気温差以上に感じた、沖縄での安倍首相と翁長知事の温度差

カテゴリ:国内

  • 安倍首相と翁長知事が同席した沖縄全戦没者追悼式 
  • 2人の発言に物理的な距離以上の溝 
  • 辺野古移設問題で垣間見えた総理の「強気」な姿勢 

1945年6月23日。20万人余りが犠牲となった沖縄戦が終結した日だ。それから73年が経った今年の6月23日。

安倍首相は沖縄戦最後の激戦地となった糸満市で開かれた沖縄全戦没者追悼式に出席した。


午前10時17分 安倍首相が那覇空港に到着。この日の那覇の最高気温は32℃。東京との気温差は10℃以上もあり、東京から来た私たちは、そのジメジメした空気と照りつける太陽で、空港を出るとすぐ汗でぐっしょりとなった。

安倍首相は10時59分に平和祈念公園に到着し、11時50分に追悼式が始まった。

通路を挟み左右に座った安倍首相と翁長沖縄県知事。


安倍首相と翁長沖縄県知事

この後の2人の発言からは、互いの心の距離が、座席の物理的な距離以上にあると、改めて感じざるを得なかった。

献花に続いてまず翁長知事が平和宣言を読み上げた。

平和宣言を読み上げる翁長知事の表情は

今年4月にステージ2のすい臓がんを公表した翁長知事。

頭髪は抜け落ち、ほほも痩せこけていたが、その声は力強かった。

「私たちは、この悲惨な体験から戦争の愚かさ、命の尊さという教訓を学び、平和を希求する『沖縄のこころ』を大事に、今日に生きております。」

そして沖縄の基地負担についてこう続けた。

「戦後、実に73年を経た現在においても、日本の国土面積の約0.6%にすぎないこの沖縄に、米軍専用施設面積の約70.3%が存在し続けており、県民は、広大な米軍基地から派生する事件・事故、騒音をはじめとする環境問題等に苦しみ、悩まされ続けています」

 さらに、米朝首脳会談を機に、朝鮮半島の緊張緩和に向けた動きがはじまっていることを踏まえ、普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を力強く訴えた。

「平和を求める大きな流れの中にあっても、20年以上も前に合意した辺野古への移設が普天間飛行場問題の唯一の解決策と言えるのでしょうか。日米両政府は現行計画を見直すべきではないでしょうか」

このくだりで大きな拍手が起きるなど、翁長知事の平和宣言の随所で、参列者からの拍手があった。そして多くの人が、額に汗をにじませながら、平和宣言が書かれた紙をじっとみつめていた。

続いて安倍首相が挨拶に立った。

基地負担軽減の”実績”を強調する安倍首相

「今日私たちが享受する平和と繁栄は、沖縄の人々の、筆舌に尽くしがたい困難と癒えることのない深い悲しみの上にある。そのことを深く噛みしめながら、静かに頭を垂れたいと思います。」

安倍首相は、沖縄県民の心に寄り添いつつ、基地問題に関して、こう決意を述べた。

「沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、何としても変えていかなければなりません。政府として、基地負担を減らすため、一つ一つ、確実に、結果を出していく決意であります。」

そして、キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)跡地の引き渡しが実現し、跡地利用の取組みが進んでいる実績を強くアピールした。

「『できることはすべて行う』引き続き、この方針のもと、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります」

安倍首相のあいさつの終わりには参列者から拍手が起きたものの、翁長知事の平和宣言のように途中で拍手が起きることはなかった。

その様子を翁長知事は目をつぶり、じっと聞いていた。

安倍首相と翁長知事の“温度差”

その後の記者団による囲み取材で安倍首相は、辺野古移設に関し、県民から理解を得られているのか問われ、丁寧な口調ながらも強気に政府の方針を訴えた。

「学校や住宅に囲まれた、そして世界で最も危険と言われている普天間基地の全面返還は待ったなしの課題だ。今、普天間基地の1日も早い全面返還を実現するために、最高裁の判決に従って、そして関係法令にのっとって移設を進めていく」

司法の判断を拠り所に、改めて移設を進めていく考えを強調したのだった。そして、辺野古移設のメリットを特に強調した。

「辺野古に移ることによって、飛行経路が海上に移り、学校はもとより、住宅の上空は、飛行経路とはならず、安全上においては大幅に向上する。騒音も大幅に軽減することになり、現在の住宅防音(が必要な世帯)については、1万数千世帯から、ゼロになる」

辺野古への移設に理解を得るための機会は少しでも逃さない。そんな思いからの主張の発信だっただろう。

午後2時25分、沖縄を後にした安倍首相。

わずか4時間あまりの沖縄滞在では、現地のレストランで食事をすることもなく、昼食は空港で弁当を食べただけという弾丸スケジュールだった。

 辺野古移設を前提に「できることはすべて行う」そう宣言し続ける安倍首相。

「できることはすべて行う」なら辺野古移設を再考・撤回すべきと訴える翁長知事。

2人の距離感は一般の沖縄県民にどう映っただろうか。

 太陽が一層照り付ける真夏に行われる予定となった辺野古基地建設予定地への埋め立て土砂投入。その前に、まだまだ汗をかいて「できること」は双方に多いように感じた。

寄しくもこの日、梅雨明けが宣言された沖縄。辺野古移設に関する政府と沖縄県の対立は、このままではすっきりしない梅雨空が続くことになりそうだ。


(政治部 官邸担当 杉山和希)


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