【木村太郎】「核を持った統一朝鮮」ができてしまう

カテゴリ:ワールド

  • 南北首脳会談の焦点は「北の核廃棄」ではなく「南北統一」の道筋をつけることだった
  • 金正恩委員長もこの会談が「統一」に向かっての新しい歴史の出発点であることを宣言
  • 「非核化」は米朝会談に先送りでも「統一」へ向けての南北の決意は固い

文在寅大統領の胸元に輝く水色のネクタイ

「やはりそうなのか」

歴史的な板門店の南北首脳会談の際、金正恩北朝鮮労働党委員長を迎えに出た文在寅韓国大統領の胸元を見てそう思った。
そこには、目にもまぶしい水色のネクタイがしめられていた。
平昌五輪などで使われた南北統一旗に描かれた朝鮮半島の色と同じだった。

この首脳会談の焦点は北朝鮮の核廃棄と言われてきたが、文大統領はこの機会に南北統一の道筋をつけることを考えているのではないかと言われていた。

文大統領は、盧武鉉元大統領の側近として北朝鮮訪問に同行したり、両親が北朝鮮からの避難民で未だに北側に親族がいることもあり、南北統一を政権の最重要課題にしていると言われていた。事実、就任直後の昨年7月6日独ベルリンで演説し、北朝鮮に対して統一のための対話を呼びかけていた。

「ベルリン構想」とも呼ばれるこの演説で文大統領は、北朝鮮と共存する「一国二制度」方式の統一を提唱、平昌五輪に統一選手団を派遣することをきっかけに対話の開始を呼びかけていた。

南北首脳が「統一」という共通の目的意思を持った

一方の金委員長もその呼びかけに応える形で平昌五輪以来融和策を打ち出してきたわけだが、今年3月5日文大統領の特使を迎えた際に「国の再統一の新しい歴史を書きたい」と語った。南北首脳が「統一」という共通の目的意思を持ったことになる。

さらに金委員長は、首脳会談に先立って芳名録に記帳した際も「新しい歴史はこれから。平和の時代。歴史の出発点にて」と書き、この会談が「統一」に向かって新しい歴史の出発点であることを宣言した。
 
つまり、今回の首脳会談では「統一」こそが主要テーマに他ならず、文大統領のネクタイがそのことを鮮やかに物語っていたのだ。

「非核化」は共同宣言の独立した項目にならず

首脳会談もその筋書き通り進んだようで、発表された共同宣言は先ず南北の和解を実現するため、離散家族の再会や非武装地帯での宣伝戦の中止などを約束し、今も戦争が続いていることを意味する「休戦協定」を終わらせることなどをうたっている。

周囲から注目された「非核化」は確かに「南北の共通の目的」として挙げられてはいるが、それは南北の平和構築に関する条件の一つに挙げられているだけで共同宣言の独立した項目にはなっていない。

非核化問題は米朝会談に先送りされたとも言えるが、それがどうあろうとも統一に向けての南北の決意は変わらないというようにも共同宣言は読める。トランプ大統領との間で非核化の合意ができない場合、「非核化」は「南北の共通の目的」として棚上げされたまま統一に向けての動きが続くのかもしれない。

その結果どうなるのかといえば、「核を持った統一朝鮮」の実現ではないのか。

(イラスト:さいとう ひさし)

南北首脳会談の他の記事