たった54文字に詰め込んだストーリー! "超短編の文学賞"が話題

FNN.jp編集部
カテゴリ:国内

  • 54字で物語を作る公募企画『54字の文学賞』が話題 
  • ラスト3字でどんでん返しのSF、ほのぼの…公募人気ジャンルは「ホラー」
  • 生みの親に聞いた「コツは、直接的な言葉を使わずに表現すること」

54字の文学賞」をご存じだろうか。
もちろん、ノーベル文学賞や芥川賞・直木賞などの規模の話ではない。今年3月から5月にかけて作品が募集された、大手出版社・PHP研究所による公募企画だ。

6月27日に優秀作品が発表された「54字の文学賞」。どういったものなのか、まずは1作品見て頂きたい。

たった54文字で表現する「超」短編小説

「保育園での一コマ。保育士は、二十人の子供に向かい歌った。「幸せなら手をたたこう♪」園には沈黙と静寂が訪れた。」


こちらは「小中学生の部」で大賞を受賞した、八咫ガラス(@yuzukisugiura28)さんの作品。
和やかなムードで始まった保育園での物語だが、ラスト13文字で雰囲気は一変。「幸せなら…」の呼びかけに誰も答えない、殺伐とした物語に…

このように、ぴったり54文字でひとつのストーリーを作るのが「54字の文学賞」なのだ。
基本ルールは「文字数を54字ぴったりに収めること」「句読点やカギ括弧も1文字にカウントすること」だけという自由さが逆に難しいこの企画、実に2992作品が集まったという。

「大人の部」大賞作品はSF?

「佐藤がタイムマシンに乗って、昔の自分の両親に会いに行ったらしい。未来が変わる危険もあるのに大丈夫かな、鈴木…」


「大人の部」からは、Baku Shibutani(@ShaTapirus)さんが綴るこちらの物語が大賞を受賞。
たった6行の間に、未来が変わってしまった?  
54文字という短さながら、まるでSF映画を見たかのような感覚に思わずゾワリときてしまう。

左:「コメディ賞」受賞作品 右:「企業賞」受賞作品

こちらは「コメディ賞」を受賞した、しう@ゆくラボ(@siu_lab)さんの作品。


「彼は人を食ったような男だ。いつも尊大かつ図々しい態度で相手を馬鹿にし、なおかつゾンビウイルスに感染している。」


「人を食ったような」と言いつつ、食っている。
そして「企業賞」を受賞したのはなんと、JAXA『いぶき2号』衛星開発チーム(@ibuki2_JAXA)さんの作品。


「どうやら人類が団結し始めた。地球温暖化に抗うつもりか。衛星で温室効果ガスを監視するだと?余計な事しやがって。」


この作品を作ったチームが開発する「いぶき2号」はまさに温室効果ガスを観測する衛星。
地球を守る研究チームが、地球外生命体の視点から放った"宇宙ジョーク"に、54文字の舞台は宇宙にまで広がってしまった。

「パズルを解いたときのような快感」 生みの親に聞いた

この「54字の文学賞」、PHP研究所から2017年に出版された『54字の物語』の重版記念で開催されたもの。
「54字の物語」の生みの親であり、投稿作品の品評をされた氏田雄介さんにお話を聞くことができた。

――なぜ「54字」という設定に?

「#54字の物語」を始めたのは、インスタグラムで楽しめるようなテキスト作品をつくりたいと思ったのがきっかけです。
試行錯誤の結果、インスタグラムの(画像投稿の)正方形の枠に収まって、可読性が高く、ある程度内容も詰め込めるのが、9マス×6行の54字でした。


もともと「#インスタ小説」として生まれた「54字の物語」。インスタグラムの、画面が高速でスクロールされる・おしゃれな写真の中に並ぶ・ハッシュタグ文化があるなどの特性を生かして、「短時間で情報が伝わること」「ビジュアルとしても優れていること」「ルール化していること」をふまえているという。


――文字数の制限がある作品の楽しみ方は?

読み手側と書き手側、どちらにとってもパズルを解いたときのような快感があるところだと思います。
読み手側にとっては、少ない情報量から裏に隠れた物語の意味を読み取る、なぞなぞを解くような面白さがあります。
書き手側にとっては、伝えたいことを思いついたまま伝えるのではなく、別の言葉に置き換えたり、余計な情報を削ったりすることで、パズルを組み立てていく気持ちよさがあると思います。


――ご自身の作品の中で「お気に入り!」のものを教えてください。

本当にこんな惑星に生命体が存在するのだろうか?一年間に及ぶ実地調査の最終日、幸いなことに私はうんこを踏んだ。」

子どもが喜ぶようなストーリーをつくりたいと思い、とりあえず「うんこを踏んだ」という一文を入れようという安易な考えからつくった作品です。普通は嫌なことでも、状況によっては涙が出るほど嬉しいこともある、ということを感じ取ってもらえればと思います。


――投稿された作品の中で、多かったジャンルは?

ホラー系が多かったです。また、自分ではあまり書かない恋愛系やハートウォーミング系も多数あり、非常に勉強になりました。

――審査のポイントは?

物語の大事な部分を文中で説明せずに、ちゃんと読者に想像させるようになっているかを一番重視しました。

――54字の物語を作るコツなど、アドバイスをお願いします!

今、続編を書いているのですが……逆に教えてほしいです!
強いて言うなら、物語になりそうなシチュエーションをどうやって直接的な言葉を使わずに表現するか考えることではないでしょうか。


9マス×6行の極小作文用紙はこちらのジェネレータから入手することができる。
見慣れた400字詰めの作文用紙でいえば、たった2行半。ワザの光る大賞作品を読んでしまったあとで非常に苦しいが、早速スタッフも作ってみた。
拙作だが、なにせ54字のためお時間は取らせないので、どうか読み飛ばさないでいただきたい。


「今後も定期的に開催したい」

そして、大賞発表後もSNS上に作品を投稿する人が多いことから、なんと急遽「第2回 54字の文学大賞」が開催された。
残念ながら締切は過ぎてしまい、審査中とのことだが、今後も同大賞の開催予定があるか聞いてみたところ「定期的に開催していきたいです。(『54字の物語』の)続編が出るタイミングでPHPさんとの公式コンテストも開催予定です」との回答があった。

また、氏田さんは、あたりまえのことを美しい写真に載せて詩的に綴った「あたりまえポエム」の生みの親でもあり、並行して「第1回 #あたりまえポエム大賞」をTwitter上で開催している。

"手軽に楽しめる文学"がブームになりつつあるSNS。文学に目覚めた!という方はぜひ一度挑戦してほしい。


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