「ネットの信頼度」をどう上げる? パックンが考える『21世紀のメディア像』

メディアの未来を考える

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  • ネットメディアの一番の課題は「信頼性」。
  • テレビ局発のネットメディアなどがもっと頑張るべき。
  • 「テレビ局のブランド」より「個人のブランド」が強くなっている。

日曜朝の報道番組『報道プライムサンデー』にレギュラー出演しているパックンことパトリック・ハーランさん。普段はテレビだけでなく、ネット番組などでも活躍する。
それぞれの特性や、ユーザーがメディアとどう付き合うべきかについて話を聞いた。

フェイクニュースがやっていられない制度づくり

――パックンはテレビだけでなく、ネット番組にもよく出演しています。ネットメディアとテレビのそれぞれの特性の違いは何ですか?

ネットメディアの一番の課題は「信頼性」だと思います。取材にかけているお金もテレビとは違って少ない分、ある程度の無責任さをユーザーは感じ取れちゃうと思うんです。きのうおとといにできたようなサイトだと「その情報、大丈夫なのか」って、ボクみたいなユーザーは思ってしまいます。
 

――信頼度を高めるのは難しいですね。
 
オンラインメディアは僕も大好きだし、毎日お世話になっています。フェイクニュースの時代にユーザーひとりひとりが見分ける責任もあります。でも、オンラインメディアも自分の信頼度を高めて、フェイクニュースの排除に努めるべきだと思うんです。

「フジテレビの誰々が取材して報道している」という風に実名制で透明性をもって報道しているものと、ネットにぱっと出るような映像や文面とでは、やっぱり信頼度のギャップがあります。FNN.jpやAbemaなどのようにしっかりしたところは自分の信頼度を高めるだけではなく、フェイクニュースがやっていられないような制度づくりや環境づくりに努めてほしいです。
 

――ネットメディアはまだまだ一段下のステイタスで見られることがありますが、パックン自身がそれを感じることはありますか?
 
多少はあります。そのかわりに自由度が高いというのは、対価として大きいと思います。ちょっとランクが下がっても自由にできて、議論の幅がより広い。その交換条件はボクも納得しているから、別に文句はない。この先、広い議論、高い自由度を持ったまま信頼度を上げることはできるか、ステイタスを上げることはできるか、ここがFNN.jpやAbemaなどに願っているところではあります。

 
――FNN系列各局が一緒になって「FNN.jp」を作り上げたのも、全国的な信頼度を高めたいという狙いがあります。
 
素晴らしい。そういうのをやりつつも、ネットならではの自由な環境はできる限り失わないでほしい。もちろん、自由だからと言ってウソはついちゃいけない。信頼度はすごい大事ですから。

――信頼度が大事なのに、刺激的な「釣りタイトル」などはなくなりませんね。

英語でクリックベイトと言うんですよね。クリックのエサ。ああいうの、ダメですねぇ。タイトルが面白くて、ちょっと刺激的な画像がついていると、僕もクリックしちゃうんだけど。「あなたも10秒で泣く!」と言われると、「まじっすかー」とクリックしちゃうんだけど読んでも全然泣かない!
 

――対策はありえますか?
 
騙されたと思ったら、そのメディアのランクを下げるような評価指数がほしいですね。クリック一つでランクを下げることができるなら、ユーザーがもっと信頼できると思うんです。オンラインショッピングではアマゾンでも楽天でもそうですが、信頼度の高い売り手から買いたくなりますよね。なんでそういう評価が報道にもつかないのかなと思うんです。

政治的な目的でランクを下げたりする動作もありうるから、報道に関してはファクトチェック的な中立機関が必要なんですが。

騙されたらメディアのランクを下げる?

21世紀の日本のメディア像

――ユーザーはメディアにどう接するべきだと思いますか?

批判的思考をもって見るべきですね。本当にそうなのか、言われたとおりに信じる必要はない。自分の見解をまとめて、政府の見解とか、企業の目的とか、局の狙いとか、裏にあるそれぞれの立場とかを頭に入れつつ見て聞いてほしいなと思うんですね。偏らないで100%だけ真実を伝えるものは、僕のコメント以外ないですよ!
 

――というコメントも鵜呑みにしない(笑)

受け身になりすぎず、考える材料をメディアで提供しているつもりなので、それをもらって考えて、あとは議論してほしいなと思うんですね。「あれ見た?これ、一緒に考えよう」っていう風にバトンタッチしていく連鎖反応を起こしていくというのも僕らメディアが狙っている目的のひとつなんですね。
 

――日本では議論が少ないと言われますね。

コメンテーターがいつも「国民の議論が必要だ」とか言ったりするんですけど、だからと言って、そのあと居酒屋に飲みに行って議論しているとは思えないんですね。居酒屋に行っても、耳に入らないし、ボクが触れるまでは誰も触れないですね。せっかく興味を持ってテレビを見ているなら、同僚や友達とか家族と各自議論していただきたいなと思いたいですね。

――これまでは「フジテレビが言っている」「新聞が言っている」というメディアの力が強かったのが、オンラインメディアの台頭で「パックンが言っている」といった個人に焦点がより当たるようになった印象がありますがどう思いますか?
 
そうかもしれないですね。日本はまだまだですけど、アメリカでは例えばハフィントン・ポストのように、アリアナ・ハフィントンさんが政治思想に沿ってサイトを作り、反対側にマット・トラッジという人がやっているドラッジ・リポートがある。トークラジオで有名になって、FOXテレビでも看板番組を持っているショーン・ハニティとか、看板番組や看板サイトもすごく多いんですね。

おっしゃる通り、それが「局のブランド」よりも「個人のブランド」のインパクトが強くて、影響力が強い時代になっているんです。これは面白い現象だと思うんです。別に不健全だとは思わない。
 

――日本でも、その傾向はますます強まりそうですか?

それぞれの局にも、独自の味をそれぞれの見解を持った人がいていいと思うんです。今回、ボクが左なのにフジテレビのレギュラーになったのもすごい嬉しいことですし、フジテレビの中にいろんな意見や立場があって、フジテレビのレギュラーメンバー同士が議論を行なう番組などもできるようになればいいですね。それがもしかしたら21世紀の日本のメディア像にもなりえるかもしれない。

【プロフィール】
1970年 米コロラド州出身。お笑い芸人・東工大非常勤講師・ナレーターなど多彩な顔を持つ。2018年4月から『報道プライムサンデー』(フジテレビ系列・日曜朝7:30-8:25)にレギュラー出演中。スタジオ討論のファシリテーターとして番組を盛り上げる。2018年6月29日から、WASEDA NEO「動かす」ラボの講師として「ビジョンを示して人を動かすコツ」を伝授する。

「動かす」ラボ ~グローバルリーダーから学ぶプレゼン力~
講師:パトリック・ハーランさん(全5回)
https://wasedaneo.jp/waseda/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=124831