米朝首脳会談:トランプ大統領が“使いたくない”「最大限の圧力」を英国防相は軍艦の上で明言

能勢伸之
ワールド

  • トランプ大統領が使いたくない「最大限の圧力」
  • 日米韓防衛首脳会談声明に「最大級の圧力」なし
  • 英国防相は「最大限の圧力維持」明言

トランプ米大統領「最大限の圧力を使いたくない」

6月12日に予定されているシンガポールでの米朝首脳会談まで、一週間を切った。会談を前にして、関係国の言葉遣いにも微妙な部分が浮き出ている。

例えば、金正恩委員長の親書を携えた北朝鮮の金泳哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長とホワイトハウスで6月1日、会談したトランプ米大統領。6月12日の首脳会談の当事者だ。

金泳哲統一戦線部長(左)、トランプ大統領(右)

「6月12日は大きな取引になるだろう」
「6月12日に何かに署名することはない」
「我々は、プロセスを開始するのだ」
と述べた。

そして、金委員長は非核化を約束していると思うか、との質問に対しては「そう思う」と答え、北朝鮮に掛けている最大限の圧力については「今のままだろう」としつつ、「私は、もう最大限の圧力という言葉を使いたくない」と答えている。

小野寺防衛相「引き続き圧力維持」

これに対して小野寺防衛相は、6月2日からシンガポールで始まった、IISSアジア安全保障会議(通称、シャングリラ会議)で

「北朝鮮が現在、韓国、そして米国と平和のための対話を望む状況を作り出すに至ったのは、国際社会による最大限の圧力の結果です。今後も、全ての大量破壊兵器と全ての射程の弾道ミサイルのCVIDが完了するまで、防衛当局としても圧力を維持していくことが不可欠です」と述べ、北朝鮮に対する、これまでの「最大限の圧力」の意義を強調。

その上で小野寺防衛相は、先に上げたトランプ大統領の「最大限の圧力を使いたくない」という発言について、トランプ大統領が同時に「北朝鮮が非核化に応じない限り、制裁は解除しない」としており、引き続き圧力が維持されることは変わりないと考えていることも指摘し、北朝鮮への圧力という実態に変わりないことを強調した。

日米韓防衛相共同声明に「最大限の圧力」盛られず

だが、6月3日に行われた日米韓防衛相会談で作成された共同声明では

「3か国の閣僚は、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法による朝鮮半島における非核化のために行われている外交努力を引き続き支援することで一致した。3か国の閣僚は、関連する全ての国際連合安全保障理事会決議の履行を継続することで一致した。

また、3か国の閣僚は、違法な“瀬取り”といった不法な活動を抑止し、中断させ、そして根本的には排除するための継続した国際的な協力を歓迎した」
という言葉が並んだが、“最大限の圧力”という言葉はなかった。

北朝鮮・朝鮮中央通信「日本の哀願、孤独な曲調」

こうした状況を指してか、北朝鮮の朝鮮中央通信は、6月4日付の記事で、
「首相安倍と外相河野をはじめ政客らが、われわれに対する『最大圧迫共助』の哀願訪問で東奔西走している。
中東であれ欧州であれ米州であれ、圧迫の度合いを強めるべきだ、拉致問題解決、という紋切り型の意地悪い言葉だけである。
しかし、大勢に似合わない日本の孤独な曲調はか細い残響さえ残せずにいる」と論評した。

文中の「最大圧迫」というのは「最大限の圧力」ということだろう。
つまり、「最大限の圧力」などと言って回っている日本は孤立している、と言いたいようだ。

英ウィリアム国防相「北朝鮮への最大限の圧力維持」“瀬取り”監視参加艦上で

だが、日本の外交は孤立しているのだろうか。
日米豪防衛相会談が行われた6月3日、シンガポールのシャングリラ会議に出席していた英国のウィリアムソン国防相は、「我々は、北朝鮮への最大限の圧力を維持し、我々がとても大切にしている民主的自由を守るという決心を怠りはしない」と述べた。

トランプ大統領が使いたくない、と言った「最大限の圧力」という言葉を堂々と使用している。
しかも、この発言をした場所が興味深い。シンガポールに入港した英海軍フリゲート・サザーランドの甲板の上だったのだ。

英海軍フリゲート・サザーランド@シンガポール

サザーランドは、いわゆる“瀬取り”監視に参加するため、4月に横須賀に入港していた軍艦であり、その後、「英海軍の艦艇 による 東シナ海での 情報収集も行 われています」(小野寺防衛相・ 6月2日)と指摘された軍艦である。

「最大限の圧力」という言葉を使うのに、“最も適した場所”と、英国防相は判断したのだろうか。

英国は、国連常任理事国で、拒否権を持つP-5=常任理事国の一国であり、戦略核兵器保有国でもある。英海軍のヴァンガード級ミサイル原潜は射程1万2000㎞とも言われるトライデントIID5戦略核弾道ミサイルを搭載している。

ウィリアムソン英国防相の言葉の重みは、北朝鮮当局に、どのように伝わっているのだろうか。

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