クラスに2人は「発達障害」 大人になると二次障害も…!

渡邉千春
暮らし

  •  発達障害の原因は脳にあった
  •  遺伝は関係するのか
  • 二次障害にも注意!

「10人に1人」は本当か

もし、自分の子供が発達障害では…と感じたら、早く専門の医療機関を受診すべきです。
早期に療育(社会的に自立できるように取り組む治療と教育)を始めることで、日常生活の適応能力を高めることが可能だからです。
そして、療育訓練は早ければ早いほど良いと言われています。
ところが、現状では医療機関を受診するまでに、3カ月~10カ月以上も待たされることが多くなっています。
今回、大阪大など全国8大学の研究チームが、子どもの発達障害の可能性を2分程度で数値化する診断補助機器の開発を、企業と共同で進めていることがわかりました。
新たな機器によって、待機期間が短縮されることが期待されます。

「子供の10人に1人は発達障害」等と言われることもありますが、実際はどのくらいの割合なのでしょうか。
文部科学省が2012年に全国の公立小中学校で行った調査の結果では、「発達障害の可能性がある」児童生徒の割合は6.5%でした。
15人に約1人。クラスに2人程度は発達障害の傾向があるということになります。
ただし、この調査は通常学級に通う児童生徒だけを対象にしているため、特別支援学級などに通っている子どもを含めると、実際はもっと高い可能性があります。

原因は病気や育て方ではない!

発達障害の原因は何でしょうか。
まだ誤解されている部分もありますが、決してしつけ不足や愛情不足、育て方の問題ではありません。
発達障害のお子さんを抱える親御さんは、そうした偏見・誤解に苦しむことが未だ多いのです。
発達障害の原因は、先天的な脳の機能の障害です。
ですから、後天性は一切無く、また精神の病気でもありません。
通常は成長につれ、バランスよく発達する言葉や行動などが、発達障害の場合は、ある部分は遅れ、ある部分は突出するといったように、発達に凸凹があるのです。知能障害を伴う場合もあります。
また、病気ではないので、完全に症状をなくすことは出来ません。

多様な症状が合併することも

発達障害の症状は多様ですが、発達障がい者支援法により、以下の3種類に分類されています。

①自閉症スペクトラム
以前は、自閉症とアスペルガー症候群(言語発達に遅れがない自閉症)などは、症状に違いがあるとして、別の障害として考えられてきました。
それが2013年に、それぞれの症状は重なり合っているして、「自閉症スペクトラム(連続体)」という診断名に統合されました。 

対人交流や興味・行動において、以下のような特徴があります。
・話し言葉が遅れている
・言語による指示を理解できない
・たとえ話がわからない
・特定の手順を繰り返すことにこだわる
・興味をもった領域に関して膨大な知識を持つ…など


②学習障害(LD
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力に困難がある障害です。多くの場合、全てではなく、一部の能力だけに困難があります。


注意欠陥多動性障害(AD/HD
不注意(集中力がない・気が散りやすい)、多動性(じっとしていられない・落ち着きがない)、衝動性 (順番を待てない・考える前に実行してしまう)の3つの要素がみられる障害のことです。

そして、①②③それぞれの症状が重なり合っていることも多く、例えば自閉症スペクトラムの方がLDやAD/HDの症状を併せ持つケースも多くみられます。

遺伝は影響するのか?

発達障害の原因である脳の機能障害は、なぜ生じるんでしょうか? 
自閉症スペクトラムのきょうだいがいる場合、もう一人もそうである確率について、アメリカで研究が行われました。
その結果、一卵性双生児の場合は77%、二卵性は31%、通常のきょうだいは20%でした。
このことによって、遺伝が関係していることはわかりました。
同時に、遺伝子が同一であるはずの一卵性双生児の場合でも100%という結果ではなかったため、遺伝子以外の要素が絡んでいることも明確になりました。

まだ完全には解明されていませんが、現在では、何らかの遺伝要因に様々な環境的要因が複雑に重なり、脳機能の障害が発現するという説が有力とされています。
妊娠中に母親が抗てんかん薬「バルプロ酸ナトリウム」や、抗うつ薬を服用することで、赤ちゃんが自閉症スペクトラムで生まれるリスクが高まるという調査結果もあります。

男女のどちらに多い?

発達障害の発現率で、男女に違いはあるのでしょうか?
文部科学省の調査では、全ての発達障害での男女比は、2.4:1という結果でした。
世界的にも男の子の方が、女の子より多くなっています。
米疾病管理センターのデータでは、自閉症スペクトラムの男女比は5:1となっています。
なぜ男性に多く発現するのかは、まだよくわかっていません。

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大人の発達障害

社会人になれば、周囲と深くコミュニケーションを取らねばならない場面が多くなります。そのため、発達障害を持つ人が対人関係でつまづくことが多々あります。
たとえば、「この仕事、急ぎじゃないけど、やっといて」と言われた場合、通常なら、「とりわけ急ぐ必要はないが、常識的な期日までにはやっておいてね」と捉えますよね。
でも、発達障害を持つ人には、そうした『言外の意味』は理解できません。
「急ぎじゃない」という言葉だけをそのまま捉え、一向に手をつけません。もちろん、本人に悪意はありません
しかし、頼んだ人は当然ながら、呆れたり、怒ることになります。

さらに、以下のような症状・傾向が出てきます。

周囲とうまくコミュニケーション出来ない
その場の雰囲気が読めない
仕事や家事の段取りが悪い
衝動的に行動してしまう
時間や期限が守れない
約束や用事をよく忘れる

誰でも1度や2度はあることのように思えますが、発達障害の場合、こうした問題が頻発し、日常生活に支障が出てしまうことが多いのです。

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二次障害に注意!

このようなことが続くと、上司や周囲が激しく叱責することもあるでしょう。
何度注意されても修正出来ないことで気を病んでしまい、「自分は何をやっても駄目なんだ」と、うつ病、不安障害などを発症する可能性も少なくありません。
そうした、うつ病、不安障害などが発達障害の二次障害です。
二次障害への治療としては、薬物療法がよく行われます。発達障害がある場合の精神疾患は、少量の薬物でも効果があることが多くあります。
さらに、うつ病をきっかけに、様々な精神疾患…パニック障害・社会不安障害・統合失調症など…を合併し、悪化する場合もあります。
もし二次障害が出ているようなら、周囲が早めの受診を勧めて下さい。

大人になってから、初めて発達障害が判明するケースも増えています。
もし、社会生活の中で何らかの生きづらさを感じていたり、自分も周囲も困っているようであれば、大人になってからでも、専門機関に相談してみて下さい。

千春皮フ科クリニック
院長 渡邊千春(医学博士)