大雨の季節到来 “情報強者”は命を守る! ~見てすぐわかる「今後の雨」情報を一発入手~

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  • 出水期は台風・大雨・洪水・浸水害の危険期間
  • 大雨災害の危険を知る情報は見える化が進み、簡単に入手できる時代に 
  • 受け身だけでは生き残れない!逃げるタイミングを自ら確認することで命を守る

6月から10月の出水期は集中豪雨や台風の多い季節、大雨災害に要注意

6月から10月にかけては出水期と呼ばれ、停滞する梅雨前線は大雨を降らせ、日本に接近、上陸する台風によって大雨、洪水、暴風、高潮など多くの災害を引き起こす季節です。
近年の大雨は局所化、激甚化が著しく、短時間のうちに川の氾濫や土石流、がけ崩れ、地すべりなどを発生させます。
「線状降水帯」が集中豪雨をもたらした平成29年7月九州北部豪雨や、鬼怒川が決壊した平成27年9月の関東・東北豪雨、雨を含んだ土砂が多くの命を飲み込んだ平成26年8月20日の広島土砂災害など、しばしば想像を絶する自然災害が発生しています。

2017年7月 九州北部豪雨

もっと早いタイミングで豪雨になる時間帯が分かっていたら

広島の土砂災害では、記録的な集中豪雨が、午前1時半から午前4時の就寝している人が多く、また異変に気づいても真っ暗な時間帯だったことが避難のタイミングを逸し被害の拡大を招いた原因のひとつです。
平成28年台風10号に伴う激しい雨は岩手県岩泉町の高齢者グループホームで暮らす9人の命を奪いましたが、町から出された避難準備情報に職員らがうまく反応できず、高齢者など避難に時間を要し介助の必要な人の避難の難しさが改めて浮き彫りになりました。さらに普段の穏やかな流れからは想像もできない中小河川の急激な増水が追い打ちをかけたとみられます。
例えば暗くなる前に、次の日の早朝にどれくらいの大雨になりそうなのかわかったとしたら、例えば近所を流れる河川があふれる可能性が事前にわかっていたら、救えた命は少なくないはずです。

2016年8月 岩手・岩泉町

スパコン更新で15時間先の雨量分布を予報できるように

気象庁提供

気象庁は大雨がもたらす災害から早めに避難行動をとれるよう、6月に運用を開始した新しいスーパーコンピュータを利用して、今後の雨量の分布を予報する「降水短時間予報」を、これまでの6時間先から15時間先までに延長する改善を行いました。

15時間先までの雨量分布が分かるとどうなるのかー。

防災対応の観点からは、近づく台風や停滞前線により夜間から明け方にかけて大雨が予想される場合に、大雨となる時間帯や場所の見込みを前日夕方の時点で把握することが出来ます。
また、朝出かける前に夜までの雨の予報を確認する、夜寝る前に翌日午前中の雨の予報を確認するというような日常生活に役立てることもできます。

6月に更新された気象庁のスパコン

気象庁が発信する「今後の雨」ページで危険な雨を察知せよ

15時間先まで延長した新しい「降水短時間予報」は6月20日(水)11時から提供が開始され、スパコンの計算能力の向上の恩恵を受けた予報の改善のひとつとして大いに利用すべき情報です。
気象庁のホームページは、台風、大雨、地震、火山といった自然災害に関わる膨大な防災情報の宝庫であるにも関わらず、あまりにも情報量が多いため、逆に必要な情報にたどり着くのに苦労するという課題を抱えていました。
こうした声にこたえる形で、情報発信の仕方にも改革が進んでいます。
今回の「降水短時間予報」の時間延長に合わせ、難しい専門用語からより分かりやすい、一般の方にもなじみのある言葉で情報を受け取りやすい工夫がされています。
それがこれまでの「降水短時間予報」ページをリニューアルした「今後の雨」ページです。
パソコンやスマートフォンでアクセスし、確認したい地域を自由に拡大・縮小して確認できるようにするなど使い手の立場に立った改善が見られます。

気象庁提供

今後の雨の予想が15時間先まで確認できるため大雨になるタイミングを事前に知ることが出来るほか、実際に降りはじめてからは、土砂災害や浸水害、河川の氾濫による洪水の危険度を確認できる「危険度分布」のページへこのページから簡単に行き来でき、自らの身に迫る危険に関する最新情報を手に入れることが出来るのです。
テレビやラジオから流れる情報に加え、自分の生活する場所が今どのような状況にあるのか、例えば家の裏を流れる川はこのあと増水する危険性がどれくらいなのか確認することも可能なのです。
小さなお子さんや介助を必要とする方を抱える家庭や高齢者施設の職員などは、危険度分布を確認しながら早めの避難も可能になります。

この雨大丈夫?そんな時「危険度分布」のバナーも登場

気象庁提供

気象庁のホームページをより使いやすく、命を守る防災情報により簡単にアクセスできるよう取り組む気象防災情報調整室の高木康伸調査官は防災情報の提供について熱く語ります。
「災害が起きるかもしれない時に必要な情報になかなかたどり着けないのでは意味がありません。
避難情報を出す側の市町村長や防災担当者はもちろん、一般の方々が個々に迫る危険を正確かつ早めに察知出来たら、もっと被害は減るはずです。」

従来は雨量に基づいて発表するか判断してきた警報発表の基準や仕組みを平成29年7月に見直して、降った雨水が地表面や地中を通って川に集まるといった雨水の動きを模式化して、場所による地中への浸み込み方の違いなども考慮した雨量指数によって災害リスクの高まりを判断するよう大幅な改善を行いました。
土砂災害、浸水や洪水の危険度の高まりは地図上に5色に色分けし、目で見てすぐわかる「危険度分布」として情報発信しています。
この情報により早くたどり着けるようにと、新たなバナーは気象ホームページのトップの右側に、「火山登山者向けの情報提供ページ(御嶽山噴火を受けて改善)」のバナーと並んでわかりやすい場所に貼られています。
クリックすれば一目瞭然、「洪水警報の危険度分布」のページへとジャンプします。

気象庁提供

画面の地図を拡大していくと、中小河川を含む国内約20000の河川のすべてが表示され、川の色が危険度の高まりに応じて変わっていきます。平常時は水色ですが、洪水の危険度が高まっていくにつれ「注意」(黄色)→「警戒」(赤色)→「非常に危険」(うす紫色)→「極めて危険」(濃い紫色)の順に色が変化していきます。

何色になったら避難すべきなのかー。

お住まいの地域に大雨が降り続いている場合に、この「洪水警報の危険度分布」を確認して、「極めて危険」(濃い紫色)の危険度が出現した場合、すでに重大な洪水害が発生しているおそれがあります。この時点での避難開始は、かえって危険な場合が少なくありません。
高齢者等の方は遅くとも「警戒」(赤色)が出現した時点で、一般の方は遅くとも「非常に危険」(薄い紫色)が出現した時点で、自治体からの避難情報を確認しながら避難を開始することが重要となります。
まだ水色でも、近くを流れる河川よりも上流の河川の色を確認することが大切で、心の準備をしておくことがいざという時にあせらずに済むでしょう。
「注意」(黄色)になってからは予想以上に急激に増水する事例も多いことから、こまめに確認して備えてください。

「洪水警報の危険度分布」(洪水)のページには「今後の雨」ページからも簡単に切り替えができるようになっていて、あわせて1時間先までの降水域の予想が見られる「高解像度降水ナウキャスト」は(雨雲の動き)、土砂災害の危険度を色分けした 「土砂災害警戒判定メッシュ情報」は(土砂災害) 、浸水害の危険度を確認できる「大雨警報(浸水害)の危険度分布」は(浸水害)と非常に分かりやすい言葉に置き換えられていることにも情報発信側の受け手への配慮が見て取れます。

気象庁提供

取材を通して、気象庁は大雨をはじめ災害の被害を軽減するために、ひとりでも多くの人の命を守るために様々な情報を発信し続けていることがわかります。そしてより受け取りやすい情報を出そうとする動きが加速しています。
しかし、その情報を受け取るのは私たち自身であって、積極的に情報にアクセスする“情報強者”になることが激甚化する自然災害から身を守る大きな手段となることは間違いありません。
一方で避難の準備を含め、早めの避難行動の開始が必要な方々は、小さなお子さんだったり高齢であったり身体が不自由であったりと“情報弱者”になりがちであることも確かです。
テレビ、ラジオなど即時性の高い報道機関は災害時に正確な情報を発信し続けるのは責務と考えていますが、地域に密着したきめ細やかな情報発信は得意ではないのも確かです。
今いる地域で今ほしい情報。あらゆる人がそうした情報を得るためには周りのサポートがますます重要になってくるはずです。個人で、家族で、地域のコミュニティーで情報を共有し助け合って身を守ることが大切です。
年々規模や激しさを増しているように感じる大雨や台風が今年も増える季節を迎えています。
自然災害から大切な人の命を守るためには、報道や自治体からの情報に加え、迫りくる危険を知らせる気象情報を積極的に取りに行き活用することではないでしょうか。
災害に関する“情報強者”は、自分を守り人の命を救うのです。

(社会部気象庁担当 長坂哲夫)