なぜ走る? 人気急増“100kmウルトラマラソン”の知られざる世界

カテゴリ:国内

  • フルマラソン以上の距離を走る過酷な「ウルトラマラソン」
  • 100kmの世界記録は日本人が持っている 
  • 筆者も体験 スタート地点にたどり着くのも一苦労のワケ

過酷な「ウルトラマラソン」

ウルトラマラソンという競技をご存じだろうか。

42.195km以上の距離を走るマラソンのことで、主な種目は100kmマラソンになる。
最近では、高円宮家の三女・絢子さまの婚約者 守谷 慧さんも完走者であることで話題になった。風光明媚な場所を走ることが多く、中には日光や白川郷など世界遺産になっている場所を走る大会もある。
フルマラソン以上の距離や達成感を求め、このウルトラマラソンに出場するランナーが今増えている。

ウルトラマラソンの国内最高峰と言われるのは、「サロマ湖100kmウルトラマラソン(以下サロマ)」で、第33回となる今年は6月24日に開催された。


オホーツク海につながるサロマ湖をぐるっと回るコースで、湖の西側の湧別町をスタートし、佐呂間町を経由、フィニッシュ会場の北見市常呂町スポーツセンターを目指す。
ゴール地点には平昌オリンピックで国内カーリング史上初のメダルを獲得したLS北見の拠点もある。

この大会は日本陸連公認コースで多くのトップランナーも出場するため、東京マラソンなどと並んで出場してみたいとあこがれるランナーも多い。

フルマラソンは世界との壁が厚いが、実は100kmマラソンにおいては、男女ともに日本人がこのサロマで世界記録を出している。
今年は、風見 尚選手が6時間9分14秒でゴール、20年ぶりに世界記録が更新された。

このサロマに私も挑戦してきたので、知られざる“ウルトラマラソンの世界”とともにご紹介したい。

100km部門の一般枠は開始29分で一杯に

闘いは走る前から始まっている。

通常、マラソン大会にエントリーするには2種類あり「先着順」か「抽選」。
サロマは「先着順」で、エントリー開始時間になったらサイトにアクセスし、申し込みを完了すれば出場権を得ることができる。

ところが、サロマは国内最高峰の大会だけあって、開始時間にアクセスしてもなかなかつながらず、私は開始17分後になんとかエントリーできた。
今回の一般枠受付人数は2,860人、大会側によると100kmの部は29分で受付が終了したという。


エントリーページで定員到達のお知らせが表記されるようになった第25回大会以降を見てみると、回を重ねるごとに到達までの日数が短くなり、第29回大会にはついにエントリー開始日に定員に達していた。

エントリー開始日から定員到達までの日数

スタート地点にたどり着くのも一苦労

やっとの思いでエントリーできても、またまだ過酷な状況は続く。

通常のフルマラソンのスタート地点は、自治体の庁舎前や運動公園など、公共の交通機関でたどり着ける場所がほとんど。
だが、ウルトラマラソンの場合、100kmのコースを確保するという性質上、スタート地点に立つことそのものが大変。

サロマの場合、宿泊の拠点はいくつかあるが、代表的な北見市街地からスタート地点の湧別総合体育館まで60km以上。さらに、ウルトラマラソンのスタート時間は午前4~5時であることが多く、もちろん公共の交通機関は動いていない。

こうした中で何とかスタート地点に向かわなければいけない。
自家用車を使える地元の方などは大丈夫であろうが、北海道以外から出場する人はツアーバスかレンタカーを手配する必要がある。

私の場合はツアーバスでスタート地点に向かったが、ウルトラマラソンは費用面でも、エントリー費、旅費、宿泊費、大会で使用する補給物資などを含めると10万円以上は覚悟しなければいけない。
(※サロマに東京から出場する場合)

まるで深夜バスに乗るかのように未明に宿泊先を出発

ナゼここまでして100kmを走るのか?

エントリーするのも大変、スタート地点にたどり着くのも大変、しかも費用もかかる...
なぜここまでして100kmを走るのだろうか。

まずは、フルマラソン以上、自分がどこまで走ることができるのか試してみたくなるというもの。
フルマラソンの完走者は年々増え、大きな大会も増加傾向にある中、この完走者がそのままウルトラマラソンに流れているというものである。
100kmを走る大会も増えており、最近では2016年に「沖縄100Kウルトラマラソン」、2017年に「日光100kmウルトラマラソン」などが初開催を迎えた。

そして、100kmマラソンは競技時間の長さから体調やメンタルの変化、気象の変化など様々な事態に直面する。
そのため、完走した達成感はフルマラソンの比ではなく、会場に向かうバスの中、隣のランナーは「ゴールすると一回り大きくなれる」と話していた。

また、「記録よりも完走」という性質もフルマラソンより強い。
サロマの過去大会のデータを見ると、100kmの部出場者の完走率が50%を下回る回もある。主に暑さが要因になっているのだが、様々な事態に対応するセルフマネジメントを行い、完走したランナーには賛辞がおくられる。

そしてレースが始まった。

今大会は昼までは暑く、午後に入ると急激に気温が下がり、オホーツク海からの冷たい雨風が強くなるというタフなレースだった。
この過酷な気象条件で低体温症になる人多数。

このような環境の中、私は91km地点で足のあらゆるところが同時につり、しばらく一歩も動けなくなった。

すると、後ろから来た1人のランナーに助けてもらい、とても勇気づけられた。私は91kmからはもう走ることはできず、一歩一歩残りの9kmを進み11時間31分14秒で完走。
2回目の挑戦となる今回は、「サブ10」と言われる10時間切りを狙っていたのでとても悔しく、一方で何とか完走はできた...という安堵感もあり複雑な心境だった。 

なお、余談ではあるが、初めて100kmを走った時は出場したのを後悔し、完走後「もう二度とやらない」と思っていた。しかし数日後、出られる100kmの大会はないかと探している自分がいるのである。
恐ろしいものであるが、上記であげた100kmの魅力がそうさせているのであろう。


サロマを10回完走すると「サロマンブルー」の称号が贈られ、ゴール地点に記念足形が飾られる

“ウルトラマラソン”に役立つ商品も

ウルトラマラソンの大会が増加するにともない、“ウルトラマラソン向け”と思われる商品も次々と販売されている。

一例としてランニングウオッチの稼働時間(GPS使用時)がどんどん伸びている。
100kmマラソンの制限時間は14時間であることが多いが、これを制限時間いっぱいで走った場合、普通のランニングウオッチではバッテリーが切れてしまう。

そうした中、2017年5月に発売されたガーミン社「ForeAthlete 935」は、通常の稼働時間は約21時間(最長約44時間)。
さらに2018年6月に発売のスント社「SUUNTO 9」は、GPS精度が高い状態での稼働時間は約25時間、精度を低くすると120時間もバッテリーが持つという。
100km以上走る大会では、この2つの商品はマストアイテムだろう。

また、100kmを走るにはエネルギー補給をし続けなければいけないが、コンビニなどで売っているゼリーなどではかさばってしまう。そのため、よりコンパクトに、より高カロリーを得ることができるエネルギーゼリーがさまざまなメーカーから販売されていて重宝している。

本大会で使用したエネルギー補給 アミノ酸入り、カフェイン入り、マグネシウム入りなど用途もさまざまだ

フルマラソンにはない魅力があるウルトラマラソンの世界を少しだけ知っていただけただろうか。
過酷なレースにも関わらず、ウルトラマラソンに出場する市民ランナーは年々増加している。
あなたの周りにも「100km Finisher」が現れるかもしれない。


(執筆:羽賀 野歩)