5G,8K,AI...中国・韓国の情報通信大臣が東京で“食いついた”日本の技術とは?

高島英弥
カテゴリ:国内

  • 長い断絶を乗り越え久しぶりに日本で開催された情報通信大臣会合
  • サイバー対策の手の内を明かさない韓国と、運用の実態が不透明な中国
  • 日本は情報通信のインフラ産業より、“おもてなし”に勝機あり?

14年“ぶり”に日本で開催

“ぶりの大安売り”とはこのことか。

5月27と28日の2日間にわたって都内で行われた日中韓の情報通信大臣会合。
2006年にスタートし、当初年1回ペースで開かれていた3か国の枠組みだったが、2018年の今回がわずかに6回目の開催となる。

この間の日中・日韓関係の険悪化や、政権交代による混乱などが影響したものとみられるが、会合としては2011年以来「7年ぶり」、閣僚が顔を揃えたのは2006年以来「12年ぶり」、そして日本での開催は2004年以来実に「14年ぶり」となった。

初日に行われた中韓それぞれとの2国間会談で、議長役となる野田聖子総務相はこの長きにわたる断絶に触れ、さらにこの間に大きく変わったICT環境を語り、閣僚レベルでの協議の重要性を強調した。
そう、2006年には、まだiPhoneの初号機も発売されていなかったのだ。

情報・技術に“一家言”ある3閣僚 共に企業出身

今回の会合で興味深かったのは、3閣僚がそれぞれ企業出身だったということ。野田大臣はホテル勤務からそれでも若くして政界入りしたが、中国の苗圩(びょう・う)工業情報化部長は自動車会社のセールス部門から生産管理部門を経験。韓国の兪英民(ユ・ヨンミン)科学技術情報通信部長官もLGグループのコンピュータ部門出身で、両大臣とも政治家としてのキャリアより企業人時代の方が長い。

それぞれ情報・技術についての自分なりの識見を持ち合わせているように見受けられた。

サイバー対策の手の内を明かさない韓国

その丁々発止の駆け引きは、3者が順番に発言する“段取り感”の強い全体会合よりも、2国間会談でこそ発揮されていたようだ。事務方はあらかじめ想定されるテーマを用意するが、通訳でのロスタイムも含め限られた時間で何を取り上げるかは大臣の「アドリブ力」が問われる形となる。

日中会談では、野田総務相が、昨年施行された中国のサイバーセキュリティ法について取り上げた。
中国側の運用の実態が不透明で、保護主義的な情報遮断につながりかねないとの指摘もあるものだ。中国側は釈明に追われ、「これからもオープンにいろんな意見を聞きたい。交流を進めましょう」と引き取った。

韓国(ピョンチャン・冬季)~日本(東京)~中国(北京・冬季)の順に五輪を開催する形となる3か国にとって、その際のサイバーセキュリティは大きな懸案だ。

日韓会談では、野田大臣が、今年のピョンチャン五輪での“防衛ノウハウ”を韓国側に質した。しかし兪長官は持論の情報通信政策「アイ・コリア4.0構想」を延々と披露する一方で、サイバー対策の質問はスルー。
かろうじて会話が成立したのは「サイバー対策の人材育成の必要性」についての共有のみ。
もともと「韓国側はサイバー対策の手の内を明かすことはないだろう」との見方が日本政府内でも強かったが、案の定そのしたたかさを見せつける形となった。

音声翻訳装置「ボイストラ」に“食いついた”!

2日目の午後。
一連の公式会談を終えた3閣僚が導かれたのは、全体会合の会場の3倍はあろうかという大広間。政府の情報通信関係者に加え、3か国の民間企業も交えての昼食会兼情報交換会の会場だった。

食後には各国企業からの技術発表会も予定されており、昼食会場にはその3つのテーマ「5G」「8K」「AI/IoT」について、日本側が用意した最新技術のデモンストレーションが並んでいた。

そこに入ってきた3か国の情報通信相。
展示技術については当然知っている野田総務相は、国会日程が迫っていることもあり、中韓の両閣僚を急かすように程よい距離で先導する。

VoiceTra HPより

展示コーナーに興味を示しながらも、野田大臣の勢いに引っ張られて歩き過ぎようとした2人がついに立ち止まったブースがあった。
「AI/IoT」のテーマで展示されていた音声翻訳装置アプリ「ボイストラ」の実演装置だ。

中国の苗部長が、説明員に促されるままに発声し、日・韓両国語への翻訳が大型モニターに表示されるのをニコニコと待つ。
「こんにちは」「ここはどこですか」といったえらく簡単なワードしか発しないのはどうよ、とも思わせたが、苗部長は、日本政府の随員が必死で食卓への移動を促す中、なかなか動こうとしない。韓国の兪長官も「これこれ。ピョンチャンの五輪会場で結構多く使われていましたね」と説明員に話しかけるなど、興味津々のようだった。

日本はヒューマン・インターフェースで勝機を?

思えば、「5G」「8K」といったビッグビジネスにつながる鉱脈では、中韓両国ともかなり坑道を掘り進めているようだ。8Kに至っては日本ではメーカーとして現状シャープが独走する展開だが、それとて純粋国内資本企業でないからこそ踏み切れている決断かもしれない。

「情報通信のインフラ産業ではもはや独り勝ちは望めないのだから、日本はヒューマン・インターフェース(≒“おもてなし”)にこそ勝機・商機を見出すべき」との議論は、対米比較のコンテクストで聞くことが多かったが、対アジア比較でもそういうことになりつつある証左だろうか。
それとも、中国・韓国の2人のおじさんの単なる気まぐれにすぎなかったのか。

「ブレイクスルー感」と同時に「もやもや感」も残る、複雑な味わいの日中韓3か国“ぶりの祭典”だった。


(執筆:フジテレビ報道局 高島英弥)

なんでもAIの他の記事