51歳で早期リタイアし、沖縄で民宿経営【人生100年時代の選択】

カテゴリ:国内

  • 製品開発の仕事を退職し、夫婦で沖縄県今帰仁村に移住
  • 早期リタイア直前の年収に対し40%ほど減少したが、現在の生活に満足
  • 「前後の生活では、それぞれ基準となる“時計”が異なる」

科学や医療の進歩の恩恵か、人々の寿命は過去200年ほど伸び続けているという。
これまで「人生80年」などと言われてきたが、それも今は昔。「人生100年時代」に突入した。

 「人生100年時代」という言葉は、イギリスのリンダ・グラットン氏の著書『LIFE SHIFT』の中で使われているものだが、グラットン氏によれば、「人生100年時代」において、1.「教育」、2.「多様な働き方」、3.「無形資産」が重要とのこと。


 我々にとって身近な存在である「多様な働き方」。
最近では、「定年までひとつの会社で勤め上げる」のではなく、定年を待たずして退職する「早期リタイア」という言葉も一般的になってきた。
“悠々自適”というイメージもあるが、退職後どんな生活をし、そして自身の選択に満足しているのか?
そのリアルな本音を知りたいと思い、実際に早期リタイアを選択した人に話を聞いた。

 
今回ご協力いただいたのは、約5年前に51歳で会社員を辞め、夫婦で愛知県から沖縄県今帰仁村に移住した杉本達哉さんだ。

杉本達哉さん

季節の移ろいを五感で感じられる喜び

「早期リタイア」と聞いて多くの人が気になるのは、やはり「生活の変化」だろう。

現在は、今帰仁村にある民宿を夫婦二人三脚で営む杉本さん。まずは早期リタイア前後のタイムスケジュールを教えてもらった。

タイムスケジュールだけを見ると、起床・就寝時間にそれほど大きな差はないように思えるが、杉本さんは、早期リタイア以前の生活について以下のように話す。

 「当時は、よく言う“家と会社の往復”という生活が基本でした。会社の中では、10名弱のグループのリーダーとして製品開発に携わっていましたが、開発は非常に多くの部署と関わりながら仕事を進めるので、時間に追われながらの会議や打ち合わせ、出張、資料づくりの連続。休日に出社することも、ごく当たり前となっていました。」(杉本さん、以下同)


毎日忙しい日々を過ごし、会社のために身を粉にして働いていた杉本さん。
早期リタイア前後の生活では、それぞれ基準となる“時計”が異なる」とも続ける。

 「決定的に異なるのは、時計が示す時刻のみで動いていた会社員時代(早期リタイア前)に対して、現在は体内時計に素直に動いていること。

お客さま相手の仕事なので、もちろん時計が示す時刻で仕事は進めますが、生活全体の大きな流れが自然のサイクルに順応した、体内時計で流れていることを感じています。日の出・日の入りの時間や位置、風向き、星の種類や位置、さえずる鳥の種類、飛来する渡り鳥、虫の音など、カレンダーやニュースではなく五感で季節を感じ、目の前の自然の変化で季節を感じる生活になりました。」

 
また、収入面では「早期リタイア直前の年収に対し40%ほど減少した」とのことだが、それでも「夫婦2人で協業し共に生き、『1+1>2』であること」の実感のほうが大きいという。

具体的な課題に落とし込み、不安を解消

杉本さんの話しぶりから現在の生活に満足していることが窺えるが、51歳で早期リタイアを決断し、移住した当時はまだ子どもも一緒に暮らしていた。
早期リタイアするにあたって、何か不安はなかったのだろうか?

 「移住による新しい生き方を具現化する際に、漠然とした多くの不安があったのですが、それらを具体的な課題に落とし込んで、一つひとつ対応を考えました。しかし、それでも最後に残ったのが、“民宿を始めてもお客さんが来なかったらどうしよう”という『考えても仕方ない不安』でした。」

 長い時間をかけて不安を解消していくことで、早期リタイアへの不安はあまり感じなかったと杉本さん。どちらかというと、早期リタイアすることよりも、いつリタイアするかのほうが気がかりだったそうだ。

「ストレスのない生活などありません」

最後に、早期リタイア経験者として、今後早期リタイアを検討している人にアドバイスはないか聞いてみた。

 「大切なことは、早期リタイア後にどのような生き方をするかを明確にすることです。早期リタイアは、その生き方を実現するための手段に過ぎません。
『早期リタイア』という言葉には、『ストレスのない悠々自適な生活』というイメージがありますが、ストレスのない生活などありません。どのような生き方をするにせよ、何らかのストレスはあり、それが会社員時代とは種類が異なるだけ。

早期リタイアを考えているのであれば、『覚悟』を持つこと、そしてそのために『準備』をすることが大切だと思います。『覚悟』ができている人には、必要なときに必要な人が手を差し延べてくれるはずです。応援してます!!」

1.「どのような生き方をしたいかを明確にする」
2.「その生き方を実現するためには何をすべきか考え、実行する」
この2つのプロセスに真剣に取り組むことで「覚悟」が生まれる。

 今の仕事の辞め時、お金、家族etc.…早期リタイアには様々な不安がつきまとう。
しかし、時間をかけて一つひとつ対処していくことで不安は消えていき、“新しい生き方”への道が開けるのかもしれない。


取材・文=明日陽樹/考務店

取材協力  杉本達哉
http://www.agaiteeda.jp/index.html

 

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