金正恩委員長と英ヘンリー王子のロイヤル・ウエディングTV中継 英戦略核の”圧力”とは

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  • 英「ロイヤル」の下にある英、豪、カナダ軍が"北"瀬取り対策のため日本拠点に活動
  • 米韓演習「マックス・サンダー」と関係なく、米B-52H爆撃機が半島に接近?
  • 金正恩委員長、米以外の戦略核保有国、英国の厳しい姿勢を意識?

5月19日、英国チャールズ皇太子の次男、ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式が、ロンドン近郊のウィンザー城で執り行われた。この結婚式は、英国民だけでなく、豪、カナダ、ニュージーランド等、ヘンリー王子の祖母、エリザベス女王を君主とする国々でも祝福されていただろう。

英国はもちろん、豪とニュージーランド、カナダでは、空軍と海軍に、ロイヤルの文字が付き、海軍の軍艦には「HM:Her Majesty’s」との文字が付くがこれは“女王陛下の”という意味である。これは名目だけのことではない。これらの国の軍隊は、人事交流も盛んで、作戦の統合性もすすんでいるとみられるからだ。

B-757-200型機

5月16日、沖縄県・嘉手納基地にニュージーランド空軍の輸送機、B-757-200型機が多数の軍人を載せて着陸した。嘉手納基地には、すでにカナダ軍のCP-140哨戒機、豪軍のP-8A哨戒機が展開し、洋上での密輸入、いわゆる瀬取り監視を空中から行っている。

恐らく、海上自衛隊のP-3C哨戒機P-1哨戒機同様、現場を見つけて、空から撮影ということだろう。

佐世保に入港する英海軍の強襲揚陸艦アルビオン

また、4月11日に横須賀に入港していた英海軍のフリゲート・サザーランドが出港。さらに、5月11日には、英海軍の強襲揚陸艦アルビオンが、佐世保に入港している。もはや、北朝鮮の瀬取り監視は、日米だけではない。

特に英海軍の2隻は、日本入港前に、国際的な瀬取り監視への協力をうたっており、各国の空からの映像データに基づき、疑惑の船に、乗員や海兵隊員を乗り込ませることも物理的には可能とみられる。

こうした中で、ニュージーランド軍がどのような役割をはたそうとしているのかは不明だが、北朝鮮に対する経済面からの圧力は、決して弱まらず、むしろ強化されているかのようだ。

北朝鮮が南北高位級会談を提案し、自ら無期限延期

そんな中、北朝鮮は自ら提案した5月16日という南北高位級(次官級)会談の日取りを、16日当日になって突然、無期限延期を韓国に通知してきた。韓国・聯合ニュースによれば、北朝鮮側が日取りの提案から、事実上のキャンセルまで、わずか15時間だったという。      

北朝鮮の朝鮮中央通信は「米軍のB-52戦略核爆撃機とF-22ラプターステルス戦闘機」が参加する米韓合同マックスサンダー演習が「われわれに対する空中先制攻撃と制空権掌握を目的」にしたものだと非難。

さらに同日、北朝鮮の金桂寛・外務省第一次官は、朝鮮中央通信を通じ「米国がわれわれを追い詰め、(北朝鮮に)一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、われわれはそのような…朝米首脳会談に応じるかを再考慮するしかないであろう」との談話を発表した。

AGM-86巡航ミサイル

現在のB-52H爆撃機は様々な任務をこなせるが、主要武装は、AGM-86シリーズの巡航ミサイル。これを機内に最大8発、左右の主翼の下に6発、計20発を搭載できる。非核のAGM-86Cで最大射程950㎞と、性能上は、北朝鮮の領空に入らなくても平壌を射程内にとらえることが出来る。

また、強化された地下施設や建物を狙うのは、非核の貫通弾頭を装備したAGM-86Dで、射程1300㎞余り。さらに核弾頭を備えたAGM-86Bなら射程2500㎞と、朝鮮半島どころか、B-52Hが日本の領空に入らず、太平洋側にいても北朝鮮の主要部を射程にすることができそうだ。

韓国の報道では、北朝鮮の主張を受ける形で、17日、韓国の宋永武・国防部長官が在韓米軍のブルックス司令官に、B-52Hを朝鮮半島に展開しないよう求めたとも伝えられた。

アメリカの対応は?

聯合ニュース(5/18)は、金桂寛外務省第一次官の談話の翌日の17日「B-52H爆撃機が、韓国の南端付近の上空を飛行したが、韓国の防空識別圏には入らなかった」と報じた。

B-52H爆撃機

これが本当なら、前記の通り、B-52Hが搭載するAGM-86巡航ミサイルは、いずれのタイプでも、北朝鮮の主要部に到達可能な位置を飛んでいた、ということになるかもしれない。

そして、米CNBCは18日「米国防省のスポークスマンに依れば、B-52をマックスサンダー演習に参加させる計画はない。演習は変更なく、続けられる」と報じた。
これも本当で、B-52H爆撃機は、北朝鮮を射程内にして飛行したのであれば、韓国政府の意向はともかく、米韓演習と無関係にトランプ政権はB-52Hを飛ばした、ということになるだろう。

金桂寛外務省第一次官の談話は、朝鮮半島の非核化について、北朝鮮に一方的な核放棄になるなら認められない、ということだろう。北朝鮮が非核化するなら、朝鮮半島外から、北朝鮮に届く兵器を含めた非核化を求めているのかもしれない。

金桂寛外務省第一次官の談話に対し、ホワイトハウスのサンダース報道官は「会談が開催されなければ、引き続き最大限の圧力を掛け続ける」とフォックス・ニュースのインタビューで答えた。

B-52H爆撃機が、マックスサンダー演習に無関係に、朝鮮半島近辺にまで飛んだのだとすれば、今後も続けられる「最大限の圧力」の一環と見るべきかもしれない。

さらなる圧力は?

米軍の準機関紙「Stars&Stripes(5/18)は、5月17日に、本格的な作戦展開前の試験航海に出ていた空母ロナルド・レーガン(参照:上画像)が、17日に「横須賀に帰港したが、修理が必要な不具合が見つかったため、展開が遅れる可能性」との主旨を報じた。どの程度の遅延となるかは不明だが、同空母の動きは、北朝鮮に意識されるものに違いないだろう。

朝鮮労働党中央軍事委員会第7期第1回拡大会議

朝鮮労働党中央軍事委員会第7期第1回拡大会議

一方、北朝鮮の朝鮮中央通信も18日、金正恩委員長の指導の下、朝鮮労働党中央軍事委員会第7期第1回拡大会議が行われ、「党中央軍事委員会の一部の委員を解任および任命、武力機関の責任幹部を解任および転任し、新しい幹部を任命することに関する組織問題が取り扱われた」と軍関係の人事が行われたことを報じた。

議題はいろいろあったが、「軍隊近代化方針を一貫して堅持する」との方針も強く打ち出しており、北朝鮮も南北首脳会談で醸し出された緊張緩和ムードとは裏腹な姿勢も垣間見える。

ヘンリー王子の結婚式の模様を、金正恩委員長がテレビで見ていたかどうかは不明だが、金委員長が意識せざるを得ないことの一つは、米国だけでなく、「ロイヤル」の文字を掲げる軍隊を持つ英、豪、カナダ(+ニュージーランド?)が、北朝鮮に厳しい姿勢を取っているということだろう。

英・トライデントII核弾頭搭載潜水艦発射弾道ミサイル

英国は、国連安全保障理事会で拒否権を持つP-5の一国であり、射程7400㎞以上のトライデントII核弾頭搭載潜水艦発射弾道ミサイルという戦略核兵器を、いわば、合法的に保有している一国だからだ。

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