小学生に高級服は不適切? アメリカの学校で制服導入が進むワケ【世界の制服:アメリカ編】

アーロン・メイズラー
カテゴリ:ワールド

  • 「小学生なのに高級服を着せるのは不適切」泰明小学校を脅した少年が逮捕された
  • アメリカでは”安全”や”防犯”の観点から制服導入が増えている
  • 都市部の学校の41%が制服導入でも、リッチか貧困層か制服採用は両極化

アルマーニ監修の標準服を採用した東京・銀座の泰明小学校を脅した疑いで、24日中学3年生の14歳の少年が書類送検された。
 少年は「いい加減にしないとナイフで特攻しちゃいますよ」とインターネットに書き込んだ疑いが持たれている。

調べに対して少年は、「小学生なのに高級な標準服を着せるのは不適切だと思った。」と供述している。
世界の制服第4弾、アメリカの事情を報告する。

「服装は個性」でも制服導入が進むアメリカの実情

“自由の国”アメリカでは、制服はメジャーではない。
学校の多くが、タンクトップやヘソ出し禁止など「ドレスコード」を定め、違反者にペナルティを与えるものの、お国柄、服装を個性としてみなす向きが強い。

「制服は若者の独創性を殺してしまう」というのが大方のアメリカ人の意見だ。
にもかかわらず、最近、アメリカならではの理由で、制服の導入が進んでいる。

どのような学校が、制服を導入しているのか。

実は、低所得者が多く犯罪率が高いエリアの公立学校で、制服の導入が進んでいる。
国立教育統計センターがまとめたレポートでは、制服が金属探知機などと同様に、「安全対策」の項目に分類されている。
つまり、アメリカの公立学校は「安全」や「防犯」の観点から、制服を導入している。

ルイジアナ州の公立中学校

制服導入を推進したのはクリントン元大統領

制服導入を推し進めたのは、ビル・クリントン元大統領だ。

「学校は制服を採用するべきだ。10代の若者が高級ジャケットを巡って殺し合うことがなくなるだろう」

相次ぐ学校での暴力事件に歯止めをかけるため、クリントン元大統領は1996年の一般教書演説で制服導入の必要性を大きく打ち出した。
その結果、現在、都市部の学校の41%が制服を導入している。
この導入率は、アメリカ人にとっても驚きの高さである。

統計によれば、制服を導入した公立学校は、2000年から2016年にかけて12%から21%に増加。
中でも、給食費無償など資金的な援助を受ける低所得者エリアで制服の採用率が高い。
それらのエリアは、ギャングやドラッグと言った深刻な問題を抱えている。
制服は、貧富の格差やギャング問題に起因する暴力を防ぐために増えているというのが、アメリカの実情だ。

リッチか貧困層か 制服採用は両極化

一方、私立の名門校では、日本と同様、学校のブランディングとともに生徒に「プロ意識」を身に着けさせるため、制服を導入している。

「公立学校は制服をめぐる議論を続けているが、制服には大きなメリットがある」
アメリカ初の宇宙飛行士アラン・シェパードを輩出した名門校アドミラル・ファラガット・アカデミーも英才教育の一環として、制服を採用している。
また、文教エリアでは、同様の理由で制服を採用する公立学校もある。

奇異なことに、アメリカで制服を導入するのは、富裕層か貧困層という正反対の学校ということになる。
制服は、相次ぐ暴力を防ぐためのツール、ところ変われば、競争の激しい「弱肉強食」のアメリカで勝ち上がるためのツール、なのだ。

ちなみに、公立学校の制服の平均価格は150ドル程度。
差し迫った理由で制服を導入するアメリカにとって、日本で巻き起こった「アルマーニ議論」は若干、平和に映るかもしれない。


筆者の高校生時代(左端)

(執筆:FNN ワシントン支局 プロデューサー アーロン・メイズラー)

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