“ダイヤモンド”がベルギーをサッカー強国に!? 移民・多様性に日本は対応できるのか

  • ベルギー代表に、ダイヤモンド産地コンゴルーツの選手が5人
  • 落合陽一「目的にフォーカスするときは多様性があるほうがいい」
  • 日本の応援をしながら多様性やリーダーシップを考えるタイミング

“赤い悪魔”とアフリカ・コンゴ

ベルギーの街並み

FIFAワールドカップ2018決勝トーナメント進出を決めた日本だが、ベスト8に勝ち上がるために立ちはだかるのが“赤い悪魔”ベルギー。今回の優勝候補の一角だ。
ロシアで取材中のサッカージャーナリスト田村修一氏は、その強さをこう語る。

「攻撃陣にスター選手がたくさんそろっているのと、ここ数年で急速に力をつけてきたチームです。今回は本格的に優勝を狙っている」

9年前はFIFAランキング66位と低迷していたが、2015年には1位、現在は3位とベルギーは急速に強くなった。

ベルギーは人口およそ1100万人と日本の10分の1。
面積は九州の4分の3しかない小さな国だ。

そんなベルギーといえば、チョコレート、ベルギーワッフル、ベルギービール。
そしてもう一つ、それが「ダイヤモンド」だ。この“ベルギー・ダイヤモンド”にこそサッカー急成長の秘密があるという。

実は、ベルギーは、ダイヤモンド取引量が“世界一”、世界最大のダイヤモンド交易拠点なのだ。

その理由は旧植民地のアフリカ・コンゴにある。そのコンゴは世界第二のダイヤモンドの採掘量を誇り、現在でもダイヤモンドの原石がコンゴから集められ、研磨された後、世界に輸出されている。

そしてそのコンゴこそが、ベルギーがサッカー強国になった理由だった。

方針転換!移民を英才教育せよ!

ベルギーの絶対的エースで今大会すでに4得点を挙げているロメル・ルカク(25)選手の両親はコンゴからの移民だ。他にも、ベルギー代表には、コンゴにルーツを持つ代表選手が5人いる。

アフリカや東欧から出てきた選手は、まずベルギーに行ってクラブチームに所属し、欧州のビッグクラブに移籍する。そうした中継点のような国になっているベルギーは、コンゴからダイヤモンドの原石のような優れた身体能力を持つアフリカ系選手などの移民を取り込んで彼らを育てているのだ。

ベルギーはヨーロッパの中で交通の要所であり、人やモノが行き交う交差点だ。
首都ブリュッセルには、EU本部が置かれており、EUがかかげる人・モノ・サービスの自由な移動をおひざ元として体現している。移民の受け入れにも寛容だ。

しかし積極的な移民受け入れは、ひずみも生んだ。移民のイスラム教徒が多いブリュッセルの貧しい地域モレンベーク地区は、3年前、パリ同時多発テロの実行グループの出身地として注目をあびた。

THE TIMESより

コンゴにルーツを持つのルカク選手も、貧困に苦しんだ。6歳の時、母親が牛乳の量を増やすために、水を注ぎたしているのを見て、どれほど自分たちが貧しいかを知った。そして、プロサッカー選手として活躍して貧困から抜け出すことを母に約束したという。

しかし、ルカク少年が、そう決意したころ、ベルギーサッカーは低迷していた。2002年の日韓ワールドカップでは日本と引き分け。その後、2大会続けてヨーロッパ予選敗退を繰り返した。

そのころのベルギー代表にはまだアフリカ系選手はあまりいなかった。まだ移民を代表に起用することに積極的ではなかったのだ。

しかし、低迷から抜け出すため、方針を変える。
優れた身体能力と、高いモチベーションを持つアフリカ系移民の子どもたちに英才教育を施し、各クラブに育成機関を設けると同時に、アカデミーを作って、アフリカの子どもたちを呼んで育てたのだ。その結果、ベルギー代表は世界トップレベルになった。

現在の代表チームにはアフリカなど外国にルーツを持つ選手が半分以上選ばれている。

在日ベルギー大使館のイエルーン・ヴェルゲイレン参事官はこう話す。
「ベルギーはローマ時代から移民になれているんです。代表チームこそが移民にポジティブであることの成功例・象徴であるといえます。」
世界最強の“多様性を持つチーム”ベルギーに西野監督率いる日本はどう挑むのか?

日本にも多様化の波…?

スポーツキャスターの青島健太氏は日本でも多様性の時代が始まっているとしたうえでこう話す。

「スポーツでは多様性が非常に働くと思うんですよね。文化とか方法論と物のとらえ方を考えても。フィジカルの面でも我々の身体性に新しいスピードやスケールが加わるということになります。
どのスポーツを見ても、野球サッカー、テニス、卓球なんかもそうだし、ご両親が外国の方だったり、もしくはどちらかの親が外国の方だったりすると、我々が見たことの内容なプレーをする。その子のプレー、存在によって周りも影響を受ける。レベルアップする。多様性こそスポーツの進化には欠かせない要素じゃないかなと」

一方、メディアアーティストの落合陽一氏は、外国人選手の活躍はすでに日本では駅伝で昔から存在していたのでは?と話したうえでこう語る。

「同じロジックや同じバックグラウンドでやっていると、どうしても空気を読みあったりするので。目的にフォーカスするときは文化的なバックグラウンドが多様性のあるほうがいいと思う。
ワールドカップは多様性とか国際社会で戦うっていうことをみんなが意識するきっかけになるんじゃないですか?こういうのがいっぱいあるといいんですけどね。昔からこういう選手たちは世界と戦ってきたわけなんですけど、自分のこととしてみんなが感じるきっかけになればいいんじゃないですか」

西野監督のリーダー像が今なぜ受ける?

大会前の前評判とは打って変わって日本中が賞賛している西野監督。選手との対話を重視し、選手の判断に任せる。

今、そのリーダー像がなぜ受けているのだろうか?落合氏は時代の影響もあるという。

落合:
昔だったらリーダーは自分で何でもできる、“覇道”を歩んでいるような人だったと思いますが、弱いリーダーというのは周りがサポートしやすいといいますか、コミュニケーションがとりやすいとか。
あとはそのリーダーは何かものすごい特性が1つはあるんですけどそれ以外のものは周囲が補うというもの。目的に向かってみんながイメージを共有していくんですが、1人の人間が全部ロジックができて、イメージも共有できる状態だと、おそらくロジックは末端が共有できなくてもよいということが起きる。
弱いリーダーだと全員がロジックとイメージを両方共有している状態ができて、そんなに強くないリーダーというのは、それはそれで今の時代ワークするんじゃないかと思います。

やくみつる:
私は日本人は強烈なリーダーシップでむしろ軍隊式に引っ張って行ってもらえる、それが日本の一番強かった時代ではないか。そういう構造があった。
今みたいにやさしいリーダーがいて、ちょっと頼りないリーダーがいて、そんなことで世界に通用するんだろうか、逆行しちゃわないかという懸念を感じる。

落合:
やさしいとは言っても一つは世界で通用するものを持っていないといけないんですよ。
それはすごく重要で、天才型を束ねる状態が多様社会のポイントだと思う。でもおっしゃる通り日本人は軍隊式が向いていそうだなというのは思う(笑)。
今までの日本の教育って平均的なスタイルで、コンテクストをみんなで共有して全員で同じ言語ことか常識を叩き込むことが得意だったからスポ根が受けやすかった。しかし1人の天才が世界を変える時代になったら1人1人がある程度とがってないと多様なものって生まれてこないと思う。

ここからが“本当のW杯” 

2005年、川渕三郎Jリーグ初代チェアマンが発表した「JFA2005年宣言」。
その最終目標は「FIFAワールドカップを日本で開催し、日本代表チームはその大会で“優勝チーム”になる」というものだった。
西野監督は自国開催での優勝を、近い人にはことあるごとに口にしている。

永島昭浩:
このベスト16のメンバーに入る、この戦いに入る。ここからが本当のW杯なんですよ。
優勝するチーム、優勝国というのはここからの本気の戦いを数多く経験してきて成し遂げているんですね。グループリーグでは味わえない戦い方。全力を出しきって戦っていく。
これは2050年までに数多く経験していくことが必ず必要なんです。この大会で西野さんが2050年までに優勝するということを考えたときに、決勝トーナメントに出るということは絶対条件だったんです。

佐々木恭子:
毎回決勝トーナメントに出るようなチームにならなきゃいけない?

永島:
そうなんです。それを経験していって、分析、課題、実行してどんどん積み上げていく。
この作業というのはトーナメントに出ないとゼロなんです。



7月3日午前3時から始まる運命の一戦。
日本の応援をしながら多様性やリーダーシップを考えるのも良いのかもしれない。

(「報道プライムサンデー」7月1日放送分)


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