと笑える、ちょっとした仕掛けです。

大倉さんによると、“ゲスト古生物”の出演頻度は十数カ所で、自然な感じで登場させているそうだ。
これを探索するもよし、『リアルサイズ古生物図鑑』は、いろいろな楽しみ方がありそうだ。