F-16低空飛行映像は誰に見せるものなのか

三沢基地のF-16CMブロック50には、敵防空レーダーを停止、破壊する能力

カテゴリ:ワールド

  • 三沢のF-16の低空飛行は、地元にとって不安の種になりかねない 
  • 三沢のF-16は、敵防空ミサイル・システムのレーダーの破壊が任務
  • 低空飛行は、結果として「北への最大限の圧力維持」?

4月2日、青森県・三沢基地第35戦闘航空団所属のF-16戦闘機が低空飛行する様子がコックピット内の固定カメラから撮影された映像がYouTubeに投稿された。
天地の境をほぼ垂直にしながら、谷間を縫い、山肌が頭上に迫ってくる(参照:上画像)。風力発電用の風車の間を抜けた際には、高度は100メートルあっただろうか(参照:下画像)。眼下に民間の建物がくっきり見えるシーンもあった。騒音は、一瞬であったとしても、不安につながったのではないだろうか。

固定カメラは、コックピット前方のやや前方にセットしてある。F-16戦闘機本来のカメラとは別に。わざわざ取り付けたもののようだ。今回の撮影意図と映像の投稿理由は不明だが、三沢基地のF-16であることを考えると興味深いことがある。

米空軍のF-16戦闘機は、部隊ごとに任務と能力が異なるが、三沢基地の第35戦闘航空団のF-16は、一人乗りが、F-16CMブロック50(参照:タイトル画像)、二人乗りがF-16DMブロック50という機種だ。

航空軍事評論家の石川潤一氏によると、F-16CMやDMは、敵の防空ミサイル・システムの眼にあたる対空レーダーの電波を受信、解析する「HTS(参照:下画像)」という装置を空気取り入れ口の左下に取り付け、そのデータを主翼の下吊り下げた「HARM(参照:上画像)」というミサイルに入力。HARMは、その電波の発信源である敵対空レーダーに向かって飛び、破壊する。
ただ、これでは、敵がレーダーを一時的に停止するとHARMは、標的を見失う可能性があるため、F-16CM/DMブロック50型機は、山間を縫って、敵レーダーに接近。敵にレーダーを停止する猶予をあたえないよう、ギリギリのところで、上昇。敵レーダーの電波を敢えてHTSに浴びて、HTSが読解した敵レーダーが放射している電波のデータを瞬時にHARMに送付し、発射する。

また、三沢のF-16CM/DMブロック50型機には、レーザー誘導爆弾やGPS誘導爆弾を精密に誘導するための「スナイパーポッド」という装置も空気取り入れ口の右下に装着可能で、電波を停止した敵レーダーをGPS誘導爆弾やレーザー誘導爆弾で完全に破壊することも出来る。HTSとスナイパーポッドは、F-16CM/DMブロック50型機に、同時に装着可能だ。

こうして、敵の防空網の眼である、対空レーダーが機能しなくなれば、その空中の“穴”から、巡航ミサイルや戦闘攻撃機に攻撃機、さらには、爆撃機も突入し、敵に損害を与えることが出来る。つまり、F-16CM/DMブロック50型機が、開けた敵防空網の”穴”から、味方がすかさず突入し、敵の損害を拡大することが出来るはずだ。航空作戦の文字通り、突破口を開くのが、三沢のF-16CM/DMブロック50型機の部隊となりそうだ。

このような一連の作戦を実行に移す場合の最大の前提は、三沢のF-16CM/DMブロック50型機が、山間を縫い、低空を飛ぶこと。飛行機の性能とともに重要なのは、パイロットの練度だ。
今回の映像は、地元にとっては、当然、騒音や安全性などで不安の種となったかもしれない。だが、見方を変えれば、三沢のパイロットの練度とF-16CMブロック50型機の性能が高く維持されていることを証明するものであり、上記のような作戦を実行に移すことは可能であることを示唆している。

4月30日、就任したばかりのポンぺオ米国務長官と河野外相との日米外相会談で、両国は「北朝鮮が全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な廃棄に向けた具体的な行動をとることが重要であり,最大限の圧力を維持しなければならないとの認識で一致」したばかりである。北朝鮮にとっては、三沢基地のF-16が、低空を山間を縫って、飛行すること自体が「最大限の圧力」と映ったのではないだろうか。

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