南の島の楽園にも働き方改革の波 待機児童が8割減の秘策

カテゴリ:ビジネス

  • 観光客の急増にわく一方で深刻な人手不足
  • 子供を持つ女性が多い島ならではの支援策も
  • 島の特性を活かした雇用形態で人手不足を解消

観光客の急増にわく一方で深刻な人手不足

東京から南西へ約2000キロ離れた海上に、人口5万人ほどの石垣島がある。

年間平均気温24.3℃、南の島の楽園として人気があり年間125万人ほどの観光客が訪れる。
この石垣島にも近年、働き方改革の波が押し寄せている。

石垣島は、2013年に新空港が開港したのを契機に、来訪する観光客は50万人近く増加した。
観光客の増加は石垣島に空前の好景気をもたらしている。

夏休みなどの観光シーズンには宿泊施設が足りず、人気の飲食店は観光客の予約でいっぱいだ。
宿泊施設は新規開設や増築が行われ、飲食店の新規開業が目立つ。

その結果、5年前には1倍前後であった有効求人倍率は1.5倍ほどになり、働き手の確保が急務となった。

出生率が高い石垣島で待機児童ゼロへ

石垣島で一生の間にひとりの女性が出産する子供の数を示す合計特殊出生率は2.16人(全国平均1.45人)と高い。
かつては島という特性もあり、高齢者が子守をするなど集落ごとに子供を育ててきたが、
移住者の増加や核家族化の進行、さらに働く女性の増加に伴い保育施設が不足する事態となった。

一時は、待機児童が200人を超えるなど石垣市は対応に追われた。
市では、内閣府から子育て行政に長けた人材の派遣を求め、積極的な施策を推進した。

まず認定こども園の増加を計り、また退職保育士の再雇用助成金、島内で保育士の資格を取得できる制度、保育士育成のための貸付金などの保育行政を推進した結果、2017年度末には待機児童は31人にまで減少した。
さらに、地元企業に協力を要請し、内閣府の補助を利用した企業主導型保育施設の設立を求めた。

企業にとっても保育施設の不足は、人材確保の上で大きな悩みであった。
行政と企業の利害が一致し、新しい動きとなった。

2018年4月、石垣市でガソリンスタンドや飲食店、コンビニエンスストアーなどを幅広く展開する石垣島エスエスグループが中心となり、海邦銀行、ANAインターコンチネンタルリゾート石垣島が協力し、企業主導型保育所 「グローバルキッズクラブ」が開設された。

定員は42名、この施設の開設により市内の待機児童が0になる計算だ。
この施設は、正月以外は年中無休で朝7時30分から夜8時30分まで子供を預かり働くお母さんを支援する。

エスエスグループでは、企業として保育士を育成して行く予定である。

個々の事情に合わせた“オーダーメイド”の働き方

島内の泡盛最大手、請福酒造では製造、販売、企画、事務などそれぞれの部署ごとに職員が話合い、個々の勤務時間のみならず部署の営業時間を決めている。

例えば、お子さんのいる女性は午後2時までの勤務。
高齢者のいる人は昼休みを2時間とって一旦帰宅し昼食等の世話をした後、職場に戻るなど、職員の事情に合わせた勤務ができるのだ。

祭りなど地域の行事の日には休業になる部署もある。

また、超過勤務に関しては「ノー」と言える環境を作った上で、通常以上の割増手当を支給しインセンティブを与えている。
そのため請福酒造の営業マンは時間外勤務を厭わずに夜の飲食店街を回り、自社商品の売り込みに歩く。
時間の欲しい人には時間を与え、収入を増加させたい人にはその機会を与えるのである。

さらに定年は60歳と規定しているが、本人が希望し働ける限り定年は延長される。

請福酒造の漢那憲隆社長は「石垣島の人はゆっくりしているので、急かさずに気持ちよく働ける環境を作ることが必要です。そして美味い酒を造ってもらえれば売上向上につがなります」と語る。

その他、ある観光バス会社ではバスガイドさんの勤務地への送迎を保育所経由で行っている。
島では企業ごとに、こつこつと働き方改革を進めているようだ。

「働き方改革」だけではなく「生き方改革」も

これはあくまでも石垣島という離島の事例であり、大都市に順応できるものではないだろう。

ただ、それぞれのコミュニティーや企業ごとに働き方改革を考える上で参考にしてほしい。
また、島に移住するという「生き方改革」も有るのではないだろうか。
ネット社会は、離島と都市の距離を縮めているのである。

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