派内で出馬論拡大も…深まる岸田文雄の悩み【自民党総裁選】

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  • 多くの「総裁選やるべきだ」の声に岸田氏は 
  • 出馬をためらわせる地方票惨敗の恐れ 
  • 派内でも誰もわからない?岸田氏の本音 

派内で勢い増す岸田氏への出馬待望論

6月26日夜、東京・赤坂の路地裏にある、一日一組しか客を入れないという韓国料理店。

自民党・岸田派の事務総長、望月元環境相を中心に、小野寺防衛相、平井党広報本部長、三ツ矢元外務副大臣など岸田派のベテラン議員が集まった。

この会合のテーマは、派閥の会長である岸田文雄政調会長が秋の自民党総裁選挙に出馬すべきかどうかだ。

望月氏は6月に入り、岸田派の議員を当選回数ごとに集めて、「岸田氏に総裁選に出馬して欲しいか』を直接ヒアリングしてきた。

この日の会合に集まった顔ぶれは,派内でも、岸田氏と特に近いベテラン・中堅組だけに、どういった結論が出るか注目が集まっていた。

そして会合終了後、三ツ矢氏は記者団に対して

 「せっかく候補者として岸田会長がいるわけですから、やってほしいということに尽きるほぼ全員の方がやるべきだということだった」と述べて、出席メンバーの大半が、岸田氏は総裁選に出馬すべきだという意見だったことを明かした。

会合終了後、記者団に語る岸田派・三ツ矢憲生氏


岸田氏本人が、これまで総裁選への態度を明確にしていない中で、派閥内から発信された、出馬への強烈な後押しだった。

惨敗の恐れも…主戦論の一方で根強い不出馬論

派内では、にわかに岸田氏出馬への機運が高まっているが、一方で、現職総理と闘う総裁選は避けるべきだという、不出馬論も根強い。

ある岸田派議員は私の取材に対し、次のように本音を語った。

いま安倍さんと戦って勝てるのかと聞いて、勝てるというやつはほとんどいないだろう。先を見据えて今回出馬すべきとの意見もあるが、今回戦って無傷でいられるのか」

今年に入り地方行脚を進めるなど、岸田氏は人気向上に努めている。

しかし、最新のFNNの世論調査で「次期自民党総裁に相応しい人物」について自民党支持層に聞いた結果は、安倍首相49.4%、小泉進次郎氏21.4%、石破茂氏13.9%に大きく水をあけられ、岸田氏は5.3%にとどまっている。

総裁選で半分の票数を占める地方票への手ごたえが無い中で、出馬し惨敗すれば、次につながるどころか、総裁候補失格のらく印を押されてしまうという危惧だ。

加えて、安倍総理に弓を引いた結果、人事などで冷遇される代償を懸念する声も挙がっている。

岸田派若手議員が安倍首相との会合に…派内に動揺も

さらに、6月27日の夜、自民党の一部無派閥議員らのグループ「向日葵(ひまわり)会」が安倍首相を招いた会合も、岸田派内に波紋を広げた。

この会合には、今月から新たに岸田派の一員となったはずの若手議員の姿があったのだ。

この若手議員は無派閥の時に向日葵会に参加していた流れで出席したのだが、会合の主催者で、安倍首相にも近い河井克行議員は会合後、記者団に対し意気揚々と「安倍総理にしっかりこれからも引き続きこの国のかじ取りを行っていただきたいという意見が多く出されました」と述べたのだ。

岸田氏が出馬する可能性がある中で、岸田派の若手議員が首相を前に安倍三選を支持する発言をしたともとられかねないこの顛末に、岸田派内からは、派閥の結束のゆるみを懸念する声も挙がった。

「向日葵会」に出席した安倍首相は意気揚々

派内でもわからない岸田氏の本音

こうした中だからこそ、総裁選への岸田氏自身の本音を知りたいというのが派内の本音だ。

しかし、岸田氏は「国会が閉会するまでは国会に集中するべきだ」と言い続け、記者に対してはもちろん、身内である派閥議員にも態度を明確にしていないようだ。

「まあとにかく最後に判断されるのは岸田会長ですから」

岸田派の議員が、私の総裁選に関する取材に対し、必ず最後に付け加えるこの一言に、派閥内でも岸田氏の考えがわからないという現実が表れている。

判断の「大義」で左右される岸田氏の求心力 

そして今、派内からは「出る出ないどちらを判断するかというよりは、なぜそう判断したかが重要になってくる」(岸田派中堅)という声も漏れている。

結論よりも、納得できる大義こそ重要だ、との意見だ。

出馬するにせよ、しないにせよ、その大義の内容によっては岸田氏についていかない議員が出てくる可能性もあり、政治家・岸田文雄の求心力は大きく左右されることになる。

派閥内から湧き上がる様々な声に答えるように、岸田氏は6月27日に行われた定例会見の場で次のように述べた。

「1人1人の国会議員の見識、考え方は大事であると思いますし、尊重していきたいと思います。今後ともそれぞれの意見を丁寧に聞かして頂いた上で、政策集団としてのありようについて明らかにしていきたい」

岸田氏は「派閥議員の意見を丁寧に聞き意思を決める」と言い、派閥議員は「判断するのは岸田会長だ」と言う。

 政策決定の上で「ボトムアップ」と「トップダウン」のバランスを重視する岸田氏の派閥らしい関係だが、政治家人生を決定づけるかもしれない大きな決断を適切に下せるかどうか。そのタイムリミットまでに岸田氏に残された時間はそう長くはない。

(政治部 自民党担当 福井慶仁)

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