エアフォース・ウンの実力は? 金正恩委員長の乗機に“つっかえ棒”

カテゴリ:ワールド

  • 米・中・朝の間で、要人の動き、接触が慌ただしい
  • ポンぺオ国務長官が、拘束された米国人を連れ帰った要人輸送機は、機密通信可能なC-32
  • 金正恩委員長は、燃料持参で、機密通信を西側に晒す、半島外での米朝首脳会談に臨むのか

米中朝の間で慌ただしく動く要人たち

7日に金正恩委員長が、北朝鮮の要人輸送機である旧ソ連のイリューシン62M(IL-62M)型機で、中国・大連に乗り込み、中国の習近平主席との会談に臨んだ。
北朝鮮のトップが搭乗していたということで、米大統領の搭乗機、エアフォースワンになぞらえ、同機を米ワシントンポストや英デイリーメールは「エアフォースウン」と呼んだ。イリューシン62Mは、1963年に初飛行を行った旧ソ連を代表する旅客機のひとつ。(参照:下画像)

T字尾翼、機体後部に4発のジェットエンジンという構成で、テイルヘビーなのか、機体が地上で停止している際には、車輪付の棒を"突っかえ棒"のように地面にまで伸ばして支えるというのが、特徴的な構造の航空機だ。(参照:タイトル画像)
北朝鮮では、1979年から88年までに4機を受領。うち、2機が高麗航空。2機が政府の要人輸送機として運用されている。

金委員長の妹、金与正女史が2月9日、平昌オリンピックに乗り込んだ際、使用したのはイリューシン62MのP-618(またはP-883)号機だったとみられているが、今回、金正恩委員長が大連への移動に使用したのが、この機体だったかどうかは不明だ。

北朝鮮の労働新聞は、このイリューシン62Mの機内に設えられた、大きな執務机や特製の椅子に陣取った金委員長の画像を紹介しており、機中でも、窓の上のモニター、複数の電話器、パソコン、衛星電話らしき装置等を使って、通信、指示が出来ることを示唆している。(参照:上画像)
また、大連では、北朝鮮メディアでは紹介されなかった、高麗航空の大型輸送機、IL-76MD型機が、イリューシン62Mに寄り添うように駐機しているのが、目撃されており、興味深いことだった。

横田基地では米軍機が慌ただしく活動

「週刊安全保障」の視聴者、SPAR65さんによると、8日の米空軍・横田基地では、米軍の要人輸送機、C-37C-40の姿があったとのこと。(参照:上画像)
いったい何が、始まるのか。

翌9日午前3時過ぎ、米政府の閣僚が、しばしば使用する米空軍の要人輸送機「C-32」型機が飛来。およそ2時間後、夜明けを待たずに離陸した。
機体上部のふくらみ、機体上下に並ぶブレード・アンテナは、C-32が扱う様々な機密も含むデータリンク、通信の手段が搭載されていることを示唆。

平壌に向かったというその日の夜、北朝鮮で拘束されていた米国人3人とともに、ポンぺオ国務長官は飛行中と、トランプ大統領がツイート。

9日深夜、横田基地に戻ってきたC-32には、北朝鮮で拘束されていた米国人3人とともに、ポンぺオ国務長官が乗っているとみられた。(参照:上画面、横田に戻るC-32)
平壌からロサンゼルスまで9500㎞余り。一刻も早く、米本土に戻ることが求められたであろうに、航続距離が1万kmを超えるC-32は、なぜ、米国に直行しなかったのだろうか。考えられることのひとつは、北朝鮮が制裁対象国であり、平壌でC-32はジェット燃料を補給できず、横田での補給が必要だったということ。

どうなる米朝首脳会談

注目されるのは、米朝首脳会談のタイミングと場所だが、トランプ大統領は、「6月12日。シンガポールで」とツィート。シンガポールということになれば、金正恩委員長は、鉄道での移動が不可能となるため、再び空路ということになるだろう。

平壌からシンガポールまで4800㎞。要人輸送機イリューシン62Mの航続距離は5000㎞とされるので、シンガポールで給油をしないと、戻れないことになりかねない。
しかし、制裁で燃料の現地調達が出来ないなら、自前で持参する必要がある。仮に大型輸送機のIL-76MDを同行させるなら、帰りの燃料を貨物として積んでおくことは可能かもしれない。

だが、金委員長が、国際空域を飛行中のイリューシン62Mの豪華な執務机から、本国に指令・指示を出すとすれば、それは、当然、機密の通信手段も使用することになるだろう。
米国をはじめ、関係国にとっては、金委員長が直接使用する通信手段は、軍事的に見逃せない極めて重要な事項だ。国際空路を飛行するIL-62Mから発せられるかもしれない、重要な通信サンプルをどうやって入手するか――見えない戦いが繰り広げられることになるかもしれない。

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