一歩間違えれば犯罪になる「悪質クレーム」の境界線 

【のぞき見!リアル とくキュウ】悪質クレーマーの実態

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カテゴリ:暮らし

  • 7割以上の従業員が迷惑行為を受けている
  • 悪質クレーマーは小売業だけに限らない
  • クレームが法に触れる一線はどこ?

飲食店やスーパーなどの従業員に暴言を吐く、土下座を強要するなどの「悪質クレーム」。一歩間違えれば犯罪にもなるクレームに日々、対応する接客の現場で、何が起きているのか。

そもそもクレームとは、商品やサービスへの不満について、店や企業に責任ある対応を求めるはずのもの。しかし今、行き過ぎた要求や迷惑行為を伴う、いわゆる“悪質クレーム”が後を絶たない。

今年、労働組合の全国組織が接客業などの従業員を対象に行ったアンケートの結果では、客からの「暴言」が最も多かった。

労働組合の全国組織が接客業などの従業員を対象に行ったアンケート

脅迫や金品の要求など迷惑行為を受けた経験があるという従業員は7割以上に上り、この結果を受けて、組合は11月に対策を求める要望書を厚生労働省に提出した。

悪質クレーマーは「普通の人」

正当なクレームのつもりが、悪質な犯罪になる可能性もあるという。

都内にあるスーパーみらべる練馬春日町店の店長・飯塚直也さんは「日常茶飯事、クレームの対応している気がします」と話す。

飯塚さんが実際に目の当たりにした事例では、先月、「買った大根の中が黒くなっていた」とクレームをいれた年配の女性は、特に商品のレシートを持たず、お金を返してほしいと訴えた。

店側は「現物かレシートがあれば、返金なり交換いたします」と応対するも、女性は大声を出して、返金の要求を30分以上、繰り返したという。

また、レジで20代の女性店員が中年男性客の会計中に、突然、男性客が「なんだ、その入れ方は!」と声を荒げたという。男性客は「ペットボトルが倒れたら、お菓子が粉々になるだろ!横にするのは基本中の基本だぞ!考える頭もないのか」と説教をし続け、店員は泣き出してしまった。

飯塚さんは「辞めちゃう人がいるのではないかなど、その心配と日々戦いながら常に対処している感じです」と心境を打ち明けた。

クレーム対策に詳しい弁護士法人マネジメントコンシェルジュ・村上元茂弁護士によると、「繰り返し」の行為は不退去罪、「威圧的な説教」は業務執行妨害罪と法に触れることもあるという。さらに、詐欺未遂行為に当たる可能性が高い、悪質なケースもあったという。

ある中年男性が飯塚さんに詰め寄り「おい、おまえの店の商品棚が引っかかって、服が破れたぞ。弁償しろ」と言い放った。

飯塚さんは、服が引っかかったという棚が映る防犯カメラの映像を確認したが、男性は棚には近づいていないどころか、店の入り口の映像には服が破れた状態で来店する姿が映っていたという。店側がこのことを指摘すると男性は帰って行ったそうだ。

飯塚さんは悪質クレーマーについて「本当に怖そうだとか、そういう方でもないですし、本当に普通の主婦だったり、サラリーマンだったり、共通点は特にないです」と話す。

飯塚直也店長

拳を振りかざしても下ろし方を知らない

しかし、こういった悪質クレーマーだけは、小売業だけに限らない。

賃貸マンションの管理会社に勤める男性は、管理するマンションの一室に住む40代の夫婦の契約更新が迫ったある日、「隙間風がひどくて、困っちゃうよ」と呼び出された。

すぐに点検をしても不具合は見つからなかったが、40代の夫婦は「工事してくれないんじゃ、更新料なんて払えない」と再び点検するようにクレームを繰り返した。結局、現在も更新料を払わないまま住み続けているという。

企業のクレーム対策を行う株式会社エンゴシステムの援川聡氏は「普通の方が納得してくれない時代です。声を荒げて拳を振りかざすと、拳の下ろし方を知りませんから行き着くところまで行ってしまって、犯罪、警察沙汰になるっていうケースもある」という。

過去には店員に土下座を強要し、商品をだまし取って恐喝容疑で逮捕されたケースや、飲食店の対応に腹を立てて居座り、不退去罪で現行犯逮捕される事件も起きている。

クレームが法に触れる一線とは?

では、クレームが法に触れる一線とはどこにあるのか。村上弁護士に監修してもらい、クイズ形式で検証していく。

弁護士法人マネジメントコンシェルジュ・村上元茂弁護士

【クイズ1】
喫茶店で運ばれてきた飲み物がこぼされ、お気に入りの服が台無しになった。店側が用意してくれた服を借りて、汚れた服は店の負担でクリーニングをしてもらう。しかし、クリーニングから戻ってきた服にわずかなシミが残っていた。

この場合に要求できることは次の4つのうち、どれなのか。

1)同じ服の新品を買ってもらう
2)店が貸してくれた服をタダでもらう
3)服が汚れる前後で生じる価格の差額をもらう
(例えば、汚れる前が6000円、汚れた後は2000円になるとしたら、差額は4000円になる)
4)何も要求できない

正解は3番。
村上弁護士は「シミによって価値が落ちた分の損害賠償できることにとどまります。新品の要求や別の洋服を買うように求めることは、要求としては過剰になり不当なクレームになってしまいます」と説明。

【クイズ2】

飲食店で料理に髪の毛が入っていたら、お店にどこまで要求ができるのか?

1)料理の交換と代金を無料にしてもらう
2)料理を交換してもらう
3)料理の交換とドリンクをもらう

正解は2番。

料理は提供されているため、無料にはならない。店のサービスでドリンクが提供されることはあるが、自ら要求すると悪質なクレームになってしまう。

さらに、「悪質クレーマー」になってしまうNGワードには、「ネットやSNSに書き込むぞ」や「誠意を見せろ」、「責任をとれ」といった発言が挙げられる。

「ネットやSNSに書き込むぞ」という発言で、金銭などを要求した場合は恐喝行為にもなり得るといい、「誠意を見せろ」や「責任をとれ」は、大声で長時間にわたって対応を求めると業務妨害罪に問われることもあるという。

悪質なクレームの対応に苦しむ飲食店やスーパーなどへのルール作りも必要だ。しかし、行き過ぎた言動や行為が犯罪につながる恐れもあると消費者が自らの行いを見つめ直すことも重要だろう。


(『とくダネ!』【のぞき見!リアル とくキュウ】12月18日放送分より)

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