ガンも治す?「生き返るデザイン」が進行中

「日本にやがてやってくる未来」をサンフランシスコで探す<br>

カテゴリ:テクノロジー

  • 人間とコンピューターの共同デザインなら、ビル建材の費用が下がる。
  • 「未来の飛行機」「未来のクルマ」など発想は様々。 
  • 「生き返るデザイン」でガンと闘う発想も始まっている。

人間とコンピューターの共同制作

サンフランシスコ中心部。不思議なカーブをした外壁に覆われた建物がある。

MOMA、サンフランシスコ現代美術館だ。

MOMA

この壁、デザインしたのは「人間」ではない。

デザインの原案を考えたのはコンピューターだ。人間が作った条件に沿って、コンピューターが機能的に優れた構造のデザインを何千通りと生成。さらに人間が要素や制約などを加えて新たなデザインを生み出していく、「ジェネレーティブ・デザイン」という最新の手法を用いて設計された。

いわば人間とコンピューターの共同制作で、「サンフランシスコの霧や海に融合すること」を心掛けて作られたデザインとなっている。

素材はコンクリートではなくファイバープラスチックという素材。MOMAには700枚のパネルを貼り付けていて、コンクリートよりも1万ポンド(4500キロ)ほど軽いという。

このデザインを生み出したのは、ジェネレーティブ・デザインを先進的に取り組んでいるオートデスク社だ。

こうした様々なデザインを実際に形にしたプロダクトの展示ギャラリーをサンフランシスコ市内に構えていて、責任者のジェイソンさんに中を案内してもらった。

MOMAの外壁サンプルも展示

入り口を入ってすぐにあるのが、実際に上海に建てられたビルの模型。ちょっと不思議な、ねじれた形をしている。これもジェネレーティブ・デザインでできたものだ。

上海に実際に建てられたビルの模型

外観のオシャレさだけで、このデザインになったわけではない。それ以上に重視されているのが機能面。普通に円柱形のビルを建てるより、風の影響を24%減らすことができているという。そのため、必要な鉄の量も少なくすることができ、5000万ドル(53億円)もの費用削減につながった。

同じように「未来の飛行機」なども展示されている。ジェネレーティブ・デザインではないが、「未来のクルマ」は、酸素と太陽光をエネルギーにするという画期的なアイデアがデザインに生かされていた。

未来のクルマ(右写真は内部構造)

ジェイソンさんは「スマホは10年ちょっと前にはサイエンスフィクションだった。こんな小さなデバイスで、東京とサンフランシスコの中継を個人が行なうなんて考えられなかった。だから、こんなクルマが走る未来は、きっと来ると思う」と語った。

そういう発想を持っている人や企業にしか、「未来」を現実にすることはできないだろう。

あまりに共感したので、「10年後には、この車ばかりが走っているかもしれないですね」と言ってみると、「君は私より楽観的だね」と笑われた。

生き返るデザイン

こうしたデザインの中で、とても印象的だったのが「ウイルスをデザインする」というライフサイエンスの分野だ。DNAプリンターで、ガンと闘う「新薬」を作るという。

人間なら糖、モノなら太陽光などのエネルギーを使って、自分自身を動かしたり元に戻したりする。

この発想を使い、「プロダクトの完全体」が何らかの影響で壊れて部品や細胞レベルでバラバラになってしまっても、エネルギーを与えて元通りにするという。ガンによって細胞が壊されても、エネルギーを与えて元に戻せるはずだという。

具体的なイメージとして、試験管の中に入った金属ボールを見せてくれた。力いっぱい振ると、中のボールはバラバラの金属片になってしまった。しかし、外から刺激を与えるように優しく揺らすと元のボールに戻った。

 がんに侵された細胞にも、外からの刺激の与え方で、同じことができるというのだ。

この「生き返るデザイン」という発想は、ライフサイエンスの分野に限る話ではない。建物やモノ、生物など、様々なジャンルで応用が可能で、今後、「生き返ること」を前提としたデザインが増えていくかもしれない。

このギャラリー、年間に5万人もの人が訪れるという。しかし、「プロダクトのショーケースではない」ということをジェイソンさんは強調した。

「ここを訪れた人がインスパイアされて、また新しい発想をしてもらう。そのために、このギャラリーを開いています」

「ジェネレーティブ・デザイン」「生き返るデザイン」。デザインによる新たな思考が、次の新たな時代を切り拓くことになりそうだ。


【関連】ジェネレーティブ・デザインを詳しく知るには、こちらhttps://www.fnn.jp/posts/00292060HDK)。

未来の服?

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