おやじはやっぱり偉かった? 2世議員も楽じゃない

山本周
国内

  • 自民党衆議院議員の4人に1人は実の父が国会議員
  • 2世議員が一番苦労するのが「お父さんはこうだった・・・」という比較
  • より優れた人材を政界へ登用する工夫を政党に求む

国会議員の世襲 実態は?

6月17日は「父の日」。

かねてから国会議員の世襲が問題視されているが、実態はどうか。
自民党の現職の衆議院議員について、実の父親が国会議員だった人はどれくらいいるのか数えてみた。
世襲の対象は、実父以外にも養父母、夫あるいは妻の父母や祖父母、兄弟、おじ、おば、親戚なども含まれるだろうし、政治家という意味では県知事や県議会議員など地方政治家も含まれるだろうが、「父の日」なので実父が国会議員だった人に絞った。

自民党衆院議員の4人に1人は実父が国会議員

自民党の衆院議員は、会派離脱中の大島理森衆院議長を含め284名。
このうち、実の父親が国会議員だった人は67人いる。自民党衆院議員の24%、4人に1人に相当する。

このうち父親が大臣経験者だった人は51人いて、「実父が国会議員」だった人の76%、すべての自民党衆院議員のうちの18%を占める。

確かに自民党の国会議員の名簿を見ると、聞いたことのあるような名前の人がいるので調べたら、やはり2世だったということはよくある。なお実父が国会議員経験者で、現在、兄弟で衆議院議員を務めている人が2組いる。安倍晋三・岸信夫兄弟と、石原伸晃・宏高兄弟だ。

(左)安倍晋三 (右)岸信夫

中には、祖父も曾祖父も国会議員だったという政治家一族もいる。
こうなるとまるで貴族だ。

実父が総理大臣経験者は5人

実父が総理大臣経験者だったのは、鈴木俊一五輪相(父は鈴木善幸氏)、橋本岳元厚労副大臣(父は橋本龍太郎氏)、小渕優子元経産相(父は小渕恵三氏)、小泉進次郎自民党筆頭副幹事長(父は小泉進一郎氏)、福田達夫防衛政務官(父は福田康夫氏)の5人だ。

なお、野党にも実父が国会議員だった議員はいるが、割合は自民党のほうが圧倒的に多い。

例外はあるが、大臣はおおむね5回以上の当選歴があるので、そのぶん地元での知名度が高い。
したがって、息子や娘は地元選挙民になじみのある名前で選挙を戦えるという利点がある。
また必ずしも政治家志望ではなかったとしても、父親の背中を見て育っているので、衆議院議員の日常を知っている。

地盤・看板があっても・・・

新人候補者が一から自分の後援会組織をつくるのは大変な努力が必要だが、世襲なら親の後援会を引き継ぐことができるし、後援会側にとっても、せっかく築き上げた組織を維持しやすい。

特に父親が死去し、その子どもが後継者として同じ選挙区から選挙に出た場合、父親の遺影を胸に抱えながら選挙区内を回るだけで、マスコミも含めみんなが「弔い合戦」とはやし立てるので、候補者のタマがよほど悪くない限り、勝利できる可能性はかなり高い。

もっとも、ひとつの選挙区から1人しか当選できない小選挙区制なので、風向き次第で選挙結果が大きく変わるのが最近の特徴だ。つまり父親が著名だったからといって、子どもも2回目以降もずっと選挙に強いとは必ずしも言えない。

「これが先代からのやり方だ」に苦労

2世議員が一番苦労するのは、親の代からの支持者からとの付き合い方だ。
いつも「お父さんはこうだったのに…」と比較される。

父親の選挙区にある学校に通っていれば、支持者とそれなりに面識があるだろうが、2世議員の場合、選挙区から離れた東京育ちという人も多い。ずいぶん以前の話だが、初めて入閣した2世議員の一夜明けた表情を取材していたら、新大臣が議員宿舎にかかってきた支持者からのお祝いの電話に対して「ご無沙汰してばかりで申し訳ありません。今度必ずご挨拶に伺います。」と汗を拭きながら頭を下げていたのを思い出す。

より難しいのは、父親の代からの秘書や後援会幹部たちとの付き合いだろう。
特に支持基盤について十分な知識なしに候補者となり当選してしまった議員の場合、後援会組織の運営とか政治資金の扱いは古参の秘書らに任せっきりになり、「先代のころからのやり方だ」といわれると口を出しにくい。このため思い切って事務所の秘書を総入れ替えする議員もいると聞く。

より優れた人材を政界に登用する工夫を

政治家の劣化が言われて久しい。世襲政治家が目立っていることがその理由のひとつとされることもある。ただ意欲も能力も十分にある人を、政治家の子どもだからダメだと排除するのは、人材活用の点から不合理だ。

むしろ最近は、世襲ではない一般人から、論文審査と面接で「学歴が立派。背が高くイケメンでさわやかだ」という印象で候補者を選んでしまい、当選後スキャンダルが発覚して政党執行部が頭を抱えるケースもあった。

肝心なのは日本のため、世界のためにきっちり働いてくれる政治家をどう探し出し、選ぶかだ。
選挙の候補者の選考基準を明確にし、決定プロセスをオープンにすることを通じて、より優れた人材を政界に登用できるような工夫を政党には求めたい。


(執筆:フジテレビ 山本周 解説委員)