勤務中に弁当注文で神戸市職員が減給処分。「中抜け」はどこまで許されるのか?弁護士に聞いた

FNN.jp編集部
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  • 3分の「中抜け」を半年で26回した職員が懲戒処分となった
  • 弁護士「必ずしも重すぎる懲戒処分とは言えない」
  • トイレやタバコ休憩とは扱いが違う

3分の「中抜け」を半年で26回した職員を処分

神戸市水道局の男性職員が、去年9月から今年3月の間に、勤務時間中に近くにある飲食店に弁当の注文をするため、3分程度の「中抜け」を26回したとして、半日分の減給となった。 

職場を出て行く姿が所長の部屋の窓から見えたことで発覚し、きっかけについて男性職員は「気分転換のためだった」としているが、「混雑する前に注文しておきたかった」とも話しているという。

このニュースを受け、Twitter上では「3 分程度なら、トイレやタバコ休憩などと変わらない」などと男性職員に同情的な声もあがっている。

果たして、この処分は妥当なのか?また、勤務中の「中抜け」はどこまで許されるのか?
ALBA法律事務所の石鍋文人弁護士に聞いた。

必ずしも重すぎる懲戒処分とは言えない

――男性職員への減給処分は妥当なのでしょうか?

必ずしも重すぎる懲戒処分であるとは言えないと思います。

本件の男性職員は、神戸市との雇用関係に基づき職場内において業務に従事する義務を負っていたと考えられますので、これに反して「中抜け」(職場離脱)していることから、懲戒を基礎付ける事情(懲戒事由)が存するものと考えられます(地方公務員法29条 1 項)。

もっとも、職場離脱という懲戒事由に対して、どのような懲戒処分が相当かは悩ましいところです。
懲戒処分の相当性を考える上で参考になるのが、神戸市が規定する「懲戒処分の指針」ですが、その内容については、インターネット上では公表されていないようです。

なお、人事院が国家公務員向けのものとして規定している懲戒処分指針には「勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告(※)とする。」(同指針第2・1・(4))としています。

(※)減給:労務を提供させつつ、それに対応する賃金額から一定額を一方的に差し引く処分
(※)戒告:口頭又は文書(始末書)で反省を求め、将来に向けて戒める処分


神戸市は、本件の男性職員の職場離脱行為が、相当期間の間に繰り返されていたこと、その動機も正当化できるものではないこと、公務に与えた影響の程度等を考慮して、戒告より重い、減給の処分としたのだと思います。

ただし、民間企業の従業員よりも、公務員の方が「全体の奉仕者」(地方公務員法29条1項3 号)として厳しい服務規律を課されているため、厳しい懲戒処分が認められる傾向にあることから、そのまま民間企業の従業員についても同じ懲戒処分が許されるわけではない点には注意が必要です。

トイレ、タバコが許されて、弁当の注文が許されない理由

――「3 分程度」なら、トイレやタバコ、お茶休憩などと変わらない、という声がツイッター上で見受けられます。 「トイレやタバコ、お茶休憩」が許されて 、「弁当の注文」が許されない理由はどのようなことが考えられますか?

勤務時間中に、トイレに行くことやお茶休憩(水分補給)については、常識の範囲内の時間・回数の職場離脱であれば、生理現象ということで、同職場離脱は正当な動機による行為ものとして、当然に許されるものと考えます。

勤務時間中の喫煙については、色々な議論があるところですが、かつては各職場内において喫煙者が多数いたことから、各職場の管理者が、常識の範囲内の時間・回数での喫煙による職場離脱を事実上容認してきたという歴史的背景により、現在においても多くの職場において容認されているのだと考えます。

今後は、勤務時間中の喫煙を禁止し、休憩時間にのみ喫煙を許すという職場ルールの変更も直ちには違法とはいえないと考えます。

これに対して、「弁当の注文」のための職場離脱を職場管理者が容認する理由はありませんし、喫煙と異なり事実上容認されているとは考えられません。

勤務中の「中抜け」は上司の許可が必要

――勤務中の「中抜け」は、1日に何分まで許されるものなのでしょう?

各々の方が勤務している職場のルールがどのようになっているか(例えば、短時間の職場離脱を容認しているか等)によりますが、一般的な職場としては、以下のようになると思います。

職場内において業務をするように命じられている場合には、原則として職場の上司の管理・監督に従う義務がありますので、上記のような常識的に許されるトイレ休憩等を除いて、職場離脱に関しては時間の長短に関わらず、上司の許可が必要であると考えます。

緊急の際等には、やむを得ず職場を離脱せざる得ないこともあるかもしれませんが、原則として、その場合でも用件が終わり次第、適切な時期に、上司に報告する必要があると考えます。

勤務時間中における個人所有の携帯電話の使用等、勤務時間中における従業員の業務外行為をどの程度まで容認するかは、基本的に各会社の職場ごとに定めるべき事項であり、経営者が従業員の意向に配慮しつつ、規定することが必要である事項と考えます。



石鍋文人(いしなべ・ふみひと)
東京弁護士会所属 ALBA 法律事務所 弁護士
労働側・使用者側双方の立場において最善の解決を目指し労働問題の解決に注力している傍ら、スタ ートアップ企業に対して、広告やブランドに関する法的支援業務をなしている。