圧倒的かわいさの“タニシ”!?美しいパステルグリーンの殻に秘密

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  • 珍しいタニシが「かわい過ぎる!水まんじゅうみたい」と話題
  • 生物ライターに聞いた知られざる生態。赤ちゃんは黄色
  • 沖縄の森林にのみ生息。「準絶滅危惧」に指定も

梅雨の風物詩といえば、雨のしずくが紫陽花に落ち、その葉の上をカタツムリがゆっくり進んでいる…という情景を思い浮かべるだろう。

そんなカタツムリによく似た“かわい過ぎる”タニシがツイッター上で話題になっている。
まずはその姿を見てほしい…!





みんなが恋するタニシ

淡い黄緑色の殻から覗く、透き通るような体。飛び出しだ2本のツノの根元には、黒い眼のようなものが見える。
やさしい色合いが美しく、つぶらな瞳に庇護欲を掻き立てられる。

この生き物、名前を「アオミオカタニシ」という。
殻の大きさは、成体で1.5cmほど。体を伸ばしても、2cmくらいにしかならないのだという。
かつて、こんなにも愛らしいタニシを見たことがあるだろうか?

「なんですかこの可愛い生き物はァァァァ!!!!可愛すぎますね!!」
「なんてメルヘンな!」
「水まんじゅうに似てる」
「生まれて初めて、タニシにキュンとしてしまった…」


キュートな姿に心を奪われる人が続出し、2万以上のリツイート、8万5000以上の“いいね”が集まっている(6月27日現在)。

投稿者の平坂寛(@hirahiroro)さんは、「生きものを五感で知る」をモットーとする生物専門のフリーライター。
世界各地でさまざまな生物を捕獲し、コラムやルポを執筆しているが、これまでに出会った生物の中でもアオミオカタニシはお気に入りで、「顔も色もパーフェクトなかわいさ」とべた褒め。
反響を受けて、さまざまな角度から撮影したアオミオカタニシの画像を投稿している。

なぜこんなにも色鮮やかなのか? そもそも、カタツムリとタニシの違いはどこにあるのか?
いまだ謎に包まれた部分があるという生態と、「アオミオカタニシ」への思いを平坂さんに聞いた。

真横から見ても、文句なしにかわいい

タニシ類の特徴を持つ「広義のカタツムリ」

ーーカタツムリのように見えるが、「アオミオカタニシ」はカタツムリではない?

カタツムリだとも言えますし、カタツムリではないとも言えます。
そして、その他のいわゆる“普通のカタツムリ”と比べるとタニシに近縁ではありますが、厳密にはタニシではありません。

まずタニシというと、水田や沼に生息するあのコロンとした巻貝を思い浮かべるのではないでしょうか。ヒメタニシやオオタニシなどのタニシ科に属す貝ですね。
アオミオカタニシは名前に「タニシ」とついていますが、タニシ科ではなくヤマタニシ科という異なるグループに属します。
陸上で暮らす巻貝(以下陸貝)でありながら、「眼がツノ(触角)のつけ根にある」「触角は二本だけ」「貝殻の口にフタがある」といったタニシ類によく似た外見的特徴を持っているために、この名がついたのでしょう。

一般的なタニシ

「カタツムリ」という呼び名についてですが、これは分類学的な定義を含んだものではなく、ナメクジを除く陸貝の総称です。
小さな魚をひっくるめて「雑魚」と呼んだり、チョウやガの幼虫をまとめて「イモムシ」と呼ぶようなものですね。
アオミオカタニシは南西諸島の森林に暮らす陸貝なので、広義のカタツムリの一種と言っても差し支えないでしょう。

ーーどんな場所に生息?

以前は奄美諸島にもいたという話はありますが、現在は沖縄県の森林でのみ見ることができます。
薄暗く湿気のある林道などを歩いているとよく見かけます。木の葉の上や幹の表面にくっついていることが多いです。
クワズイモというサトイモの仲間の葉に乗っているところもよく見かけますね。

正面から。もう「かわいい」しか言えない

実は、殻自体の色は半透明

ーー名前の由来は?

漢字で書くと「青身陸田螺」となります。
彼らは緑色の貝殻を背負っているように見えますが、実際は殻自体は半透明で、透けて見えている中身が緑色なんです。
「陸上で生活する身の色が青いタニシ」という特徴をそのまま表した名前ですね。

ーーきれいな色をしている理由は?

アオミオカタニシが暮らしている森の中では、このような体色は木々や草の緑に紛れる保護色として機能していると考えられます。
単体で見ると鮮やかで綺麗な貝ですが、生息環境の中では外敵の目を欺くのに役立っているのでしょう。
彼らを観察しようと森に入っても、目が慣れるまでは葉っぱの一部や木の実と見間違えてしまい、見つけるのに苦労することもしばしばです。

体色は成長とともに変化します。小さいほど黄色味が強く、殻が1cmほどまでに成長する頃には、鮮やかかつ上品な若草色になります。
さらに成熟した個体では、殻が厚くなるためか、やや白みがかったマイルドな青緑色になり、また違った美しさを見せてくれます。

赤ちゃんは「黄色」が強い

ーーフンもカラフル?

フンは黒っぽい地味な色合いです。
普通のカタツムリはカボチャを食べると黄色、人参を食べるとオレンジ色といった具合に、食べたものの色によってフンの色が変わります。
しかし、アオミオカタニシは、樹皮や葉についているコケや菌類を食べていると言われており、フンのカラフルさに関しては期待できません。
その一点に関しては、アオミオカタニシの負けかもしれませんね。


ーー毒は持っていない?

試しに2匹ほど加熱調理して食べてみたことがありますが、特にお腹を壊したりといった症状は出ませんでした。
人間に健康被害をもたらすような強い毒は持っていないようです。
ただし、人間には無害であっても、小鳥や昆虫に有効な毒がないとまでは言い切れません。

また、毒ではありませんが、アオミオカタニシに限らず陸貝類には、人体に有害な寄生虫が宿っている可能性があります。
できるだけ素手では触らないようにして、触ってしまった場合は、よく手を洗いましょう。

こうして集めてみると、芽キャベツにも見える

“軟体動物界のアイドル”に絶滅の危機…

その外見から繊細な印象を受けるが、触ってみると「意外としっかりとした殻を持っていると感じる」という。
しかし、タニシや他のヤマタニシ科の陸貝と比べると「かなり薄く、軽く、脆い」そうで、平坂さんは、その理由を「木に登って生活するために、かなり軽量化されている」と分析する。

平坂さんがアオミオカタニシと初めて出会ったのは、大学1年生の頃。
沖縄県北部に広がる森林地帯(通称「山原」やんばる)を散策している時のことで、ヤンバルクイナを見つけた時よりも感激したという。
その魅力を「パステルグリーンの丸い体につぶらな瞳、アクセントに2本のツノ、しかも動きはのんびり。サイズも小さい。可愛くない要素がないですよね。
また、詳細な生態が不明なため長期間飼育することができず、ペットととして流通することもあまりありません。そういったミステリアスな部分も可愛さ、可憐さを引き立てているような気がします」と語る。


しかし、アオミオカタニシは、2017年に公表された環境省レッドリストで「準絶滅危惧」に指定されている。
最大の原因は、開発による森の減少。アオミオカタニシは樹木に依存した生態を持ち、移動能力に乏しいため、森林の伐採による影響をダイレクトに受けるのだ。
また、陸貝を食べる外来生物が大繁殖し、食害の影響も懸念されているという。

環境の変化による減少については、「負けないでいつまでもあの姿を見せてほしいです。僕も微力ながら沖縄の環境保全に尽力していきます」と話してくれた。


画像:平坂寛(@hirahiroro)さんツイッターより

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