もう悩まない!並ばずに100店舗から選べる「ランチ回数券」がアメリカで話題

サンフランシスコから最新ITサービスをレポート

三浦茜
カテゴリ:テクノロジー

  • 米国で「サブスクリプション型」ビジネスが拡大中。MealPalという月額払いのランチサービスがある
  • MealPalは複数のレストランをネットワーク。ユーザーとお店がWin-Winとなるビジネスモデルを実現
  • 当たり前すぎて気づきにくい小さな課題にこそ、大きくスケールするチャンスがある

今日のランチなんにしよう問題

おそらく大半の方がかかえている「今日のランチなんにしよう問題」。そしてサンフランシスコ在住である私の平均的なランチ相場は12-15ドルと高い…。以前の私は悩みつつも、10ドル程度で買える数軒のレストランをローテーションしていました。

そんな時に使いはじめたのがこのランチサブスクリプションサービスのMealPal。このサービスによりランチのバリエーションが一気に増えました。「サブスクリプション」は毎月定額で支払う定期購読のようなシステム。単発でなく継続的な売上につながるため、米国のスタートアップが積極的に取り入れている手法です。

私が既に半年以上使い続けているこのMealPalは、ユーザーにとって便利なだけでなく、ランチを提供するレストランにとってもメリットが多く、非常に見事なビジネスモデルです。

MealPalとは

2016年創業、米国だけでなく、ロンドン、シドニー、パリなども含め世界15都市でサービスを展開するランチサブスクリプションサービスのMealPal。直近では昨年9月に$20Mもの資金を調達し、大きく拡大しているスタートアップです。

サブスクリプションの料金は、月20食で月額120ドル、12食で77ドル、6食で42ドルと3つのコースから選べます。簡単にいうとランチの回数券を毎月購入するようなイメージ。回数券は1ヶ月以内に使い切らなくてはいけません。

MealPalが地域のレストランをネットワークしており、ユーザーは毎日複数のレストランが提供するメニューから、好きなものを選ぶことができます。私が住むサンフランシスコでは、100店舗超のレストランがMealPalに参加しているので、私は100種類からランチを選ぶことができます。

お持ち帰りサービス

ただMealPalはデリバリーサービスではなく、お持ち帰りサービス。ユーザー自身がレストランに出向き、ピックアップする必要があります。そのため私は会社から2-3ブロック内のレストランから選んでいます。

ランチメニューは前日17時に公開され、リマインドメールが送られてきます。私はいつもその時点で予約を完了。というのも、時間が遅くなると、人気のメニューは売り切れてしまうんです。メニューと15分刻みのピックアップの時間を設定すると、予約番号が表示されます。

あとは指定した時間にお店に取りに行き、予約番号を伝えて受け取るだけ。

とてもシンプルな仕組みで、斬新さは感じないかもしれませんが、これが結構よくできてるんです。それぞれのメリットをまとめました。

ランチを食べるユーザー側のメリット

ランチ選択画面

なんといっても1食あたりが安い!
コースによって多少異なるものの、1食6ドル前後。サンフランシスコの平均的なランチ相場は12-15ドル程度。6ドルで食べられるのはかなりの節約になります。

行列に並ぶ必要がない
事前予約なので、カウンターの行列をスキップして受け取ることができます。昼時の人気店は多かれ少なかれ行列ができているので、時間の節約にもなって嬉しい。ちょっとした優越感もありますしね。

新しいお店を発見できる
普段は行かないお店を選択することもあり、新しいレストランを発見するきっかけにもなります。素通りしていた店、近くだけど裏路地で気付かなかった店、ちょっと距離があると思って避けていた店などなど。Mealpalで食べて美味しかったお店に、後日ディナーで訪れたことも。これはお店側にとってもメリットですよね。

店を選ぶ、メニューを選ぶの2ステップがない
通常ランチはお店を選び、そしてメニューを選ぶという2ステップ。MealPalを使っている私の場合は2-3ブロック以内のレストランで表示されているメニューから選ぶことになるので、ワンステップ少ないんです。小さな差ですが、このワンステップの即断即決が、個人的に気に入っています。

レストラン側のメリット

実際に提供されるランチ

既存のリソースで対応できる
Mealpalのユーザーはお持ち帰りなので、レストランの席数を増やすことなく、キッチンの稼働をあげれば対応可能です。事前注文なので、忙しくなるランチ前の時間に下準備することもできます。

1日1メニュー
1レストランにつき1メニューです。ユーザーはお店をまたいで複数のメニューから選べるので1つのレストランが1メニューでも全く問題ありません。1種類であれば、材料調達コストも下げやすいと思いますし、かつ受け渡し時のオペレーションもシンプルです。

事前に需要が予測できる
受付時間や数量はレストラン側でコントロールできるので、事前の需要予測ができ、無駄なくお持ち帰り分を用意することができます。普段ランチボックスを置いてないお店でもMealPalでのみ、ランチ時の対応をしているところもあります。

ユーザーに発見してもらえる
この点は先ほどの説明通りで、ランチ時にひしめき合うレストランの中から選んでもらえる可能性が出てくるわけです。新たなユーザー獲得にもなり、後日再訪の可能性も出てきます。

利用しているレストランのインタビュー記事などを読んでも、非常に好意的に受け入れられているようです。スタートアップビジネスの場合「このビジネスモデル、ベンチャーキャピタルのお金がないと回らないのでは…?」とか「確実に誰かが割を食っているよな…」ということもよくあるのですが、MealPalは理にかなったサービスに思えます。

そしてそれを仲介するMealPal自体の収益モデルは、公開されていませんが、以下なのではないかと予測しました。

Mealpal自体の売り上げ

1食ごとのマージン
レストラン側からの売り上げです。1食6ドルなので、そのうちのどの程度かはわかりませんが、毎日発生するものなので、積み上げでかなり大きくなるのではないかと思います。

例えばマージンが1食あたり1ドルだとしても、ユーザー数が10万人、そのユーザーが週3回(=月12回)MealPalを使うとすると、1ヶ月の売上は1ドルx10万人x12=1,200,000ドルです。

ユーザー数は公開されていませんが、MealPalは現在米国だけでなく、ロンドン、シドニー、パリなども含め15都市でサービス展開中。10万人以上ユーザーがいるかもしれません。またこの売上、サブスクリプションモデルなので、毎月課金でユーザーが増えれば増えるほど売上は積み上がっていきます。

使い切らなかった回数券
ここまでべた褒めなので、さぞ毎日のように使ってるのだろうと思いますよね?でも、意外と毎日は使わないんです。友人とランチの予定があったり、外出の予定がありランチは出先で食べることになったり。ということで、回数券を使い切ってない人も多いのではないかと思います。かくいう私も、毎月数回残してしまうこともしばしば。

使い切らないと金額的なメリットは薄くなってしまうのですが、ユーザーとしてはなんとなく6ドルで食べれている気持ちのままです。また金額的なメリットが実質なくても、色々選べるランチ、そして行列に並ばなくてよいメリットを享受してしまうと、なんとなく継続してしまいます。使われなかった分はそのままMealPalの売上になるので、そこからの売上も大きいのではないかと予想しています。

デリバリー競争が激化の中に現れたお持ち帰り型

このMealPal、素晴らしいモデルですが、デリバリー系のスタートアップの競争が激化する中、ユーザーにレストランに取りに行かせるモデルは、ちょっとしたチャレンジだったのではないかと思います。

サンフランシスコは、UberEatsやPostmates、DoorDash、Caviarなどデリバリーがさかんな街でもありますが、デリバリーする場合1食あたり15-20ドルほど。さすがに毎日は厳しい金額です。

MealPalの場合、お持ち帰りにすることで安価になり、その点がデリバリーとははっきりとした差別化になっています。最近では、デリバリー型のサービスがお持ち帰りオプションを追加しはじめています。

複数の事業者をネットワーク

こういったサブスクリプション型で複数の事業者をネットワークするサービスは、ランチだけでなく様々なジャンルに広がっています。ジムのクラスのサブスクリプションサービス CLASS PASS、子供の習い事の KIDS PASS、バーホッピングのHOOCH、映画のMOVIE PASSなどなど。

このモデルの先駆けとなったCLASS PASSは、Googleベンチャーズなどから$154Mを調達しています。1つの成功モデルができるとジャンルを超えて一気に広がる様子は、非常に米国のスタートアップらしい展開ですよね。

痛みではなく、かゆみに対応

スタートアップはとかく「社会課題を解決する」とか「世界を変えるような大きなビジョンを持つべき」なんて議論になりがち。でもMealPalが解決している「今日のランチどうしよう問題」は、社会課題ではないものの、"みんなが少しだけ悩んでる”というところがポイントなのかな?と思いました。

痛みではなくかゆみのような、日々当たり前すぎて感じていない小さな課題こそ、大きくスケールするチャンスがあるのかもしれません。

(サンフランシスコ在住 プロダクトハンター 三浦 茜)

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