「アトピー」に画期的新薬が登場!重い症状の改善に期待

渡邉千春
カテゴリ:暮らし

  • これまでの治療では効果がなかった患者さんも…
  • 新薬は、これまでとは全く違うアプローチで炎症軽減
  • 隔週の注射の費用は?

アトピー性皮膚炎に対して、全く新しいアプローチをする新薬が先ごろ登場しました。
症状の重い患者さんへの効果が期待されます。

これまでの治療で効果なく、苦しむ患者さんも…

アトピー性皮膚炎の患者数は、45万6000人に上ります(2014年厚労省調査)。
患者さんは大人にも多く、完治は難しい疾患です。

中等症から重症のアトピー性皮膚炎の多くは、激しい難治性のかゆみ、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、出血を伴います。
中等症以上になると、かゆみによって十分な睡眠も摂れず、不安や抑うつ症状が現れることもあり、生活の質(QOL)にも大きな影響を及ぼします。

これまでのアトピーの治療と言えば、炎症を抑えるステロイド外用薬や保湿剤などの塗り薬と、抗ヒスタミン薬などの飲み薬の併用…というのが一般的でした。

しかし、ステロイド外用薬などの効果がなかなか現れず、治まらない症状に苦しむ患者さんも少なくないのが実情です。
このような患者さんに対する治療の選択肢は限られており、新しい治療薬の開発が望まれていました。

炎症の『悪玉』の動きを抑える!

そんな中、製造販売が承認された新薬が、「デュピクセント」(一般名・デュピルマブ)です。

アトピー性皮膚炎では初めてのバイオ医薬品で、有効成分は化学合成したものではなく、たんぱく質(抗体)です。投与は、皮下注射によって行います。

では、この新薬のアトピー性皮膚炎に対する「全く新しいアプローチ」とは、どのようなものでしょう。

アトピーでは、皮膚から体内に侵入したアレルギー物質に免疫システムが過剰に反応します。
その結果、「Th2細胞」という免疫細胞が過剰に増えてしまいます。
さらに、この「Th2細胞」からは、「IL-4」や「IL-13」という、2つのタンパク質が大量に放出されます。

実は、この2つのたんぱく質が、アトピー性皮膚炎の慢性炎症において中心的な役割を果たす、まさに『悪玉』なのです!
「IL-4」と「IL-13」が、皮膚細胞などの受容体と結合することで、アトピーの辛い炎症反応を引き起こしていることが研究でわかっているのです。

つまり、この『悪玉』の働きを抑えられれば、炎症は軽減できる訳です。
今回の新薬「デュピクセント」は、そこに着目して開発されました。

「デュピクセント」は、「IL-4」と「IL-13」の過剰な働きを特異的に阻害して、皮膚細胞などの受容体との結合を妨ぎ、炎症を軽減する、まさに画期的な新薬なのです。

治験では高い治療効果が!

では、効果はどれほどのものでしょうか。

強いステロイド外用薬で効果不十分な18歳以上かつ中等度以上のアトピー性皮膚炎患者さんを対象にした臨床治験では、投与開始後16週時の【湿疹面積・重症度指数;EASIスコア】が75%以上改善した割合が、「デュピクセント」投与群で68.9%(偽薬;プラセボ群で23.2%)という結果を得ています。
また、かゆみに関するスコアの変化率も、有意な低下を示したことが報告されています。

「デュピクセント」の治験に参加した患者さんからは、「注射していると、アトピーのことが日々気にならなくなった」との声も上がったようです。
「デュピクセント」の投与を受ける際には、初回のみ600mg、2回目以降300mgを2週間ごとに注射します。

つまり、2週間ごとの通院が必要となります。
ただ、今後は自己注射が出来るようになる可能性があるとのことです。

投与中も、保湿剤やステロイド外用薬などの併用は続けます。
主な副作用として、注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎などが報告されていますが、症状の重いものは起きにくいということです。

気になる費用は?

「デュピクセント」の投与が適用となるのは、「既存の治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の15歳以上の患者さんで、小児は適用になりません。

気を付けたいのは、「デュピクセント」はアトピー性皮膚炎の根本原因を断ち切っているわけではなく、あくまでも対症療法だということす。
ですから、 治療の効果を持続させるためには、継続して「デュピクセント」を投与しなければなりません。

そこで気になるのは費用ですが、2回目以降の投与1回で8万1640円という、高額な薬価になっています。
保険適用で実際の支払金額は1~3割で済みますが、2週間に1度の治療を継続すると経済的な負担は軽くはありません。
ただ、1ヶ月の医療費が高額になってしまった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される高額医療費療養制度などがあります。

アトピー性皮膚炎の治療は、この10年で大きく進歩しました。
新薬「デュピクセント」によって、さらに多くの患者さんの症状が緩和されることが期待されます。

千春皮フ科クリニック 院長
渡邊 千春(医学博士)

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