“裏口入学”なぜ起きた? 私立医学部の学費低下と業界内の噂【文科省局長逮捕】

  • 「試験の点数加点」東京医科大“2トップ”の関与が発覚
  • 医学部受験のエキスパート「20年程前には裏口入学あった」
  • 学費低下で偏差値UP…“狭き門”の知られざる実態

東京医科大“2トップ”の関与が発覚

息子を裏口入学させたとして、文部科学省局長が逮捕された事件。新たに、東京医科大学の理事長と学長が関与していたことがわかった

今年の春、文部科学省の局長だった佐野太容疑者(58)は、息子の入学先である東京医科大学の前で家族写真を撮影。

それから約3ヵ月が経過した7月4日、佐野容疑者は私立大学の支援事業をめぐって、大学に便宜を図った見返りに自身の息子をいわゆる裏口入学させた受託収賄の疑いで、東京地検特捜部に逮捕された。

東京医科大学の理事長と学長が「加点」関与

2016年、前川事務次官(当時)の下でナンバー3といわれる官房長に就任。将来の事務次官候補と言われ、“文科省のエース”的存在だった佐野容疑者は、国会でも度々答弁に立ち、研究者の育成について語っていた。

「我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、科学技術イノベーションを担う創造性豊かな若手研究者の育成確保が必要」
(5月・参院文科委)

事件の舞台となったのは、文科省が2016年度から開始した「私立大学研究ブランディング事業」という新事業だ。独自色を打ち出す研究に取り組む私立大学に補助金を出すというもので、東京医科大学は2016年度はこれ選定されなかった

しかし、働きかけがあった2017年度は、「健康長寿社会の実現を目指した拠点形成」を掲げ、事業の対象校に選ばれ約3500万円の助成を受けたという。

佐野容疑者が、東京医科大学の関係者から対象校となるよう依頼されたのは、昨年5月。
そして、今年2月、佐野容疑者の息子が一般入試で受験した際、東京医科大学の臼井正彦理事長と鈴木衛学長が、試験の点数加点に関与していたことが新たにわかった。

東京医科大学の学生たちは、事件を受けた現在の心境を次のように語る。

「まさか自分の大学がこんなことをやっているのは結構まずいと思いますし、世間からの評判がガタ落ちしてしまうので、そこは心配です」

「大学がどういう気持ちで裏口(入学)というか、どういう経緯でやったのか、事実を話してほしいです」

志願者増の要因に「学費軽減」と「不景気」

大学側は、なぜ裏口入学を行ったのか?
医学部受験のエキスパートで、医学部予備校Windom代表の三輪伸之さんをゲストに迎え、その背景を探る。

倉田大誠キャスター:
今回の事件を受けて、率直にどのような思いを抱かれましたか?

三輪伸之:
本当に驚きました。昔ならそういう話も聞いたことはありますが、未だにあるのかと

反町理キャスター:
昔は“裏口入学”はあったのですか?

三輪伸之
20年程前ですが、金銭がらみでそういうことがあったとは聞いていますが、それも稀な話です。

倉田大誠:
では、なぜ今回このような事件が起きたのか。それには医学部が入学するのが難しい“狭き門”だということが関係してきそうです一昔前には「家1軒分」といわれていた私立大学医学部の学費ですが、大きく下がってきています。その先駆けは順天堂で、2007年度までは6年間の学費は2970万円だったのが、2008年度には880万円値引きした2090万円になりました(現在は2080万円)。それを受けて、他の私立大学も追随していったという流れがあります。

三輪伸之
大学側の目論見としては、医師の国家試験の合格率を各学校ごとに競い合っていて、やはり優秀な学生がほしいということがあります。

倉田大誠:
つまり、多くの学生に志願してもらいたいということですね。その効果は出ているようです。国公立大・私大を含む医学部志願者数は、2007年度は約12万2000人だったのが、2014年度には約16万2000人と大幅に増えています

島田彩夏キャスター:
学生の数が減り続けている中で、医学部の志願者数が増えているということは、学費が安くなったことが関係しているのでしょうか?

三輪伸之
それもひとつの要因になっています。学費を下げると、その年にぐっと倍率が上がるということは、よくあります。医学部が全体的に安くなったので、志願者が増えているということはあると思いますが、もっと他に原因があります。不景気が長く続いていたので、多くの学生が「ヘタに理工学部に行くよりは医師になろう。その方が将来的に安定する」と考えていたと思います

反町理:
そういう中で、国から私立学校に支給される私学助成金というものがあります。東京医科大学に対しては2017年度は約23億円です。1300人の学生に約23億円です。青山学院大学は1万9000人の学生で22億円です。私立大学でも文系と理系、医学部専門という違いはありますが、この金額は大学にとって喉から手が出るほどおいしいお金でしょう。そのお金を差配するのが文部科学省と見たときに「私立大学研究ブランディング事業」とは別に、もっと深いところでの文部科学省と医学部のある大学の関係、癒着の構図があるのではないかと思ってしまいますが、この見方はどうでしょうか?

三輪伸之
見方を変えれば、そういうこともあるかもしれませんが、そこまで深くは語れません。

島田彩夏:
三輪さんが予備校で指導している生徒たちは、みんな医学大学を目指している。そうした中での今回の事件です。生徒たちはどのような反応をみせていましたか?

三輪伸之
うちの生徒たちは、一生懸命勉強をして医学部に入学しています。高い意識を持った生徒ばかりなので、彼らにとっては本当に残念だと思います。

(「プライムニュース イブニング」7月5日放送分より)

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