過酷かつ深刻な人材不足・・・ロボットは介護現場を救う!?

栩木信人
カテゴリ:テクノロジー

  • 『2025年問題』介護人材38万人不足の推計…危機的な日本の介護
  • 厚労省は「介護ロボット開発・普及推進室」を4月に設置
  • 介護ロボットが働く現場…カギ握る「価格」と「カスタマイズ」

深刻!7年後には38万人の介護人材不足

介護の現場では人手不足が深刻化している。

団塊の世代がすべて75歳以上となる「2025年」には、38万人の介護人材が不足すると推計。
あと7年、危機は現在進行形だ。

定期的な当直など昼夜を問わぬ激務で「3K」とのレッテル、さらに報酬が低い介護職。
政府による改善策がとられているが、去年9月時点で全産業平均に比べて約10万円も低い。

高齢化により被介護者は年々増加する中、危機的かつ慢性的な人手不足。
その対策は一刻の猶予もない。

経産省と厚労省が連携?!  介護ロボットの普及に本腰

いま政府が本腰を入れているのが「介護ロボット」の普及だ。
厚生労働省は介護ロボットの開発や普及を進める新たな部署を今月から立ち上げた。

その名も『介護ロボット開発・普及推進室』

現場のニーズなどを集約しロボット開発メーカーなどへの支援強化を図り、家族や施設職員の負担軽減、高齢者本人の生活の質向上、慢性的な人手不足への対応策を推進することがそのミッションだ。

ロボット推進室は職員10人に加え、諏訪基・国立障害者リハビリテーションセンター研究所顧問ら専門家9人を参与として起用して、態勢を強化。

これまでは経済産業省が主に開発、厚労省が普及と分業していたが、両省間で人事交流も進めて連携を強めるという。

現場に広がる介護ロボット導入と政府が描くミライ

介護ロボットの導入に向け、政府は施設側の背中を強く押している。

2016年に実施された「介護ロボット等導入支援特別事業(52億円)」で、約5000の施設が上限92.7万円の補助を受け介護ロボットに踏み切った。

今年度も様々な導入支援策がとられているほか、2018年度の介護報酬改定では施設側へ導入メリットを付加するため、夜勤帯の業務効率化のため見守りセンサーを導入した特別養護老人ホームを評価し「加算」する仕組みも新設された。

施設内に設置されている見守りセンサー

「介護は人の手」からのパラダイムシフト

2015年時点で24億4000万円だった介護ロボットの国内市場規模を2020年には500億円、つまり5年で20倍に押し上げるというのだ。

「介護は人の手」により提供されるという基本概念を維持しつつ業務の効率化・省人力化へのパラダイムシフトを、としている。

正直、ここから具体的な姿は想像し得ないが、とにかく、介護ロボットが介護職の仕事を補助し、介護をする側・受ける側双方にとって当たり前に求められる、ステージにということのようだ。

ロボットで働き方改革…発揮する効果と立ちはだかる壁

政府が抱く期待通りに、ロボットが介護現場を救う存在になれるのか。

東京都の2016年度ロボット介護機器・福祉用具活用支援モデル事業に特別養護老人ホームとして唯一選出された、東京都世田谷区の「砧ホーム」施設長・鈴木健太さんに話を聞いた。

砧ホームは施設として実負担はほぼなく、64床に対して18台の見守りロボ(1台30万円※Wi-Fi全館設置は施設負担)、2台の装着型移譲介助ロボ(1台70万円)などの介護ロボットを導入した。
導入の決断は、やはり介護人材の不足だった。

新規の職員採用が難しく、休日の確保など労働環境を整備しないと職員も離れていく。
求められる働き方改革、現状の打破に期待を寄せた。

「装着型移譲介助ロボ」がスタンバイする「砧ホーム」
ベッド4本の脚にセンサー

カギ握る「価格」と「カスタマイズ」

介護ロボットの導入から2年、その効果は出ている。

介護職員の勤務人数の削減
夜間等の駆け付け回数の減少
一部職員に身体的・精神的負担の軽減

ローテーション勤務で2年前まで一日15人だった職員を現在では13人にし、休日や研修のための時間確保が可能になるなど職員の負担軽減につながっている。
働き方改革としては極めて効果的とのこと。

一方、課題も見えてきた。

装着型ロボは重さが5キロ。一部女性職員などは装着が難しく時間もかかる
■求められる個々の職員への”カスタマイズ”
■高額な“定価”


タブレットで高齢者の様子を見守る職員

「介護そのものを変える革新的な発明が必要」

開発途上の装着型ロボなどは、慣れるまで時間がかかるほか、誰にとっても利便性が高いとは言えず、使いこなせている職員は一部に止まる。
今後は性別や個々の体型などへのカスタマイズも必要。

さらに、これから数年は国や自治体が積極的な支援策で施設側の負担が低く押さえられるが、財政が厳しい介護施設にとって支援なしでのロボ導入は極めて厳しい。
介護職員が自分自身の商売道具としてカスタマイズして使用でき、かつ購入できる価格にすることが必要だという。

鈴木さんはこう語る。
「今後、少ない人数で質の高い介護の提供に介護ロボは不可欠。介護の生産性を向上させる進化の過程での良きパートナーとしてロボットの活用に期待している。現在進められている問題解決型の開発はもちろん、介護そのものを変えるような革新的な発明こそが必要。

現在、AI搭載で高齢者の話し相手になってくれるコミュニケーションロボ、AIによるケアプラン作成ロボなど様々な介護ロボットの導入・開発が行われている。

超高齢化社会に向けて待ったなしのその行方を、期待をもって見守りたい。

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