“電撃復帰”の神風は吹くか… 誰を推す?迷走の谷垣グループ

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  • 派閥じゃない「谷垣グループ」の波瀾万丈
  • 深い遺恨が生み出す総裁選への迷走
  • 起死回生の秘策は谷垣氏“電撃復帰”?

派閥じゃない!「谷垣グループ」とは?

安倍晋三首相の3選か、それとも岸破聖太郎とも呼ばれる、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、野田聖子総務相、河野太郎外相のいずれかが首相に上り詰めるのか…。秋に予定される注目の自民党総裁選のカギを握るのは、かつてほどの力は無いとはいえ、やはり派閥だ。

自民党には現在7つの派閥があるが、それと別に派閥のようで派閥とは呼ばれない、しかし総裁選の行方を左右する可能性のある集団がある。それが「谷垣グループ」。その名の通り谷垣禎一元総裁・幹事長を中心とした集まりだ。


2012年、民主党からの政権奪還まであと一歩に迫っていた自民党を総裁として率いていた谷垣氏。しかし総裁選挙で、当時幹事長として谷垣氏を支えていたはずの石原伸晃氏が有力候補として出馬。さらに出身派閥である古賀派(現在の岸田派)の支援も得られなくなり不出馬に追い込まれた

こうした確執によって古賀派を離脱して結成されたのが谷垣グループだ。

谷垣グループが「派閥」ではなく「グループ」と呼ばれる理由は、派閥と異なり、他派閥との掛け持ちも認めていることだ。2000年のあの「加藤の乱」の時から谷垣氏と行動を共にする中谷元防衛相や川崎元厚労相、逢沢元国対委員長ら一騎当千のベテランから、安倍チルドレンともいえる若手まで、約20人の議員が名を連ねている。

安倍政権での重用から自転車事故で暗転

2012年の総裁選で不出馬に追い込まれた谷垣氏だが、安倍政権では法相として入閣。その後、石破茂氏に代わって、党の要である幹事長に起用されるなど、安倍首相に重用された。谷垣グループの所属議員も、中谷氏が防衛相に、遠藤利明氏が五輪相に就任するなど存在感を発揮し、安倍首相が将来、谷垣氏に政権を禅譲する可能性もささやかれていた。

 しかし2016年7月に運命は暗転した。谷垣氏が、趣味の自転車で走行中に転倒事故を起こしたのだ。谷垣氏は頸髄損傷により入院を余儀なくされ、幹事長を辞任した。ちなみにこの事故は、自民党が擁立した候補と小池百合子氏らが戦う東京都知事選挙の真っ只中だったが、サイクリングを楽しんでいたことへの批判が上がらなかったのは、谷垣氏の人望ゆえといえる。

 しかし谷垣氏のリハビリが長引き、支柱を失ったグループは動揺した。幹事長時代の谷垣氏を支えた棚橋泰文氏は若手に声をかけてグループを離脱。そして2017年の安倍首相による突然の解散総選挙に際し、まだリハビリ中だった谷垣氏は「後進に道を譲る」として不出馬を表明したのだ。ある自民党職員は、引退の一報を聴いて涙を流していた。

トップを失い迷走?他派閥との連携模索

では、トップを欠いた今、谷垣グループは、秋の総裁選で誰を推そうとしているのか。

安倍首相と谷垣氏の間柄は、自民党の野党時代を支えた谷垣氏に安倍首相が敬意を払う、特殊な連帯関係にあるが、谷垣氏は元々リベラル派で、党内きっての財政再建論者だ。保守派で経済成長重視の安倍首相とは政策が真逆であり、グループとしても安倍首相の3選をすんなり支持できない土壌がある。

そうした中、グループは今、他派閥との連携を模索しているのだが、いわば迷走状態だ。

 ある幹部は、石原派の最高顧問であり、“反安倍”を鮮明にしている山崎拓元副総裁と会談を重ねている。別の幹部も山崎拓氏を含む石原派の幹部との会合を重ねるのは「(両派が)連携するためだ」と明言している。さらに両派の合併を視野に入れる者もいる。

「反安倍」鮮明の山崎拓氏

 一方で、2012年の総裁選で袂を分かった岸田派との連携を模索する動きも出ている。

今年3月には岸田派の古賀誠名誉会長と谷垣グループ幹部が会談、連携に向けて柔軟姿勢を見せた。また、岸田派との別の会合に出席した谷垣グループ幹部は「もともと同じ仲間だ」と親密さをアピール、岸田氏が出馬した場合、支援に回る可能性は十分ありうる。

元仲間の岸田氏を応援?

連携に立ちはだかる過去の遺恨

しかし、こうした連携はすんなり進みそうにはない。それはやはり先述の2012年の総裁選をめぐる確執だ。

石原派との連携については、当時「平成の明智光秀」とも言われた石原氏の出馬を引き金に、谷垣氏が不出馬を余儀なくされた遺恨は深く、連携に慎重な声は根強い。ある若手議員は、「谷垣氏を不出馬に追い込んだ石原氏がいる派閥と合併するなら自分は派閥に入らない」と反発し、幹部は今後の選択肢を広げる意味でやっている」などと釈明に追われた。

 岸田派との連携も同様で、総裁選で古賀誠氏から支援を拒否され、はしごを外された谷垣氏が、推薦人集めが苦しくなり不出馬に追い込まれた遺恨もまた深い。グループ内からは「古賀氏が名誉会長でいるうちは岸田派には戻れない」との声も漏れる。6年前の総裁選の傷はそれほど大きく、深いのだ。

ある幹部からは石破氏に乗るのも選択肢だとの声も聞かれるなど、総裁選に臨むグループの戦略は一向に見えない。

谷垣氏の政界復帰で起死回生?

では今、谷垣グループが一丸となって総裁選に臨める起死回生の秘策はあるのか。そこで浮上しているのが“谷垣氏の電撃復帰”だ。
6月に開かれるグループのパーティに谷垣氏が出席し、2019年の参院選で全国比例候補として政界に復帰するというものだ。

幹部は谷垣氏の復帰によって、グループの結束が取り戻され、他派閥とのトップ交渉による大胆な連携や合併も可能になり、「党内のリベラル勢力の旗印になる」と期待している。
しかし、谷垣氏の体調は回復してきているものの万全にはほど遠く、また谷垣氏自身、前回の総選挙で不出馬を決めた背景には、自らが弱っているところを見せたくないという頑なさがあったといわれるだけに、現状では復帰の実現可能性は低いと言わざるを得ない。そうすると派閥の軸はないままとなる。

 石原派との合併、岸田派との連携、石破氏支援、安倍3選支持など、総裁選に向けた様々な選択肢が交錯する中、迷走の末に方針を決められず各陣営の「草刈り場」になる恐れもある谷垣グループ。谷垣氏復帰という神風は果たして吹くのか…。わずか20人程度のグループではあるが、その動きと深い悩みに、永田町の注目が集まっている。


(政治部 自民党担当 門脇功樹)

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