“睡眠不足”運転手の乗務禁止へ…「適切な睡眠時間」国のお達しに事業者混乱も

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  • 既に“睡眠不足”対策を実施している会社も
  • 「適切な睡眠時間」とは?事業者に混乱も

事故相次ぎ“睡眠不足”運転手の乗務禁止へ

広島・東広島市で起きた追突事故で2人死亡

最近、睡眠不足が原因とみられる事故が相次いでいる。
一昨年には広島・東広島市で、慢性的な睡眠不足の状態で乗務を続けていたトラック運転手が居眠り運転で追突事故を起こし、2人が死亡。

去年は徳島・鳴門市トラックが停車中のバスに追突して16人が死傷した。
この事故も居眠り運転だった。

国交省が去年バスの運転手へ実施した調査では、1日当たりの睡眠時間の平均が5時間未満の運転手は約25%いた。

こういった乗務員の睡眠不足が問題になっている為、これまで疾病や飲酒については乗務を認めないよう定められていたが、国交省は6月1日に、省令を改正して事業者に睡眠不足の運転手を乗務させることを禁止する

徳島・鳴門市で起きた追突事故で16人死傷

既に“睡眠不足”対策を実施している会社も

中日臨海バスでは数年前に乗務員が相次いで脳梗塞などになったことで健康管理への取り組みを強化した。

毎日、歩行数や血圧などを出勤時にチェックして、睡眠時間を寝ている間に計測できる機器を乗務員に支給。

また、管理栄養士による健康チェックや面談をスタートして、2016年1月に比べ、2017年7月の健康診断結果では「高リスク+中リスク」の割合が80%→67%、「健康体+低リスク」の割合が20%→33%へと改善が見られたという。

中日臨海バスでは出勤時に歩行数や血圧などチェック


はとバスでは、点呼時に睡眠状態を確認した上で、記録に残すようにする方針で、現場では睡眠不足を把握するための取り組みが始まっている。

はとバスでは点呼時に睡眠状態確認

「適切な睡眠時間」とは?事業者に混乱も

一方、睡眠時間には個人差があるとして、国交省は睡眠不足となる時間を決めていない

そのため上記の2社を含めた多くの事業者は、睡眠時間を現場でどう評価すればいいか分からないと混乱が生じていた

適切な睡眠時間について、東京医科大学病院・睡眠学講座 井上雄一教授は…

井上雄一教授
個人差はあるが様々な調査結果が示しているのは7、8時間がベストパフォーマンスに関係するとなっている。極端な朝方とか夜型だとパフォーマンスに違いがあるので、その点も考慮したほうがいいが、だいたい7時間が適切な睡眠時間の目安と考える

と、「7時間」を適切な睡眠時間として、事業者へ通知してもいいのではとの考えを示した。

事業者の中で混乱が生じていることについて、5月29日の国交相の会見で質問すると、石井国交相は…
「(睡眠時間の)基準については運転者ごとに個人差があるので、一律にお示しするのは必ずしも適当でないと考えます。運転者が睡眠不足か否かについて、安全な運転できるかについては、事業者が行う乗務前の点呼において運転者からの申告や顔色、仕草、話し方を含めて、本来の様子と違う様子がないかの観点から総合的に確認するのが重要である

とした上で…
「国交省で作成した自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導および監督の実施マニュアルについて、従来から6ないし7時間の連続した睡眠をとるよう推奨している」
「今般の6月1日付けでマニュアルを改訂して、厚労省の健康づくりのための睡眠指針2014睡眠12か条の中で、睡眠時間が6時間未満では7時間と比べて居眠り運転の頻度が高いことを具体的に紹介する」などと、厚労省の指針を運転手を指導する上での一助にしてもらいたい考えを明らかにした。


事業者からはこの“方針変更”を歓迎する声が上がったが、省令改正を通知する段階で国交省では、こういった混乱が生じることは想像出来なかったのだろうか?

睡眠不足による事故を一件でも減らすために「現場の声や実態」を捉えるより一層の努力が国交省にも求められる。

(社会部・国交省担当 相澤航太)