ブロック塀の他にも危険は多数! 来たる首都直下地震の対策はできているのか

  • 首都直下地震では、自動販売機や窓ガラスが危険
  • 都心でも土砂崩れが起こる可能性が指摘されている
  • 相次ぐ道路の陥没対策に、目に見えなく対策予算つけづらいとの自治体も

届かなかった専門家の声

6月18日、大阪で震度6弱を観測した直下型地震。
小学校のブロック塀の下敷きとなり、9歳の女の子が死亡した。

このブロック塀は3年前、専門家により危険性が指摘されていたことがわかっている。

その危険性について小学校の校長は、「教育委員会に本当に大丈夫かと確認しました。大丈夫だったと市教委に言っていただいた」と会見で話し、教育委員会は簡単な検査をしただけで、『問題なし』と判断していたことが明らかになっている。

専門家の声は届かなかった。

都心で危険な自動販売機

今後30年以内に発生する確率が70%と予想される首都直下地震。
その被害想定は、死者2万3000人、家屋全壊は61万棟にのぼる。

来たるべき日に備え、首都直下地震が起きた場合、危険はどこに潜んでいるのかを、防災危機管理アドバイザーの山村武彦氏に検証してもらった。

やってきたのは、荒川区町屋。
ここは古い木造住宅が密集しており、家屋倒壊や火災の危険度が高い地域だ。

しかしその危険性より、まず山村氏が指摘したのは『自動販売機』だった。

「こういった自動販売機は大変倒れやすいです。商品が全部まんたんになると800キロを超える。これがバタンと倒れるとこの通学路は、大変危険になります」

次に問題を指摘したのは、小学校の校舎だ。
日本全国の校舎の耐震対策は、99%終わっているが、ひとつ盲点があると山村氏は注意を呼びかける。

「地震の時には、多くのガラスがはじけて飛ぶようにして落下します。下に子供たちがいると大変な被害が起きてしまいます」

防災安全ガラスでは、ガラスが飛び散らない

普通のガラスは衝撃に弱く、耐震対策には2枚の板ガラスの間に合成樹脂のフイルムをはさんだ、『防災安全ガラス』が有効だとされる。

しかし校舎の耐震対策が進んでいるのは建物の躯体だけで、防災安全ガラスの普及は1.7%に過ぎない。

荒川区に防災安全ガラスが使われているか、問い合わせたところ、「来年3月末までに対策予定」という回答だった。

都心で起こる土砂崩れ

次に山村氏がやってきたのは、港区赤坂。
赤“坂”という地名の通り、傾斜地が多い場所だ。

この傾斜地は都心にも数多くあり、それぞれに土砂崩れの危険があると言われている。
上の写真は、東京都作成の港区の土砂崩れ危険区域マップで、ピンク色で囲まれた土砂崩れ危険区域がご覧の通り数多くある。

この土砂崩れは、関東大震災でも多くの被害を出し、800人近い人が亡くなっているのだ。

山村氏は、首都直下地震でも土砂崩れを警戒する必要があると指摘する。

地震のたびに起きる『陥没』

さらに山村氏が気をつけなければならないと話すのが『陥没』だ。

今回の大阪の地震では、水道管が破裂して道路が陥没。

下の写真で見られたように、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震でも道路の陥没が起きた。

地震がきっかけではないが、2年前には、博多駅前で大規模な陥没が発生。

道路陥没が相次いだため、今、日本中で、探査が行われている。

左上:阪神淡路大震災 右上:東日本大震災 左下:熊本地震 右下:博多駅前の陥没

空洞探査の専門家、ジオ・サーチ株式会社の冨田洋社長に話を聞くと、「東京でも陥没が起きる可能性はかなり高いです。なぜなら、東京は我々の調査ではもっとも空洞が発生してるからです」と知られざる空洞の存在を語る。

スケルカ

ジオ・サーチは、地下の調査をするための専用車「スケルカ」を使って、電磁波を照射して、地下の様子を探っている。

電磁波による地下の探査記録だけでなく、道路周辺と路面の映像も同時に記録し、分析を進めているのだ。

熊本地震で実際に調査で分かった空洞

冨田社長らは熊本地震の直後、空洞調査を行った。

上の写真は、実際の現場の映像と地中の調査結果を組み合わせたもの。
この調査によって地下に空洞があることが分かり、病院の入り口のだったため、最優先で修復された。

地下の空洞はなぜできるのか

地下の空洞はどのようにしてできてしまうのだろうか?

「下水管が古くなって壊れたりしましたら、壊れたところから土砂が吸い出されます」と解説するのは、東京大学生産技術研究所の桑野玲子教授だ。

実験映像を見せてもらうと、土砂の下にある下水管に老朽化などによって空いた穴から、土砂が吸い出され、徐々に空洞が広がっていく。

さらにそこに、地震がおきると、振動により、空洞がさらに広がり崩落してしまった。

では、いったい東京都全体では、このような空洞は何か所あるのだろうか?

前述の富田社長は「500メートルに一か所、これが平均値です。500メートルに一か所だと東京都全体では一万か所になります」と推測する。

5年前の港区の探査では、東京タワーや新橋駅がある芝地区だけで37箇所の空洞が発見され、補修が進められている。

港区・新橋駅周辺の空洞

目に見えない空洞対策をどうするのか

見えない地下に潜む、危険な空洞。
しかし、その対策には大きな課題があるという。

前述の桑野教授は「きちんと調べて、データを把握したうえで、補修の仕方だとか、きちんと確立していくことが重要だ」と、未だ対策が確立されていない現状を憂いている。

東京都に、空洞のデータをどう把握しているのか問い合わせると「調査は行っているが、不安をまねく恐れがあるため公表はしていない」との答えだった。

財政が厳しい中で、目に見えない地下空洞対策に、予算をつけることが難しいという自治体の声がある。

しかし、ブロック塀が倒壊して少女が亡くなったように、死者が出てからでは遅いのではないだろうか。

番組キャスターのパトリック・ハーラン氏は「実際に地震が起きたときに、塀が崩れたり道路が陥没した場合に、撤去再建の費用だけでなく、交通マヒによる経済損失を考えると、今対策費をかけた方が圧倒的に安上がり」と指摘し、“先行投資”をいかにできるかが重要だと話した。


今後30年以内に来る可能性が高いと言われている首都直下地震を前に、見えない危険を後回しにしていいのだろうか?


(「報道プライムサンデー」6月24日放送分)

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