与野党が「意味なし」と断じた党首討論は、本当に「意味なし」なのか?絶望から脱する改革案は! 

カテゴリ:国内

  • 安倍×枝野の討論に双方から「意味なし」の声 
  • 安倍首相が玉木氏に求めた握手の真相判明 
  • 党首討論の形骸化を防ぐ一手は 

「意味がなかった」党首討論


5月30日、およそ1年半ぶりに開催された国会での党首討論。安倍首相と、立憲民主党の枝野代表、国民民主党の玉木共同代表、共産党の志位委員長、日本維新の会の片山共同代表が論戦を交わした。

この討論に先立つ昼の「プライムニュースデイズ」の放送の中で私たちは、「今日の党首討論は、安倍首相の答弁姿勢だけでなく野党の追及能力も問われ、論戦が低調に終われば、党首討論の形骸化に拍車がかかる恐れもある」と伝えた。

では、その結果はどうだっただろう。

枝野代表「意味のないことをだらだら話す総理を相手に今の党首討論の制度はほとんど歴史的意味を終えたことがはっきりした」

自民党ベテラン「野党が全然大したことなかった。森友、加計なんて予算委員会でさんざんやっている話をしてどうするのか。全然意味なかった」

与野党双方から「意味がなかった」という言葉が出る散々なもので、事前の恐れが的中してしまった形だ。

一体なぜこんなことになってしまったのだろう。その理由は複数指摘されている。


安倍首相と野党党首の発言時間の割合


まず、安倍首相と各野党党首の発言時間の割合を見てみたい。

▼立憲民主・枝野代表(持ち時間19分)質疑3往復  
枝野氏36%(6分34秒)安倍首相64%(11分46秒)

▼国民民主・玉木共同代表(持ち時間15分)質疑3往復半 
玉木氏65%(9分5秒) 安倍首相35%(4分56秒) 

▼共産・志位委員長(持ち時間6分)質疑2往復半 
志位氏72%(4分24秒) 安倍首相28%(1分43秒) 

▼維新・片山共同代表(持ち時間5分)質疑1往復半 
片山氏82%(4分40秒) 安倍首相18%(1分3秒) 


こう見ると、枝野代表の質問での安倍首相の発言時間の割合が図抜けて大きい、つまり安倍首相の発言が長かったことがわかる。枝野代表の質問テーマは森友・加計問題だけだった。 


枝野氏の批判「こんな卑怯な総理でいいのか」


枝野代表は討論終了後、次のように皮肉交じりに安倍首相を批判している。

「いかに無意味なことをだらだらと長時間話すことで、追及から逃げているかという卑怯な姿勢だ。聞かれたことに答えずに、余計なことをベラベラしゃべって質問の機会を妨害するというこんな卑怯な総理でいいのかということが争点だ。一国の総理大臣として情けない姿だが、結果的に私の目的は達することができた」

枝野代表としては、安倍首相が森友・加計問題については、質問にストレートに答えず、時間をかけて答えてくるのは想定内であり、その様を国民に伝えたかったということなのだろう。

実際、討論に先立って、官邸関係者は「挑発にのらないことだ。これまで通りの答弁をすればいい話だ」と語っていた。

枝野代表の挑発的な質問に乗らず、これまで国会で繰り返してきた見解を改めて述べるのは、安倍首相の作戦通りだったということになる。それだけ、森友・加計のことを根掘り葉掘り聞かれるのを避けたかったことの裏返しかもしれないが。


安倍首相・自民党側の枝野氏批判「同じ質問は意味がない」


一方、政府与党からは、森友・加計問題はこれまでさんざん質疑されているにも関わらず、党首討論の場でもこの問題だけを質問した枝野代表を批判し、安倍首相を擁護する声が大きい。

討論を「意味がない」と振り返った先述の自民党ベテラン議員は、うんざりして途中で見るのをやめたといい、自民党の岸田政調会長は、枝野氏の質問を次のように批判している。

「森友加計問題ではいままでの質問の繰り返しの域を超えていなかった。質問が同じだから同じ答えを行う。これは当然のことだと思う。」

確かに森友・加計問題は予算委員会などで多岐にわたって質疑が行われていて、党首討論の時点でまったく新しい角度の質問をするのは難しかっただろう。

枝野代表も聞き方は変えたのかもしれないが、政府与党からすれば、これまでの答弁をすることで、追及をかわせる範囲内の質問だったことになる。

 

安倍首相が玉木氏に求めた握手の真相


今回の党首討論で、注目すべき光景があった。終了直後、安倍首相が国民民主党の玉木共同代表に歩み寄って握手し、語りかけたのだ。

「骨太の議論」をしたいと討論に臨んだ玉木氏は、持ち時間15分をトランプ米大統領の貿易に関する発言への対応と、北方領土問題を含む日露関係にあて、森友・加計学園問題は聞かなかった。玉木氏の質問に対し安倍首相は、枝野氏への答えに比べてコンパクトに答弁し、比較的かみあった議論となった。安倍首相周辺からも「玉木が新鮮に見えたねぇ」という声が聞かれた。

国会ではもっと政策の議論をすべきだと主張している安倍首相サイドとしては、森友・加計問題ではなく外交について質問した玉木氏の姿勢を歓迎し、それが握手にも表れたとみられる。

そしてこの握手の際に安倍首相が語りかけた内容が関係者への取材でわかった。

実は討論の中で、玉木氏が日露首脳会談で北方領土問題について進展がなかったと指摘した際、安倍首相は交渉の中身や戦略はオープンにできないとかわす場面があった。

そこで安倍首相は終了後に玉木氏に歩み寄り、握手に続いて、“首脳会談ではこういう厳しい交渉だったんだ”と領土返還に向けたプーチン大統領との交渉内容を一定程度伝えたのだという。

玉木氏の質問については、国民からの評価の声が本人のもとに多く届いているという。

ただ、首相周辺からも「政策論をやるのは良いが、付け焼き刃感があったからダメだ」「あんなの政策議論じゃない」といった苦言も出ているほか、安倍政権に批判的な勢力の一部からは、森友・加計問題を追及しなかったことや、握手のイメージも相まって「見損なった」という批判も出ている。

 

森友・加計問題は国家の基本政策か


安倍首相の答弁、枝野氏の質問、玉木氏の質問、それぞれへの評価がここまで分かれる理由の1つは、森友・加計問題が、国会の党首討論の場で議論すべき国家の基本政策かというところにある。

党首討論の正式名称は「国家基本政策委員会 合同審査会」といい、その名の通り国家の基本政策を議論する場だ。

では、森友問題や加計問題は、国家の基本政策と言えるのだろうか。

政府与党としては、森友・加計問題は日本の安全保障にも、多くの国民の暮らしにも直接関係があるわけではなく、他の場で議論し尽くされているテーマだ、外交・経済・社会保障など議論すべき大事なテーマは他にたくさんあるという主張だ。

立憲民主党などからすれば、森友・加計学園問題は、安倍政権の体質や行政の在り方に関わる重大な問題で、国家の基本政策に値するという主張だ。

どちらが正しいかは、国民1人1人が判断し、声を届けていくしかないのだろう。

 

党首討論を続けるなら…改革案を考える


では「意味がない」という党首討論をもうやめてしまえばいいのだろうか。2000年に国会活性化の一環として導入された党首討論は、年金問題で小泉首相が「人生いろいろ」との迷言を残したり、野田首相が安倍総裁に衆議院解散を宣言したりと、政局の大きな舞台になってきたのも事実だ。

党首同士が腰をすえて討論する場は大事であり、求められているのは内容の改革かもしれない。

そこで今回の討論で見えた問題として次のようなものがあげられる。

・二大政党を意識しての制度設計だったのに野党の分裂で時間が細切れになりすぎた

・一方が答えるべきでないと判断した内容については、長時間の答弁でかわせてしまう

・野党が一方的に討論のテーマを設定するのが骨太の議論の場にふさわしいのか

自民党の岸田政調会長は「国民から見て意義を感じてもらえるように与野党とも引き続き工夫をし、努力することは大事だ」と指摘している。

また枝野氏は、持ち時間を野党の質問時間のみに適用し、首相の答弁は時間にカウントしない「片道方式」の導入を提案し、玉木氏は質問時間を増やしたうえで、国民の多くがテレビで見られる午後8時からの開催にすべきだと提起している。

一方、安倍首相はかねてから、一方通行で質問に答える形式ではなく、首相が野党の党首に逆質問するなど、双方向の討論にする必要性を訴えている。

今後、開催回数を増やす代わりにテーマを絞るのも改革の一案かもしれない。

与野党には、これらの案を真剣に検討し、「意味がない」という声が双方から上がるような絶望的な党首討論には決別し、「意義深い」討論の形を模索するいい機会にしてほしいと願う。

 

(政治部デスク 高田圭太)

 

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