世界初!高速3Dスキャンでゲリラ豪雨や竜巻を瞬時に予測可能へ

ゲリラ豪雨や竜巻の予測実現へ大きな一歩

カテゴリ:国内

  • 日本とアメリカにしかない最先端の気象レーダーを使い積乱雲を高速3Dスキャン
  • 2台のレーダーのデータを合成 台風に伴う積乱雲から発生した突風を世界で初めて詳細解析
  • 予測不能だったゲリラ豪雨や竜巻を事前に知らせる防災技術への大きな一歩

世界初!予測不能のゲリラ豪雨や竜巻をもたらす積乱雲を正確に捉える

突然発生し大きな被害をもたらすゲリラ豪雨や竜巻を近い将来、予測することが出来るかもしれない。
実現すれば事前に防災対応が可能となり大きな被害から免れることが出来るだろう。
その可能性を大いに感じさせる最新の機器を使った研究結果が明らかになった。

気象庁の研究機関が、積乱雲から突風が発生するメカニズムの詳細な解析に世界で初めて成功したのだ。
この研究成果は5月19日に日本気象学会で発表される。

台風の接近に伴い多く発生する竜巻などの突風は、非常に局地的かつ現象が急速に変化するため、現行の気象レーダーではうまく捉えることが出来ない。なぜなら今ある気象レーダーから発射されるビームは幅が狭く細いため、雲域や雨域全体をとらえるにはアンテナを上下に振りながら回転させなければならず、全体像を捉えるまでに10分ほどの時間がかかってしまう。
そのため数分間で発達したり通り過ぎるような急激に変化する大気現象には対応できないからだ。

次世代の気象レーダー「フェーズドアレイレーダー」の性能のすごさ

提供:気象研究所

一方、気象研究所が平成27年7月から研究運用を始めた次世代の気象レーダーである「フェーズドアレイレーダー」から発射するビームは面的な幅広のものなのでアンテナを上下に振る必要がなく、ぐるりと1回転で積乱雲など全体のスキャンが終わる。
内部の詳細まで観測出来る3次元スキャンに要する時間はわずか10~30秒と高速だ。

短時間に刻々と変化する現象を立体的かつ連続的に捉えることが出来るこの最新鋭の気象レーダーがあれば、局所的で急激な大気の現象を発生からずっと追いかけられるのだ。
この「フェーズドアレイレーダー」は今のところ日本とアメリカにしかないものだそうだ。

今回の研究成果が世界初たる所以は、ひとつの事象に対し2台のフェーズドアレイレーダーを組み合わせた解析に成功したことである。

これだけ最新鋭の機器でありかつ研究段階であるために、レーダーでカバーできる範囲が重なり合うほど近距離で設置されている例が少ないのだ。発達する積乱雲を30秒ごとに立体的に読み取れるレーダーを2台組み合わせることで、雲の中の雨域の動きに加えて風の動きを正確に捉えることが可能になるのだ。
離れた場所にある2台のレーダーが観測した風のデータを合成することで、実際の風向と風速を算出するという。

埼玉県草加市の突風をもたらした積乱雲の解析

気象研究所および日本無線株式会社が所有するフェーズドアレイレーダーのデータを解析に利用

この手法で観測したのは、平成29年の7月4日の午後10時頃、台風3号の接近にともなって埼玉県草加市で突風被害をもたらした積乱雲だ。

この日、レーダー観測を続けていた茨城県つくば市にある気象研究所と、南におよそ60キロ離れた千葉県千葉市に設置された日本無線が持つ2台のフェーズドアレイレーダーの間で積乱雲が急速に発達し、突風を発生させたのだ。

この時の突風は気象庁などの調査では、発生が夜間のため決定的な目撃情報もなく「竜巻」と断定はされなかったのだが、2台の最新鋭の気象レーダーは積乱雲の南東側で発生する強い渦を伴う突風の動きをしっかりと捉えていた。

竜巻やゲリラ豪雨の予測の実現への大きな一歩

提供:気象研究所

今回の研究では、2台のレーダーそれぞれがリアルタイムで観測したデータを合成して計算し詳細な解析をするのにおよそ半年かかったが、積乱雲の中でわずか5分間で急速に成長するまとまった雨域の落下によって、強い渦を巻いて突風が発生する一連の様子を明らかにすることに成功した。

今後さらにデータを収集し研究を重ねながら、リアルタイムデータをいち早く処理し防災情報として発信するための技術開発が課題で、実用化までの道のりは容易ではないだろう。
しかし世界で初めて成功したこの次世代レーダーによる局所的な気象現象の解析手法は、将来的にゲリラ豪雨や竜巻などを精度よく予測する技術の完成に必ずつながっていくはずだ。

今回の世界初の研究成果を発表した気象研究所の足立透主任研究官は記者説明会の席で、こう言って胸を張った。
「今回は第一歩を踏み出すことが出来ただけ、しかしこれは大きな一歩である」


(執筆:フジテレビ 社会部気象庁担当 長坂哲夫)