【副業儲かってますか?】 本業は人事部!メールソフトの“使い方で時短”講座

カテゴリ:国内

  • 朝と夜に「Outlook」の使い方講座を開催 マウスを使わずに時短できる
  • 「10個のショートカットを覚えるだけ」で同僚より早く帰れる!?
  • 社内の生産性向上のため必要性を痛感。2年かけて独学で体系化

朝と夜の副業

「本業で身に付けたスキルを社外で試してみたい」
副業の波が広がるなか、報酬を目的とせず、このような思いから新しい働き方を実践する人がいる。

大手飲料メーカーの人事部で生産性向上などを担当し、残業の改善や規則の見直しを行っている林新一さん(仮名・29歳)は、メールソフト「Outlook」の使い方講座の人気講師だ。

Webデザインや料理、語学など、あらゆるジャンルでの知識・スキルを持つ人と教わりたい人とをつなぐサービス「ストアカ」を活用し、今年2月から週に2回ほど講座を開催している森さんの1週間のスケジュールを教えてもらうと、出社前の朝と退社後の夜に副業をしていることがわかった。

6時30分に起床して本業のメールチェックを終えると、7時30分~8時30分に「朝活」と呼ぶ個別講座を職場近くのコワーキングカフェで開催。
参加者に業務内容と使用ツールのヒアリングを行い、それぞれに適した20のショートカットキーを厳選、レクチャーする。
そして、本業を18時に退社すると、今度は19時30分~21時開催の「夜活」Outlook講座に向かう。

開催曜日は週によって異なり、2週間ごとに更新されるというが、月収は約4万円ほど。


なぜ副業に取り組むのか? 多くのリピーターがいるというがどんな講座なのか?
その理由を知るため、林さんが教えるOutlook講座を取材した。

“脱マウス”でプラス1時間を創出できる

アルコールも揃っている自由な雰囲気のコワーキングカフェの中央テーブルで待っていると、続々と参加者たちが現れた。
この日の参加者は4人。企画部でデスクワークが中心だという40代の女性は、朝開催のショートカットキー講座も受講したことがあるという。
ほかの3人は20~30代の男性で、職業はSE、営業とさまざまだ。

自己紹介を終えた林さんが切り出したのは、「Outlookにかけている時間を20%削減する」という講座の目標。そのために必要なのが、次の2点だという。

・厳選した10のショートカットキーを覚える
・メール整理の方法を知る

まず、参加者全員の現在のスキルレベルを共有した後、林さんが調査した社内データが発表された。
総PC操作時間においてOutlookが占める割合は月間35.4%にもなるという。このメールにかかる時間を20%削減できれば、1日を30分~1時間長く使う事が可能になるというのだ。


【10大ショートカット】

「マウスへの過剰依存はムダ」だという林さんは、キーボードのイラストにショートカットが書き込まれたマニュアル表を自作。
星印がついたショートカット10個を覚えることで、キーボードとマウスという2つの動作への移動時間をなくし、作業効率につながるという。

マウスを使わず、右手のホームポジションは、矢印キーの場所。
さっそく10大ショートカットのレクチャーへ。

1. 「Esc」:作成したメールが不要になった際、右上の「バツ」マークをクリックして閉じない。
Escを押して、矢印キーで「変更保存」の「いいえ」を選択し、Enterでメールを閉じることができる。

2. 「Ctrl+1」:メール画面を開く。「Ctrl+2」:予定表を開く。

など、詳しくは割愛するが、マウスを使わずに10大ショートカットで、メールの作成や送信が簡単にできる方法を教えていく林さん。

そしてショートカットの使い方を覚えた後は実践編。
60秒の制限時間内で、「自分宛に3つのメールを送信せよ」というミッションに取り組む。

「マウスは上下を逆さに置いて、使わないでくださいね」という林さんの掛け声でスタート!
参加者たちは、時々「う~ん」と唸りながら作業する人もいれば、サクサク進める人も。

林さんはテーブルの周りを歩きながら、それぞれの理解度やスピードを見ていた。
「大丈夫ですか?この次はどのキーを押すんでしたっけ?」「覚えが早い!私よりも上達しそうですね」などと声をかけながら、丁寧に解説していく。

【メール整理の方法を知る】

続いては、メール整理の方法の解説。

毎日何件も届く仕事のメール。
相手によってフォルダに振り分け、未対応の案件は未読に戻したり、フラグなどの印をつけたりと工夫している人も多いだろう。
しかしこれでは、メールの処理に時間がかかって仕方ない。

そこで林さんが提案するのは、メールのフォルダ分けや再読といった「整理したい病」からの卒業だ。
受信トレイでもごみ箱でもない「アーカイブ」を作成し、保管庫として活用するという。

他にも、誤送信を防ぐため、メールの送信ボタンを押してから1分後に送信される設定や、会議室の予約状況を一覧で表示する「OFT形式」など、初心者には難しいが、もっと知りたくなるアイディアが満載の講座だった。


「ショートカットキー+Outlook研究家」という肩書で活動する林さん。そのスキルはどのようにして培われ、副業につながったのだろうか、聞いてみた。

社内のワークショップで必要性を痛感し独学

ーー「Outlook講師」という副業をはじめたきっかけは?

1年ほど前に、人事部の事業として、社内ワークショップを立ち上げました。
SNS上で各々のスキルを公開し、興味のあるワークショップに参加するというもので、社内版「ストアカ」のようなイメージです。

そこで、人事部の私が先陣を切るべく、パソコンスキルのワークショップを開くことになりました。
当日、何気なく出した「Excelで掛け算の”九九表”を作成せよ!」という課題で、大きな気づきを得ることができたんです。
30秒でできる人もいれば、5分以上かかってしまう人もいて…同じチーム内でも、時間生産性に10倍の差がありました。
しかも、この場で本人は初めてスキルの差を自覚していました。

それまでは、スキルの大差はないと思い込み、残業時間の改善や規制に意識して働いていたのですが、この差を目の当たりにしたときに、生産性向上を担当する者として、社員一人ひとりのパソコンスキルを見つめ直す必要性を痛感しました。

社員の就業時間の内訳について調査・分析すると、大半を取られているパソコン作業の中でも、Outlookに費やしている時間が圧倒的に多いことが分かりました。
そこで、自分自身がまずOutlook全般やショートカットキーについて学び直し、講師となって社内にシェアする場を設けることに。
すると20%もの削減効果を得られ、「社外にもシェアすべきではないか」という思いが芽生え、社外でも自分が役に立つのかを試してみたいという気持ちもあり、講座を開設しました。

――林さん自身は、どのようにスキルを身に付けた?

独学で2年かけて勉強しました。
実は、Outlookに関する教本というものは日本では出版されていなくて、ネットで検索しても、なかなかまとまった情報は見つけられません。
マイクロソフト社にも問い合わせたのですが、「便利な操作法はQ&Aなどに点在しているが、体系化した手引書は存在しない」ということでした。

それならば、自分で探ろうと。
どのキーを組み合わせるとどんなアクションが起きるのか、Shift、Ctrl、Altキーを押しながらキーボードの左上から右下まで、ひとつずつ順番にタッチしていきました。
自ら研究していく中で得た時短に大きく繋がるテクニックを体系化し、ショートカットのMAP学習法にまとめ、皆さんにお伝えしています。


ーー講座では「初級~超上級まで対応」しているとのことですが、それぞれの基準は?

ショートカット活用数が2個で超初級、3~5個で初級、5~30個で中級、それ以上が上級のイメージをもっています。
Outlookについては、現在は日本人全員が初級だと思っていますが、マウスを使わずキーボードですべて操作できていれば中級です。


ーー講座で一番反響が大きいのはどのスキル?

ほとんどの人に「Outlook操作を時短する」という発想がなかったり、できないと思っているので、Outlookのショートカット全般は非常に喜ばれます。
10のショートカットの中で使用率が高いのは、6番目に挙げた「Ctrl+R=メール返信」です。メールの基本的な動作は、やはり届いたものに返事をすることですから。
講座中に「マウスを使わないで『Esc=閉じる・クリア』!」と何度も言いましたが、これもぜひ覚えていただきたいショートカットキーです。

「自分のために時間を使う社会を実現したい」

参加者は男性6:女性4の割合、20代~40代が中心で、これまでに朝・夜の講座あわせて71人に時短テクニックを伝え、参加者の満足度を示す評価では、ほぼ満点を獲得している林さん。
ショートカットを教えている時も、参加者ごとに異なるPCの種類に応じて、適切なアドバイスをする姿が印象的だった。

ーー人に教える上で大切にしていることは?

「座標」つまり現在のレベルの自認です。
講座の最初に、みなさんがどこまでショートカットキーを知っているか簡単なテストをしました。
これによって自らと向き合い、参加者同士で比較することができ、向上心につながります。


ーー「教える」ことの魅力・苦労することは?

参加者の方から「林さんのおかげで、会社に行って実践するのが楽しみになってきた!」という言葉をかけていただけることは、この上ない喜びです。
苦労という点では、個の前提やニーズが違うので、それを汲み取ることが難しいです。


ーー今後の目標は?

もっと多くの人が自分のために時間を費やせる社会を実現できるように、Outlookに関するノウハウをまとめた本を出版することです。
スキルは十分蓄積されたので、今年中にも書店にならぶことを目指しています。その本を通じて、業務の効率化について日本社会に課題提起をしていきたいです。

メールの使用状況を改善すれば、1人あたり年間100時間創出できると考えています。
誰かの課題解決をすることが私にとっての幸せなので、自分が持っている力と時間を使って、これからも前進していくつもりです。
そのために、まずは自社にもっと大きなうねりを起こします!


副業で、ビジネスマンのPCスキルの格差をなくし、業務効率化の手助けをしている林さん。
その活動は、報酬目的というより、会社の垣根を越えた「就業時間あたりの生産性を向上させ、残業の削減に貢献する」という人事の仕事のようだった。

副業儲かってますか?の他の記事