アフリカ・セネガルのスタートアップに大注目! フランスIT展示会「VIVA TECHNOLOGY」リポート

  • 欧州最大級のコンベンション「VIVA TECHNOLOGY」
  • マクロン大統領が熱く語るスタートアップ戦略
  • フランスが注目する今後のアフリカ市場とは?

今年3年目 急激に注目が集まるコンベンション

今年3年目を迎える仏オープンイノベーションプログラムVIVA TECHNOLOGY。世界125カ国から来場者100,000 人、スタートアップ9,000社、投資家2,000人、スポンサー含め大手グローバル企業50社以上、ジャーナリスト2,000人が参加し、急激に注目が集まっているコンベンションだ。

主催は仏大手広告/PR代理店のピュブリシス(Publicis)とLVMHグループの仏経済誌レ・ゼコー(Les Echo)。今年は5月24日-26日の3日間、パリ南部のポルト・ド・ヴェルセイユのエキスポ会場で開催された。

今回、三日間参加したのだが、ビジネスデイである初日2日、ファミリーデイである最終日、全日満員御礼で賑わっているエキスポ会場に圧倒された。

大企業とスタートアップが通年かけて連携

開催一週間前にはFacebookマーク・ザッカーバーグやGoogle/Alphabetエリック・シュミットの登壇を発表、初日の基調講演にはフランスのマクロン大統領も登壇すると発表され、会場に入るまでも行列、会場に入ってからも行列の満員電車状態、VIVA TECHNOLOGYに参加する方々の熱量が伝わるオープニングだった。

もちろん、入場管理のおおざっぱさも影響してはいる、ともあれ海外カンファレンスに多く参加している立場から見て、VIVA TECHNOLOGYの会場熱気はダントツであると言って良いだろう。比較できるとしたらCESのスタートアップブースEureka Parkに入場する時の混雑、熱気も近いものがあったが、来場者待機数ではVIVA TECHNOLOGYの方が大幅に上回っている。

会場に入るとまず大きな「VIVAサイン」が出迎えてくれる。その後ろにはFacebook, Alibaba, Google, Orange, Airbus, L’Oreal, LVMH, La Posteなどのグローバル大企業がずらっとブースを構える。日本企業はSoftbankロボティクスが唯一目についた。

VIVA TECHNOLOGYコンベンションが面白いのは大企業が自社のソリューションを提供するだけではなく「自社の課題を解決してくれる」スタートアップ企業の展示もブース内で構えていることだ。

実はVIVA TECHNOLOGYは一過性のイベントではなく、通年かけて行われているもので、事前に大企業が自社の課題をウェブで公開し、その課題を解決してくれるスタートアップを募集する。審査を通り協業のシナジーが見えるスタートアップが晴れてVIVA TECHNOLOGY大企業ブースで出展できる仕組みになっている。この「通年かけて大企業とスタートアップが取り組んで来た結果を発表する場」を作っているのがVIVA TECHNOLOGYのユニークなポイントなのだ。

熱く語るマクロン大統領

また、ユニークな点としては、一国の大統領が時間を延長してまでステージで熱く語っていた点もあげられる。もしかしたらこれは日本だけの例かもしれないが官僚のスピーチといえば時間どおりに終わることが通常であると認識しているのだが、マクロン大統領は基調講演スタート時間を大幅に遅らせながらも各ブースを回って挨拶してから壇上に立ち、また、壇上に立ってからも急遽持ち時間を延長して熱い講演を行っていた。

マクロン仏大統領の講演時間延長の影響で、その後に控えていたセッションがいくつかキャンセルになるというハプニングも起きていたが、そのようなライブ感あるイベントなので参加している側もダイナミズムを感じる。

さて、そのように時間を延長してまでマクロン仏大統領が熱く語っていたことはなんなのか?

その内容には「人工知能の拠点としてのフランス」「アフリカのポテンシャル」「フランススタートアップがアメリカ、中国ではなくフランスを目指すべき理由」が含まれていた。

Facebook、Google、IBM、MicrosoftらグローバルITトップ企業は人工知能の研究所をフランスに構えている。マクロン仏大統領はこの動きを支援し加速させるために「France is an AI hub (フランスが世界の人工知能拠点である)」と基調講演で強調した。あらゆるサービス、プロダクトには人工知能が組み込まれるのが当たり前の時代の中心をフランスが担うという宣言をしたのである。

今回のVIVA TECHNOLOGY会場内の一角を占め大きな存在を示していたのがアフリカ諸国のブースだったのだが、その存在感を裏付けるようにマクロン大統領は「アフリカの課題を解決し、発展に寄与する」と演説をしていた。

仏銀行大手BNPパリバや、電力会社Engieなども自社ブース内でアフリカスタートアップの金融サービスや電力サービスを紹介し、広大なアフリカ市場を目指している姿勢を明らかにしていた。

フランスが注目する今後のアフリカ市場とは?

ではここで、実際に会場で印象的だったアフリカ関連のスタートアップやサービスを紹介したい。

次世代のVISA/MasterCardとなりうる存在のWARI

セネガルで2008年に創業し電話番号があれば送金が可能なサービスを展開するWARI はアフリカブースの中でも大きく存在感を示していた。アフリカおよび世界の152の銀行と500,000ものサービスと連携し、送金から保険、宝くじの購入から、学費の支払い、タクシー配車まで一つのプラットフォームで行えるサービスがアフリカおよび世界で生活者にモバイル時代もしくはデジタルトランスフォーメーションのインパクトを与えていることを改めて認識した。

必要な血液、薬はドローンで飛ばすzipline

シリコンバレーのスタートアップziplineは病院施設が足りないアフリカの医療現場への救世主として注目を浴びている。輸血などが必要な患者がいる現場にドローンで血液を送ることにより、大掛かりな設備(病院建設・病院内での血液管理冷蔵庫)を作ることなく、必要な人に必要な医療資材を届けられる。

ドローンには 大気の流れなども計算する人工知能が搭載され、風を読みながら配達できる 。アフリカでは病院など箱モノの建設よりも、必要な場所に必要物資が届けられるドローン空路が発達するかもしれない。

アメリカや中国ではなくフランスを目指すべき

マクロン大統領の演説ではスタートアップ企業がアメリカや中国を目指すのではなく、フランスを目指すべきだというメッセージも発せられた。

アメリカ政府のハイテク企業への規制やオンラインサービスの不正利用など十分な対策が取られてないことや、中国は魅力的な市場ではあるが中国政府は、プライバシー、人権、男女平等などはまだ未熟であることを批判していた。

フランスは既存ビジネスとスタートアップビジネスを共存させる新たなビジネスモデルを構築し、実践しておりイノベーションにとって最適な場所であるということもメッセージとして強く残った。

女性が多く参加していたのが印象的

VIVA TECHNOLOGYで印象に残った点といえば、女性も多く参加していたということだろう。CESやSXSWでは女性トイレは並ばないのだが、VIVA TECHNOLOGYは女性トイレに行列が出来ていて良い意味で違和感を感じた。

テクノロジー、イノベーション、スタートアップのイベントだが女性が多く参加している。もちろんLVMHのようなラグジュアリーブランドが出展しているというのも背景にあるのだろうが、アフリカの華やかな民族衣装を見に付けた女性が胸を張ってステージ上でスピーチしている姿に誇らしさも感じた。

大企業とスタートアップの融合、ヨーロッパとアフリカの融合、女性も当たり前のように活躍。今回のVIVA TECHNOLOGYでは、歴史的に他民族国家・文化を束ねてきたフランスの手腕を現在に垣間見ることが出来た。

日本としても真似できるところは積極的に取り入れていければと考えている。ただ単にVIVA TECHNOLOGYを輸入するだけではなく日本らしいイノベーション、スタートアップ支援、多様性あふれるプロジェクトを生み出し、世界が真似したくなるカンファレンスを生み出していきたい。

(取材・文 西村真里子(HEART CATCH))

ワールド・テック・リポートの他の記事