G7首脳 若者の声を「聞く」から「採用する」へ 元医学生キャスターが見た”サミット前哨戦”

カテゴリ:ワールド

  • サミット開幕前にカナダで開催された「Y7サミット」に日本代表として参加
  • 官僚さながらの扱い、名前でなく国名で呼ばれる緊張感で体が震えるほど
  • 世界各国のユニークな同志と深夜まで議論した末に・・・

「Y7サミット」の日本代表として

Y7サミット開会式

先進7カ国首脳会議(G7サミット)が8日、カナダ・ケベック州のシャルルボアで開幕する。
遡ること1か月半。私はカナダの首都・オタワに、僭越にも「日本代表」という肩書きを背負って降り立った。
4月14日から18日にかけて、G7各国代表の30歳以下のサミット、「Y7 (Youth 7)サミット」に参加するためだ。

G7サミットの開催に先立ち、先進7カ国+EU諸国から、30歳以下の若者が各国数名(今年は4人)ずつ集うこの会議。
ロシアのクリミア危機により、G8がG7になった2016年に始まったY7サミットは、今年で3度目の開催。
開会式ではカナダのトルドー首相が挨拶し、カナダの政治家たちとの交流の場も多く設けられた。

Y7サミットは、各国から選りすぐりの若者代表団が、G7首脳陣に政策提言をすることがゴールであるという点で、一般的な若者向け国際会議とは一線を画している。
今年からY7サミットの提言が、G7首脳陣によって討論されるだけでなく、G7の最終文書に必ず掲載されることになったので、参加者たちは責任重大だ。

バラエティとバイタリティに富む各国代表団

今年は、19歳から29歳まで、多彩なバックグラウンドを持った代表メンバーが各国から集った。
多いのが政府関係者で、例えばイギリス代表団は、経済産業省で国際貿易を担当するメンバーをはじめ、4人全員が政府機関の官僚だ。
他にも、建築士として歴史的建造物の修復をも手掛けるイタリア代表、上院議員の補佐をしながら作家としても活躍するアメリカ代表など各国、バラエティ・バイタリティ共に富んでいる。

一方、今年の日本代表団は偶然にも全員大学生。
Y7の派遣団体であるG7/G20 Youth Japanによって行われる選考試験は全て英語。
最終面接は、応募者一人に対して約10人の面接官が30分間、時事問題について自由に質問を浴びせるスタイルだった。

ユニークな日本代表メンバー4人

日本代表メンバー(左から筆者、Kentaro、Hannah、Fumika)

写真で右端に立つのはFumika。
2歳からアメリカ・オレゴン州で育ち、現在プリンストン大学教養学部1年次在籍中。英語はもちろんダイナミックなネイティブ。
反面、日本語を話した途端におしとやかで綺麗な敬語になるのは、アメリカで唯一触れていた日本語がNHKニュースの国際放送だったからだとか。趣味のバイオリンの腕前はプロ並み、オーケストラに所属し合宿や演奏活動で世界を飛び回る一面も。

 一方、お隣のHannahは見かけによらず、バリバリの関西弁を話す。
オーストラリア人の母とニュージーランド人の父を持ちながら、高校卒業までの18年間を大阪。私が大好きな東京グルメの話をするとすかさず、「大阪のStreet food、めっちゃ美味しーよ!」と応戦。現在はニューヨーク大学アブダビ校で環境学を学習中。

私の隣のKentaroは現役の東大法学部3年生で国際政治を専攻。
会議直前までパリ政治学院にいたかと思ったら、現在はイエール大学にて留学中。そのイエール大学、小学生の時に全国統一小学生テストの成績優秀者の副賞として訪れて以来10年ぶりというのだから驚きだ。

かく言う私は、東京都内大学の医学部に在籍。
大学4年時にアメリカでの5か月間の研究留学を経て、現在は大学病院で実習に励む毎日だ。将来医師として、医療政策分野や健康に関する情報発信・啓発に携わりたいという思いから、Y7サミットの直前にも、ニューヨーク国連本部での国際会議に参加してきた。

Y7で各国代表に求められたミッションの大きさは計り知れず、すぐにこのグローバルなバックグラウンドを持ったメンバーが選ばれた意味を身をもって実感することになった。

3課題について提言をまとめ首脳陣へ

今年のY7の議題は、「ジェンダー平等(Gender Equality)」「気候変動(Climate Change)」「未来の仕事と働き方(Future of Work)」だった。Y7全体として、最終的に議題ごとに4つずつ提言をまとめあげるのが今回のミッションだ。

私は「未来の仕事と働き方(Future of Work)」を担当。
Fumikaは「ジェンダー平等(Gender Equality)」、Hannahは「気候変動(Climate Change)」を担当。
Kentaroは日本代表団長として、他国の団長との会議に参加。

そこで各議題の提言をまとめ上げ、Y7全体の最終提言としてサミット最終日にG7首脳陣に引き渡すのだ。
国際会議のようなハイレベルな会議には、相手を打ち負かす「交渉会議」のイメージが付き物だが、Y7サミットの場合、それは「協働作業」だった。


まずは議題ごとに各々の国が関心のあるテーマをブレインストーミング形式でリストアップ。
そこから、実現可能性やコストパフォーマンスなど、様々な要素を加味して各々を議論の対象にするべきか皆で検証する。

あるテーマを議論のテーブルから除外しなければならない時には、多国間の提言に共通点を見出し、必ず全会一致で進行するのも、Y7サミットならではの文化だ。
自国の主張を最終提言に入れようと単に押し通すのではなく、Y7全体として、いかにベストな提言を編み出すかということに重きが置かれているのだ。

一方、会議では「国を代表している」という重みを幾度となく感じた。
会議中、私の前に置かれた札も「JAPAN」。私自身も名前ではなく「JAPAN」と呼ばれる。

議題ごとに分かれて会議をするので、各々の議論のテーブルにつくのは各国からたった一人ずつ。私の場合、まさに「未来の仕事と働き方(Future of Work)」に関する日本の若者の立場が私の肩にかかっているのだ。
自分のスタンスがぶれたり、知識不足を露呈したりしたら日本の若者の地位を失墜させてしまうのではないかという緊張感に身が震えるほどだった。

会議の合間には、カナダのトルドー首相夫人の講演や、厚労省や環境省といった政府関係の有識者との議論や会食、更には国会議事堂をはじめ政府機関の訪問の機会まで設けられていて、そうしたイベントからの情報も重要だ。
会期中は朝から深夜まで、まさに分刻みで動き回り、政府関係者さながらのスケジュールだった。

カナダのソフィー・トルドー首相夫人(中央)を囲んで

こうして、「未来の仕事と働き方(Future of Work)」チームでは、「国が個人の就労状況を把握・倒産時のサポート」「高齢者のスキルアップ」「基本的人権としての個人情報の保護」など4つの提言を決定。
その過程では、特に仕事におけるAIの導入を巡り、「AIは導入したい国が自由にすれば良いのに、なぜ国際会議でこんな話をするのかわからない」と開放的なアメリカ代表と「G7全体としてデータプライバシーが確約されないとAIは導入できない」と厳格なドイツ代表などの議論が白熱し、まさに“G7サミットの縮図”のような光景が繰り広げられた。

また、性別や社会的立場にかかわらず、国民一人ひとりが常により良い職場環境を求められるようなシステムを作るよう、G7各国政府に求める提言もなされた。

Y7サミットを乗り切って感じたこと

社会の重鎮や政治家たちだけが組織の方向性を決めるのではなく、柔軟性・情報への感度を備えた若者がハイレベルな議論の場に参加することはとても意義深いことだ。同世代の各国代表団を見ていて印象的だったのは、国際問題を「他人事」ではなく「自分事」として主体性を持って取り組む姿勢を全員が持っていたことだった。

G7という国際政治の中核をなす組織を動かすのだ、ひいては世界に変革をもたらすのだという当事者意識が、彼らを突き動かしていたのだ。

最終日のG7シェルパ会合 (左)Y7陣営(右)政府陣営

また、変革を起こす過程を積極的に社会に発信することも大切だ。
Y7サミットの会期中、会議の模様や代表団へのインタビュー映像は、専属のメディアプレスにより、一般人からのコメントもオープンに募る形で、InstagramやFacebookを始めとする公式SNSを通じてリアルタイムで配信されていた。

今回のY7サミットの提言は、G7の最終文書にも盛り込まれて、私たちが侃々諤々の議論を通じてまとめあげた文章が世界中に拡散する。
未来の作り手である若者たちの声が積極的に還元される社会。その第一歩がY7サミットだったのだ。

公式Instagramにアップされた「未来の仕事と働き方」についての提言

一方、声を上げるためには、このような舞台以前に、まず自分自身に相応の知識と発信力が必要だ。
カナダで出会った、まさに最前線で未来を担う同世代のメンバーたちに、将来また巡り合えるよう、私も一層精進しなければならないな、と身の引き締まる思いを強くした。

(執筆:谷本英理子 東京医科歯科大学医学部医学科6年在籍。将来、医療・健康の正確な情報発信を志し、大学病院での実習の傍ら、第32期BSフジ学生キャスターを務める。2018年度Y7サミット日本代表。2016年度準ミス日本。)