年間“2000件”の暴行。知られざる刑務所での一触即発な日々

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  • 国内の刑務所では年間2000件超の暴行
  • 「寝ても覚めても一緒」という他人との共同生活がトラブルの元?
  • 刑務官ら職員への暴行も多く問題になっている

トラブルと隣り合わせの刑務所

愛媛県の“塀のない刑務所”から受刑者が逃走して23日目。ようやく容疑者が逮捕されました。
のべ1万5000人以上の捜査員に追われた容疑者。
これほどの”大脱走劇”に彼を駆り立てたものは一体何だったのでしょうか。

これまでの調べで、逃走理由について「刑務所での人間関係が嫌になって逃げた」「刑務官にいじめられた」と供述しています。

あと半年ほどで出所だったにも関わらず、逃げ出した容疑者。
その理由は、”常にトラブルと隣り合わせの刑務所での生活”にあったのかもしれません。

刑務所では年間2000件超の暴行

法務省によりますと、2016年の1年間に刑務所や少年院などの刑事施設で起こった受刑者同士の暴行はおよそ2100件にのぼります。
そのうち、全治1か月以上の重傷を負った事案は6件ありました。

暴行の原因は、ほとんどが受刑者同士のけんかです。
けんかの理由は「相手の生活態度が気に入らない」「担当の仕事をきちんとしない」など、些細なものばかりで、1対1のけんかもあれば、1人対複数人のけんかもあるということです。
多くが素手での殴り合いですが、時には椅子など備え付けのものが使われることもあります。

寝ても覚めても一緒の生活

刑事施設では、どのような場面でけんかに発展しているのでしょうか。

基本的に、受刑者は点呼や身体検査など集団行動をとっている時間は刑務官に監視されています。
それ以外の時間に受刑者同士の交流が生まれ、けんかに発展しているのです。

まず、受刑者が多くの時間を過ごす居室ですが、個室から最大6名程度収容するものまで様々なタイプがあります。
この居室では、就寝から朝・夕の食事、自由時間など、作業以外のほとんどの時間を過ごしています。
さらに日中の作業では、同じ居室の者がそのまま同じグループで作業に就くことが多いので、寝食を共にする同部屋の者と日中の仕事でも近い距離にあるケースが多いといえます。

そのため、ある特定の人たちとほとんど寝ても覚めても生活を共にしている状態が続くのです。

気が合う相手ならまだしも、他人との生活ですから、このような状況下でトラブルが頻発するのはある意味仕方ないのかもしれません。

部屋割りは性格も考慮して決定

府中刑務所

刑事施設では、事前に個人の事情に配慮して、部屋割りが決められています。
まず身体的にハンディキャップを持つ受刑者は部屋割りを配慮されるケースがあります。

また、個人の性格として、けんかをしがちだったり他者とコミュニケーションをとるのが難しいと職員に判断された場合は、少人数の部屋や個室が充てられることがあるということです。

しかし、実状は刑事施設によっては定員を超える受刑者が収容されている場合もあり、対応できる部屋の数に限界があるため、理想的な配分はなかなか難しいといいます。

刑務官とのトラブルも多発

刑事施設では受刑者同士のトラブルだけでなく、刑務官ら職員への暴行も多く問題となっています。
2016年の1年間で、受刑者による刑務官らへの暴行は530件にものぼっていて、毎日1回以上のペースで暴行を受けていることになります。

刑務官ら職員への暴行の理由としては「指導の仕方に腹が立ったから」「処遇に納得がいかなかったから」などがほとんどです。
暴行があるたびに職員の間で、受刑者への接し方について研修が行われていますが、1~2人の職員が複数の受刑者を監視することが多く、突発的な暴行への対策は難しいようです。

このように、受刑者は他の受刑者や刑務官ら職員と常に近い環境にあります。
一度、置かれた環境が嫌になるとその環境を変えようがなく耐えるしかないため、平尾容疑者も衝動的に”逃走”という選択肢に至ったのかもしれません。

今回の逃走事件を受け法務省は「受刑者の心情の把握に努めたい」としていますが、限られた職員が受刑者の心情・行動を把握するのは、かなり難しいのが現状と言えそうです。

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