研究に留まらない 皇太子さまがこだわる「水問題」とは

カテゴリ:国内

  • 皇太子さまの学生時代からの「水」研究が大きな広がりをみせている
  • 水上交通、衛生、環境、争い、災害と幅広いテーマで 国の内外でご講演
  • 水問題を終生研究テーマとし 日本だけでなく世界の平和と発展のために研究を続けられる

愛知県の船頭平閘門(せんどうひら・こうもん)をご訪問

皇太子さまは、5月21日、愛知県愛西市にある水運施設をご覧になった。
皇太子さまは「水」をテーマとした研究を今でも続けていて、研究の一環としてのご訪問。

皇室の皆様は、それぞれ研究のテーマを持たれている。
昭和天皇は、生物学者としてヒドロ虫類や粘菌をご研究。
今の陛下は、魚類学者としてハゼ類の分類のほか、皇居におけるタヌキの生態についても研究をされている。
皇太子さまが大学生時代から研究を続けられている「水」というテーマは今や「水問題」として大きな広がりを見せているのだ。

皇太子さまがお訪ねになったのは、船頭平閘門(せんどうひら・こうもん)という水運施設。
閘門とは、水位の違う川、水路、海を船が安全に進めるよう水門で水位を調整する門のこと。
船頭平に作られた閘門は、水位の違う木曽川と長良川を結ぶ水路に作られている。

パナマ運河でも使用された水門方式をご視察

この日は、水位の低い木曽川から進んできた船が、木曽川側の水門を通り、水位を調節する閘室(こうしつ)と呼ばれる場所へと進んだ。ここで、木曽川側の水門を閉じ、長良川の水位へと合わせるためだ。
皇太子さまは、1.6mほど水位とともに上昇する船の様子を興味深げにご覧になっていた。
この方式は、大西洋と太平洋を結ぶパナマ運河でも使用されている。

木曽三川の「水運」発展のために作られた閘門

そもそも、船頭平閘門ができたのは、この地方に木曽三川とよばれる木曽川・長良川・揖斐川が流れていることに由来する。
江戸時代には、この三川は下流部分で合流しており、物資を積んだ船やいかだ船などが行きかっていたが、水害被害も多く発生していた。このため三つの川を分離する改修工事が明治20年(1887年)から始められた。

明治45年(1912年)に工事は終わり、「防災」の面は大きな進歩を遂げたのだが、「水運」の面で大きな不便さに見舞われた。
川が分離されたことにより、木曽川と長良川を行き来することが難しくなった為、船頭平にこの閘門が作られたのだ。

「足りない水」から「多すぎる水」まで幅広い研究

皇太子さまは、学習院大学時代から、水上交通路として重要な役割を果たしてきた瀬戸内海での水運の中世の歴史を学ばれてきた。
また、イギリス留学では、18世紀のテムズ川の水上交通の問題を研究されている。
交通史から始まった「水」の研究を続けた皇太子さまにとって、「水問題」は避けられないテーマとなったのではないだろうか。

 昭和62年(1987年)皇太子さまは、国際親善のためネパールを訪問されている。
その際、ポカラのサランコットの丘付近で見た光景を水問題の講演でよく述べられる。
水をくむため甕を手にした女性や子供たちが集まっていて、「水くみをするのにいったどのくらいの時間がかかるのだろうか」と感想を抱かれたそうだ。飲料水、衛生、水争いといった、水問題を感じられたのではないだろうか。

2003年京都で開かれた「第3回世界水フォーラム」でこの大会の名誉総裁として記念講演をされて以降、3年に一度開かれるこの国際会議で、ビデオメッセージを含み毎回基調講演を行われている。
その中では、「水運としての川と上水道の歴史」から始まり、「水害との戦い」「東日本大震災と津波」「防災」などのテーマを話され、今年ブラジルで開かれた「第8回世界水フォーラム」では、「発展繁栄のための水」「気候変動と災害」などについて講演された。

平成19年(2007年)には国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任し、平成25年(2013年)にはニューヨークの国連本部で「水と災害に関する特別会合」でも「東日本大震災と世界の水害」をテーマに、平成27年にも「人と水のかかわり」「科学技術の発展と災害対策」などについて基調講演をされている。

このように「足りない水」という問題と合わせ「多すぎる水」つまり水害対策へと思いを広げられている。

発展持続可能な社会作りの為に

皇太子さまは現地へも足を運ばれている。
山梨県の三分一湧水、岐阜県郡上市の「カワド」などを今回のように視察し、海外でもスイスの水害対策施設やマレーシアの洪水対策施設などもご覧になっている。

このように現地でご覧になり研究した内容については、学習院女子大学で、水をめぐる歴史についての特別講義として若い学生たちに伝えられています。
皇太子さまにとり「水問題」というご研究のテーマは、衛生、環境、争い、災害へと広がり、発展持続可能な社会つくりために水問題と向き合うことの重要性を訴えてられている。

皇太子さまは来年5月に即位される。
この「水問題」については終生研究を続け、日本だけでなく世界の平和と発展を祈ることへと続くテーマとなるだろう。

(執筆:フジテレビ 皇室担当 橋本寿史 解説委員)

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