世界自然遺産の登録延期勧告…“道”は絶たれたのか?

加藤崇
カテゴリ:地域

  • 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」登録延期の勧告
  • 勧告「受け入れ」「受け入れない」それぞれでの『登録可能性』と『リスク』
  • 環境省に迫られる難しい判断

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の延期勧告

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」について、ユネスコの諮問機関が世界自然遺産の登録延期を勧告。
登録への道は絶たれたのか?

「 世界遺産一覧表への記載を延期することが適当」

これがユネスコの諮問機関である国際自然保護連合からの勧告の文書を和訳したもの。
つまり「今回は世界遺産への登録は諦めて、もう1回出直したほうがいいですよ」というものである。

なぜ、出直さなければいけないのか。 

奄美大島

希少種がいない地域も…登録延期勧告の理由

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は鹿児島県と沖縄県にまたがる4つの島で構成されていて、合わせて3万7946ヘクタール。

環境省などは豊かな自然が残るなか、ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコなど島で独自の進化を遂げた生物や絶滅危惧種などが数多く生息しているなどとして世界自然遺産として推薦している。


登録延期を勧告した国際自然保護連合がその理由について

①「細かく分断されている地域があることで、独自に進化した生態系などを将来に渡って保全することに重大な懸念がある」

②「分断された地域同士を繋ぐためにも、アメリカから返還された沖縄本島の北部訓練場を推薦地域に加えることが必要」

③「希少種がいないなど基準に満たない小規模な地域を除く必要がある」

などとした。

実は「奄美・沖縄」は4つの島で構成されていると言っても、道路を含め人が住んでいるところなどを除いているため24の地域に分かれている。

その中にはかなり面積が小さく、希少種もいない地域もあるとのこと。

国際保護連合はその地域を世界自然遺産の価値がない、もしくはその価値を将来に渡って保つことができないと勧告してきたのである。

北海道・北東北の縄文遺跡群
佐渡鉱山の遺産群

勧告受け入れ、推薦し直した場合の大きな問題

では勧告を受け入れた場合、どうなるのか。

政府は今の推薦書を取り下げた後、推薦書を作り直したうえで、改めてユネスコに出しなおす必要がある。

現状、勧告を読む限りでは、推薦する地域を絞り込んだ形で作り直せばいいとも読めるので、そんなに時間をかけずに推薦書を作り直せる可能性がある。

作り直した推薦書を来年1月末までに提出すれば、登録は早ければ2年後ということに。

とは言え、そこには大きな問題が…。

これまでは世界遺産への推薦は1カ国につき文化遺産、自然遺産、それぞれ一つずつ行えた。

しかし、来年から世界遺産の推薦は1つの国につき、文化遺産、自然遺産合わせて一つまでと規定が変わってしまうのである。

日本の来年の世界遺産の推薦は「北海道・北東北の縄文遺跡群」や「佐渡鉱山の遺産群」などが争っていて、そこに今回、登録延期を勧告された「奄美・沖縄」が割って入ることができるか、見通しは不透明を言わざるを得ないのが現状なのである。

徳之島

勧告受け入れないケースの「登録可能性」と「リスク」

ほかに方法はないのか。

勧告を受け入れないというやり方もある。

国際自然保護連合の勧告には事実誤認があり、登録されるべきものだと主張し、推薦書を取り下げなければ6月から中東のバーレーンで開かれる世界遺産委員会で登録の可否について21カ国の委員が審議することになる。

日本が熱意を伝えれば、勧告の意図に反して登録される可能性もある。

しかし大きなリスクもある。

それが万が一、世界遺産委員会で、評価結果で一番下の「登録にふさわしくない」との判断がされると二度と推薦できなくなるという危険があるのも事実。

どういう判断を下すのがベストなのか。

4日の環境省会見

地元で保全機運下がることが一番の懸念

環境省の担当者は「世界自然遺産への登録はゴールではなく、スタート」と話している。

世界自然遺産に登録が決まると、地元で改めて自然の保全への意識が高まり、固有種の保全だけでなく、外来種や観光客への対策なども進むことが多いとのこと。

しかし、今回「登録延期」という勧告が出されたことでそのスタートが見えなくなり、地元で保全の機運が下がることを一番、懸念している。

一方で、世界自然遺産への早期の登録を目指すためだけの推薦書作り直しは、本来、目指すべき「自然の保全」とは趣旨が違うことになりかねない。

地元自治体や周辺に住んでいる人などと慎重に検討して進めていく必要がある。

環境省は、勧告の内容を専門家などとさらに分析したのちに、地元自治体や関係省庁などと協議のうえ、今後の対応を決める方針だ。

白神山地、屋久島、知床、小笠原諸島に次いで5例目となる「世界自然遺産」登録のチャンスをめぐり、難しい判断が迫られる。

(執筆:フジテレビ 経済部 加藤崇)

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