米朝協議を控え、強化される北朝鮮監視の目

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  • 北朝鮮の国連制裁違反監視にカナダ、豪の哨戒機、英艦隊が参加へ 
  • 英・加・豪の“瀬取り”対策は、監視にとどまらない?
  • 米空軍は、新型核実験監視機を装備へ

南北首脳会談で合意された、対北宣伝用の大型スピーカーの撤去作業が5月1日始まった(参照:上画面)。次に控える米朝首脳会談に向けた雰囲気づくりにプラスへ働くのかもしれない。

英加豪が北朝鮮の密輸行為“瀬取り”監視へ

同日、沖縄県・嘉手納基地から、カナダ空軍のCP-140オーロラ哨戒機が離陸した。
画像手前に写るCP-140オーロラは、4月30日に国連制裁違反となる北朝鮮の洋上での貨物の受け渡し、いわゆる“瀬取り”活動の監視のため、嘉手納基地に展開した時のモノ。外観の形状は、米海軍や海上自衛隊のP-3Cオライオン哨戒機とほぼ同じだが、中身は、P-3Cとは異なる独特のシステムを使用していると言われる(参照:下画面)。

一方、同じ画像で、CP-140オーロラの背後に写っているのは、オーストラリア空軍のP-8Aポセイドン哨戒機。こちらも、いわゆる“瀬取り”監視に参加する。
すでに4月11日、神奈川県・横須賀基地に入港した英海軍TYPE23型フリゲート・サザーランドは26日に出港(参照:下画面)。英海軍の強襲揚陸艦アルビオンの極東到着を待って、海上で“瀬取り”監視に参加する。アルビオンは、英海兵隊員を400人以上搭乗させる他、甲板に大型ヘリコプター・チヌーク2機の発着艦ポイントを2か所持っている。

厳密に言えば、英豪加の3か国は、米国の様な日本の同盟国ではないが、朝鮮戦争時の国連軍地位協定によって、日本国内の横須賀や嘉手納など、7か所の基地を使用できる。また、この3か国の国家元首は、英王室のエリザベス二世。同一君主の下、軍の交流も盛んで、例えば、かつて、豪海軍の軍艦に英国籍の士官が搭乗していることもある。

この3か国が、どのように連携し、北朝鮮の瀬取り対策を行うかは不明だが、豪P-8Aポセイドンと加CP-140オーロラ哨戒機が空から広域監視を行い、強力な主砲や対艦ミサイルを持つサザーランドの監視の下、サザーランドの船舶立入検査/臨検隊や、アルビオンに搭乗する英海兵隊員が、対象となる貨物船やタンカーなどに昼夜を問わず、乗り込みを強行することも、物理的には可能になるかもしれない。

核実験等監視機「コンスタントフェニックス」の任務を引き継ぐ新型機

ところで、米空軍は、空気中の微粒子を集め、核実験が行われた場合には、それがプルトニウム爆弾によるものなのか、濃縮ウランによるものか、それとも水素爆弾その他なのか。また、弾道ミサイル発射試験の場合には、空中に残った燃えカスから、その推進剤は何かを調べる特別な偵察機、コンスタントフェニックスWC-135CWC-135Wを1機ずつ、計2機保有している(上画像は、WC-135W)。逆に言えば、たった2機で、全世界の核実験を監視し、弾道ミサイルの推進剤を調べるのだ。

北朝鮮は、どんな核実験を行ってきたのか。近年は、地下核実験となっていたので、核実験後の微粒子の空中への飛散、漏れが減り、識別が難しくなったとも言われるものの、日本海を挟んで北朝鮮と向き合う日本の安全保障という観点からも重要な航空機には違いないだろう。胴体から主翼の上に突き出したラグビーボールのような形のポッドが空気中の微粒子を集めるコンスタントフェニックス特有の装置だ。

ただ、1965年から運用しているため、コンスタントフェニックスの老朽化は著しく、コンスタントフェニックスの稼働率は、国防長官のみならず、このミッションについての戦闘指揮官の要望に応えられないほど低いとされ、このため、米空軍ゴールドフェイン参謀長は、4月24日、米上院軍事委員会の公聴会で、2019会計年度予算において、3機のKC-135R空中給油機を新たに「WC-135R型」核実験等監視機に改修する案を説明した。

WC-135R型機が、どのような集塵装置を持ち、どんな解析能力を持つかは不明だが、これによって、WC-135Rの活動は2050年まで維持できるという。米朝首脳協議を控え、米空軍は核実験監視体制を継続というより、強化するつもりのようだ。

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