これぞ「情熱のバラ」! 鉄のアートが生み出す“一瞬の美”に魅せられる

カテゴリ:国内

  • 海外の鍛冶屋の技に感動。芸術大学院生アーティストが“やってみた ”
  • 友人の結婚プレゼントのために制作「飾りや防犯グッズとして使ってほしい」
  • 赤く光るのは約30秒だけ…「鉄を熱したときの赤い色が大好き」

棘ではなく“熱”を持つバラ

橙色の花びらが、先端にいくにつれ真紅に染まっていくようなバラ。

思わず触りたくなってしまう美しさだが、実はこのバラは鉄を加工して作られたもの。
赤く光っているのは、形を整えるために高温で焼かれている間だけなのだ。

作者は、東京藝術大学大学院に在籍し、金属を使ったアーティストとして活動するカシワギヰチ花(@flower_pecker)さん。
「海外の鍛冶屋さんのインスタとかで見てやってみたかったことをやった」とのつぶやきとともに、完成した「鉄のバラ」とその工程途中の「情熱のバラ」の写真をアップしている。


2時間半ほどで完成したという「鉄のバラ」だが、鍛造と溶接を重ねる作業は、なかなか大変。

まず、厚さ1.2mmの鉄板から3枚の花びらとガクを糸ノコギりで切り出す。
これを熱してハンマーで叩き薄く伸ばしたら、中心部に茎と同じ大きさの穴を開けて、茎に通して溶接する。
さらに、花びらを900℃前後の高温で熱して内側から順に立てて花の形を作り、開きながら微調整を加えていく。

「鉄のバラ」制作工程。他にも方法があるそうだが、カシワギヰチ花さんはこの方法を採用。

友人の結婚式のサプライズプレゼント

「端材でつくって材料費タダ、所要時間2時間半、楽しい」と言うが、初心者でも同じように作ることはできるのだろうか?
そして、友人の結婚式で贈るサプライズプレゼントとして制作したということだが、サプライズは成功したのか?
制作のポイントと作品に込めた思いをカシワギヰチ花さんに聞いた。

ーー海外の鍛冶屋のSNSを見て挑戦したということですが、実際に作ってみた感想は?

SNSで作業風景をアップしている溶接、鍛治屋さんのSNSを普段からよく見ていて、様々な人がそれぞれの方法でバラの花を作っているのを知りました。
それに触発されて挑戦し、試しに1つ作ってからコツを掴み、改良しながら作業を進めました。
特に薄い材料の溶接は難しいのですが、ランダムで有機的な形をつくるのは得意なので、初めてにしては比較的うまくいったと思います。

ーーなぜ友人に鉄製のバラの花を贈ろうと思った?

新郎新婦共に仲の良い友人なのですが、手作りのものを喜んでくれる人たちなので、バラはぴったりではないかと。

ーーバラは1輪で?それとも花束にして?

3本制作して、新郎新婦、新郎のご家族、新婦のご家族に、それぞれ1本ずつプレゼントしました。
みなさん、とても気に入ってくださいました。

わずか30秒の“一瞬の美”

ーー900℃前後の熱ではどれくらいの時間光っている?

材料の大きさや厚さにもよりますが、今回の花びらの場合は、30秒足らずで元の色に戻ってしまいます。

ーー熱していないと黒っぽい状態ですが、完成品をどのように楽しんでほしい?

どこかに飾っていただければ嬉しいです。
あとは鈍器にもなるので、不審者対策に玄関などに置くのも良いかと思います。


ーー他の色でも作れる?

真鍮など他の金属を使ったり、あるいは塗装やメッキなどの処理をすれば、他の色も得られるかと思います。

ーー制作過程でのポイントは?

茎と合体させる前に花びらをしっかり熱して、叩いてなるべく薄くすると、やわらかな表情を作ることができます。

ーー初心者でも作れる?

一般に手軽な加工ではないので簡単とは言い切れませんが、材料と設備と少しの経験さえあれば、どなたでも形は作れるはずです。

「鉄は時間・空間を変える形にもなる」

鍛造や溶接の技術は、大学時代に金属工芸でを学んで身に着けたという。
ガラスや銅など他の金属にも触れたが、鉄の加工が性に合うようで、現在まで続けているそうだ。

鉄の魅力について聞くと、
「鉄は硬質で重いイメージを持つ素材ですが、強度もあるので、方法によっては重力に逆らったような形、
時間が止まったような造形、軽やかな表情などを生み出すことも可能です。何より熱した時の赤い色が大好きです」と話す。

そんなカシワギヰチ花さんがメインで制作しているのは、電源コードをモチーフにした大きな立体作品。
自身の経験や空想から継ぎ接ぎしたモチーフを鉄で再構成しているのだという。

「LUCY-あなたは家に帰る途中で死んでしまった-」(2017年)

代表作に、針金をねじって作った椅子と壁に刺さったフォークが印象的な「LUCY-あなたは家に帰る途中で死んでしまった-」や、持ち手部分が壁から突き出た赤い傘に針金が巻き付いた「The Egg-こんな世界じゃ-」などがあり、小さなものを含めると、これまでに制作したのは約20点。
「作品を見た人が、私と同じ、あるいは全く別の物語をなぞってくれたら」という思いで制作しているという。

「The Egg-こんな世界じゃ-」(2017年)

大きな反響を呼んだ「鉄のバラ」には、購入希望の声も寄せられているが、「メインの制作活動があるので、今のところネット等での積極的な販売は予定しておりません」とのこと。
しかし、制作の息抜きで今回の鉄のバラのような小物をつくることもあるそうで、今後参加するイベントで販売する可能性はあるという。

花言葉の通り、ほとばしる情熱を体現したかのような鉄のバラ。
限られた時間にしか見られないからこそ美しく、多くの人を魅了するのかもしれない。