路上で声かけは「路上セクハラ罪」? 恋愛と寛容のフランスで往年女優の発言は“時代錯誤”

石井梨奈恵
カテゴリ:ワールド

  • 「セクハラ罪」は存在する! あの「愛の国」が厳格に規定
  • 物議を醸した「ドヌーブ発言」は、フランスを代表しない
  • 路上で声をかける際は要注意!「路上セクハラ罪」も

「セクハラ罪」を法律で定義付けたフランス

「セクハラ罪という罪はない」
財務省の福田前事務次官が、女性記者に対するセクハラで辞任した問題をめぐり、麻生財務相が記者団に放った言葉である。しかし、世界を見渡せば、法律でセクハラ罪を定義している国がある。
「自由・平等・友愛」の国、フランスだ。
フランスといえば、しばしば「愛の国」などと称されるように、一般的に恋愛や性に寛大なイメージがある。
カフェや路上で「きれいだね」などと声をかけられ、恋愛が始まることも珍しくない。

ドヌーブ「口説く自由は認められるべき」

恋愛や性に寛大と言えば、最近では、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏によるセクハラ問題から始まった “me too” 運動に対する、仏女優カトリーヌ・ドヌーブさんの言葉が記憶に新しい。

セクハラの告発が相次ぐ中で、ドヌーブさんは「口説く自由は認められるべきだ」とか、「レイプは犯罪だが、しつこくあるいは不器用に口説くのは犯罪ではない」などとした公開書簡をルモンド紙に寄稿して、世界中で議論が沸き起こった。

ドヌーブさんのこうした態度を見ると、遠い日本から見た、いわゆる「フランス」のイメージにぴったりあって、「さすがはフランス」と納得してしまうところもあった。

セクハラとは「失礼な状態を作り出すこと」

フランス国会議事堂

こうしたイメージがある一方、実はフランスには「セクハラ罪」という罪が法律で厳格に定められている。
「セクハラ罪」は、1992年11月に設けられ、2002年1月に定義が拡大された。

しかし「何がセクハラなのか」という曖昧さの問題が残り、2012年にオランド政権下で法改正の末、明確に定義づけされた。

その内容はこうだ。
「セクハラとは、ある人に対し繰り返し性的な暗示をする言葉や態度で、その下劣で屈辱的な性質から尊厳を傷つけ、意に反して威圧的、敵対的または失礼な状態を作り出すこと」(一部抜粋)

実際にセクハラと認定された場合、2年以下の懲役や30,000ユーロ以下の罰金が科される上、
職権乱用や15歳未満へのセクハラなど一定の条件が加わると、3年以下の懲役や45,000ユーロ以下の罰金へと、刑はさらに重くなる。

”往年の女優”たちの発言

麻生財務相いわく、日本には「セクハラ罪という罪はない」。
他方、性に対してより寛容なイメージがあるフランスでは、法の整備がよほど進んでいたのだ。
また、ドヌーブ発言についても、「さすがはフランス」と一緒くたにして片づけてしまうのは危険であることが、現地に来て分かった。

同僚のフランス人女性に訊ねると、「あれは年代の問題。ドヌーブさんくらいの年代の人の考え。今は違う」という返事が返ってきた。
そういえば、批判を浴びるドヌーブさんを擁護し「なんてばかばかしいの!」と助け船を出したのもまた、ブリジット・バルドーさんという往年の大女優だった。

マクロン政権は「路上セクハラ罪」も検討

セクハラに対する、フランスの厳格な姿勢は、これだけに留まらない。
マクロン政権は、ただの「セクハラ罪」だけに留まらず、「路上セクハラ罪」なるものまで、法律で定める方向で検討している。法律の骨子案で「路上セクハラ」とは、路上で女性の後をつけ回したり、外見についてワイセツな声をかけたりする等の行為とされる。発見された場合は、その場で罰金が科されることになるという。
仮に、「きれいだね、お茶しない?」と声をかけただけでも、受け取られ方によっては罪に問われることになれば、「愛の国」フランスは、混乱に陥るかもしれない。

財務省の福田前事務次官が「セクハラではない」と否定し続けた、品のない数々の言葉。
フランス人も、「あれは明らかにセクハラ」と口を揃える。

往年は往年でも、女優と政治家は違う。
政治家・麻生太郎氏の認識は「年代の問題」で片づけてはいけない。


(執筆:FNNパリ支局長 石井梨奈恵)

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