日本は周回遅れ…イスラエルに学ぶプログラミング教育

  • イスラエルのプログラミング教育は世界最先端
  • 一部では幼稚園からパソコンに触れさせるところも…
  • 日本でもイスラエル式の教育を取り入れ始めた

教育大変革2020

子どもを持つ親を対象にイー・ラーニング研究所が調べた2017年に子どもにさせたい習い事で、プログラミング教室が1位に選ばれた。

2位の英会話スクールを抑えて首位となった。

親たちが熱い眼差しを送るキッカケは、文部科学省が2020年から先生の指導ルール「指導要綱」を大きく変えたことで、プログラミング教育が行なわれるようになるためだ。

プログラミングはこれまで指導項目に無かった為、教材・指導マニュアル開発、Wi-Fiやパソコンなどの設備投資など、教育業界だけでなくIT業界までも注目している。

国民にプログラミング学習の重要性を認識させた文部科学省の発表は、テクノロジー人材不足の課題に一石を投じたと言えよう。

現実的に年2時間…

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一方で、新指導要綱はプログラミングを教科にはせず、算数・理科など既存の科目で指示設計・解決を理解する「プログラミング“的思考”」を学ばせるに留めた。

また明確な必修時間数も設けず、各自治体・教育委員会や学校に判断を委ねている。

その結果、業界内では「ただでさえ教科“英語”のコマ数捻出に苦労したが、教科でないプログラミングは年2~3時間で終わらせる学校が多そう」との声があがっている。

果たしてこれでいいのだろうか…?

日本は危機感を持つべきとの思いで、世界最先端と言われるイスラエルのプログラミング教育の現状を紹介したい。

イスラエルは20年前から、ICT教育を

「毎日30分の掃除か、10万円か。イスラエル式“ラク家事”で人生が変わる」でもご紹介した通り、イスラエルは知る人ぞ知る、ベンチャー大国である。

事実、イスラエルは人口1人当たりのベンチャー投資額は世界一で、それを支えるエンジニアも多い。
国民1人当たりのエンジニア数が世界一というデータもある。

この背景として、プログラミングをはじめとするICT教育がある。

その歴史は古く、1980年代から始まった。

当初は必修化まではされていないものの、一部高校で「コンピューターサイエンス」という科目が提供されていた。

そして、1990年代には全高校が導入するに至った。

その子供たちは今や30、40代となり、ビジネス・IDF(イスラエル国防省)の最前線で活躍している。

逆算して、幼稚園から仕込んでいく

イスラエルでは、高校卒業後、男女ともに兵役がありIDF(イスラエル国防軍)での活躍が期待されている。

そのため、逆算して教育に落とし込まれている。

高校卒業後の兵役で早速プロとして活躍させるには、まず高校でプロに近い開発をいくつかさせておく必要がある。そこで全員にプログラミングを90時間(週1~2時間程度)、教科として必修で学ばせ、更に270時間、450時間の追加コースも提供する。

遡って中学生ではセキュリティやアプリ開発などに挑戦させ、小学校ではプログラミング・デバックなどを習得させ、一部の先進的な幼稚園ではパソコンに触れさせるという。

なお、小中学校では「プログラミング」が教科となっていないものの、「コンピューターサイエンス」という科目で上記のことにトライさせるというから驚きだ。

日本では“指導要綱”以外に挑戦するのが難しいが、そのあたりイスラエルの柔軟性がみてとれる。

大人も愉しいから、子供まで…!

「Israeli Cyber Olympics」コーディング部門、全国大会の様子

特にユニークなのは、大人も熱中させるプログラムだ。イスラエルではハイテク起業家がバイアウトなどで富を得られるとあって親や教師の熱気がある。

それを上手く利用しているのが「Israeli Cyber Olympics」と呼ばれる理系甲子園だ。

これは日本の文部科学省にあたる教育省が旗振りするイベントで、地方予選と全国大会があり、上位入賞すると箔がつくとあって親も教師もはっぱをかける。

中でもコーディング部門に採用されている「CodeMonkeyコードモンキー」は、小学校の75%にあたる1700校、25,300人が参加している。

コードモンキーはプログラミング学習ゲームで、主人公の猿をプログラミング言語で動かし、バナナをとってゆくもの。

全200ステージを楽しみながらクリアすると、プログラミングに共通して必要な基礎知識を習得できる。さらに効率的なコードを書けば“高いスコア”が付与されるので、満点目指して難しいコードにも挑戦するようになる。

ただ、子供向けゲームと、侮るなかれ。

大人でも“脳トレ”みたいに愉しくてついつい病みつきになり、親や教師が夢中になって挑戦する姿を子供たちに魅せることができている。

思えば、自分の親が夢中になっているものはキラキラして見えたものだった。網を片手に父がオニヤンマを追っかければ昆虫好きになったし、ミニ四駆に夢中になれば父に負けまいと開発に熱中した。

この「大人も愉しい」仕掛けこそが、イスラエルの子供たちを育てている重要なエッセンスであるといえよう。


日本でも“イスラエル発”を取り入れる学校・塾も

日本においても、このコードモンキーを使って、イスラエル式のプログラミング教育に挑戦している自治体や塾がある。

まずは、愛知県豊橋市。市民全員が子供たちに指導できる“市民総メンター化”に向けて、ママや元校長先生などが子供たちにプログラミングが指導できるように活動した。

また、2017年12月には「イスラエル」と「豊橋市」をSkypeの生中継でつなぎ、同じ時間に同じ問題を解く、コードモンキー・プログラミングコンテストも開催。

子供たちに世界を見せる機会を創出した。日本チームはイスラエルチームに惨敗したが、これでママ達に火が付き、指導を継続しているそう。

私塾では、東京の「ArSchool(アルスクール)」が“本物のテクノロジーに触れてほしい”という思いから、コードモンキーから学習を開始し、その後のアプリ開発の礎にするという。

ArSchool(アルスクール) 授業の様子

講師の村野さんは 「コードモンキーとロボットのプログラミングの体験会を実施したが、コードモンキーの方が人気で休憩時間でも辞めないほど熱中する子もいる。恐らく、段階的にクリアできるゲーム構成が面白いのと、友達と競争心が煽られること、実際にコードを書くことでで期待していたプログラミング学習のイメージとあっていることが要因だ」と言い、イスラエル発の教育の深さに驚いていた。

さらには、小学校現場で情報とプログラミングを教えている塾長の山崎先生は「プログラミングを教えるには当然のことながら教師の高い技量と専門知識、そして適切な課題設定が必要となる。その点、コードモンキーはサポートが手厚く、学校へも導入がしやすいだろう」とし、教える先生にもメリットあると称賛していた。

日本は、周回遅れ…。

日本においては2020年に大きな変革がみえるものの、海外との動きを比べると、遅さに焦りばかりつのる。

もちろん公教育での指導導入が難しいことは想像つくが、とはいえこのままでは周回遅れになってしまう。

どうか「つべこべ言わず、やってみろ」精神で明日からできるものに挑戦していってほしい。

なおイスラエル女子部では、理系が活躍できる社会創出のためにイスラエル式「リケジョ活躍」プログラムを開発している。

どうか一人でも多くの日本人が、この現状の危なさに気が付きますように…。

イスラエル女子部 代表 三木ありさ
http://beastrongwoman.com/