「東京2020」その日、電車は止まり駅では大混乱が起きる…専門家が警鐘

カテゴリ:国内

  • オリンピックで増える観戦客は通勤客の1割弱
  • しかし、ターミナル駅では人が滞留し電車が止まる可能性も
  • 前後の駅から歩いてもらい「日本を知っていただく」

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまであと2年。
しかし、世界中が注目する中で胸を張って開催するためには、依然さまざまなハードルがある。

「人気競技が集中するある日の朝、首都圏の鉄道網はかつてない混乱が起きる」

中央大学理工学部の田口東(あずま)教授は、こう予測する。
情報工学の専門家であり、鉄道も研究対象にしている田口教授は、2005年に平日朝の東急田園都市線は急行をすべて各駅停車にしたほうが混雑は緩和されると指摘し、東急はその後ラッシュ時間帯の一部区間で急行運転をやめている。
そして2016年に田口教授は、東京五輪での鉄道混雑を推計する広域シミュレーターを開発。
開催中に増加する観戦客の影響や、あらゆる緩和策の効果などを検証している。

そこではじき出された「首都圏の鉄道網のかつてない混乱」とはどのような状況なのか。

その日、何が起きるのか?

シミュレーション画像、出典:東京オリンピック観戦客輸送の余裕を 首都圏電車ネットワークは持っているか

田口教授は、国土交通省の大都市交通センサスをもとに、首都圏の鉄道を使う1日の通勤通学者数を790万人と設定
さらに、オリンピック招致の際に作られた仮のスケジュールなどから、「もっとも混雑する日」は37会場で54競技が行われ66万人の観戦客が出るとして、さまざまな駅で1分ごとの人の流れを計算した。

素人目には、790万人の通勤客に対し10%に満たない観戦客が増えても、たいした影響はないように思ってしまうがいったい何が起きるのか?
田口教授に聞いてみた。

――その日、東京の鉄道はどうなるのか?

まず競技場の最寄り駅では、競技の開始時間に合わせて通常では見られない非常に多くの人々が集中します。
これは10%増などはなく2倍とか増えることになるので、あらかじめ何らかの対策が取られるでしょう。

もう一つは、東京オリンピックはコンパクトだとしつつも競技場が分散しているので、乗り換え駅に人が集中します。
朝の通勤客で混んでいるところに観戦客が増えると電車が動かなくなる可能性があります。
朝のラッシュ、午前8時~9時の1時間が一番怖いところです。

「東京駅」「新宿駅」「永田町駅」は要警戒

――その時、乗り換え駅はどうなるのか?

たとえば高速道路の渋滞は、車が上り坂やトンネルで少し速度を落としたり、流入点で少し増えたりすることが引き金になって起こります。
それと同じことが、朝の「東京駅」「新宿駅」とかで起きて、人が進まなくなります。
オリンピックの観戦客は首都圏の鉄道に慣れている通勤客と違って右も左も分からないので、単に人数が増えるだけでなく、混雑のより強い要因になるでしょう。
わずかでも人が進まなくなる現象が起きると、次から次に人が増えさらに進む速度が落ちていきます。
そしてホームが人でいっぱいになると電車への乗り降りができなくなり、それで電車も止まります

観戦客は東京メトロもよく使うことになるので「永田町駅」も混雑します。
朝の通勤客で混んでいるところに観戦客が乗ると、電車が動かなくなることに気が付いてほしいんですが、対策はとりにくいでしょう。
それが怖いところだと思います。

前後の駅から歩いてもらい「日本を知っていただく」

――観戦客への対策は?

まず、競技場の最寄り駅は、前後の駅から歩いてもらうのが一番だと思います。
学術的な記事では書きにくいことですが、普段とは違いたくさんの人が来るので「商売」にとってもいい機会でしょう。
商売という言い方が悪ければ「日本を知っていただく」いい機会だと言えます。
暑い時期だから涼しくする工夫をしたうえで、1つ2つ前の駅から歩いてもらい、そこでいろんな商売をする。
競技場は、開始時間より早く来てもらうよう宣伝して、スポーツ教室や楽しいショーを開くなど、時間もお金も使っていただく。
普通の混雑緩和方法のような寂しい話ではなく、せっかくの機会にきちんとサービスして喜んで帰ってもらいましょうというのが僕の真意です。

――通勤客への対策は?

休んでもらうしかないと思います。
または、人数を減らさなければどうにもならないでしょうから、混雑する駅を使う会社・学校・役所などに「〇日は電車を使わないでください」と具体的に言えば解決するのではないか思います。

――帰宅ラッシュは大丈夫なのか?

帰宅時は、ラッシュそのものの時間が分散しているのでわりとマイルドなんです。
朝のラッシュのピークを1とすると帰宅時は半分ぐらいです。
ただこれは全体の話なので、夜でも混みあう駅や電車に五輪の観戦客が乗ってくると、やはり危ないと思います。
こっちもあっちも危ないと言ってるとオオカミ少年みたいなので、朝について強く言っているわけですが、夜も気を付けないといけないでしょう。

2020年は祝日が大移動…その効果は?

東京五輪の混雑を緩和するため、2020年は大会開催時期に合わせて祝日を移動させる動きがでている。
五輪は7月24日から始まるが、本来7月20日の「海の日」が大会前日23日に移動。
10月12日の「体育の日」が開会式の24日に、8月11日の「山の日」は閉会式翌日となる10日に移動するというもの。

――祝日を移動する効果はあるのか?

効果はあるとは思うので否定はしませんが、他の日は別の対策をしないといけないでしょう。
混雑対策で「3日休みにしました」というアドバルーンを上げただけにならないようしていただきたいですね。

田口東(あずま)
中央大学情報工学科教授
東京大学工学部卒業し、中央大学理工学部長、横浜山手女子学園理事長を歴任。
通勤電車の遅延計算モデルなどの研究で2017年に日本オペレーションズ・リサーチ学会 第6回「近藤賞」を受賞。

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